月刊ボンジョルノ

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ジョルジョと私

2006-02-05 | 「月刊ボンジョルノ」(イタリア編)
なんだか日本人ギャルが急増したなあ、と思っていたら、大学の冬休み&卒業旅行シーズンでした。
悪名高いブランド品買出し組はまだまだ健在ですが、極端に無作法な人はあまり見かけない気がします。
まだ幼い顔の女子たち(しかも服装と雰囲気がほぼ一緒で見分けがつかない)がフェラガモだのグッチだのブルガリだのに群れているのは確かに異常な光景ではありますが、オジオバが店中引っ掻き回しているのに比べれば、恥じらいの残るヤングの買物ぶりは「ほほほほ、若い方は微笑ましいわねえ」とさえ感じられます。
それは私がおやぢになった証拠か。
ギャルに過剰に親切にして『地球の歩き方』に「怪しい日本人にご注意!('02)」とか投稿されないようにしなくては。


▲最近のテレビの友「パネトーネ」。クリスマスの売れ残りを6割引きで買ってしまいました

さてまだまだ寒さの続くフィレンツェ。
しとしと雨でも降った日には、どうしても出かけるのが億劫になってしまいます。幸い体は空いているし、最近少々お疲れ気味。
そんな日はお茶とお菓子を用意してテレビの前に陣取ることになります。
国営放送が3チャンネルに大手民放(社長が首相というのはいかがなものか)、MTV、通販ばっかりやってる地方局など、チャンネルは豊富で退屈しません。

こちらに来てまず目を引きましたのが日本のアニメ。
「ドラゴンボールZ」「らんま1/2」「とっとこハム太郎」「ポケットモンスター」「GTO」等々、割に最近のがあるかと思えば、「ヤッターマン」みたいな相当古いのもやっています。
しかし特筆すべきは「妖怪人間ベム」。
日本では恐らく放送禁止のこの怪作、こんな所でお目にかかれるとは思いませんでした。
最後には日本語で「早く人間になりたーい」のテーマソングが流れるのですが、一体イタリア人はどういうつもりで見ているのでしょう。
ちなみにフィレンツェ大学の日本語科には毎年50人程度が入学するそうですが、「グレートマジンガー」で育った世代がいま大学生になっていて、大半の関心の的はアニメだとか。
「らんま」のパンダが持っている看板を原語で読みたい!とかそういう世界でしょうか。
しかし当然のことながら全部イタリア語吹替なので、あらゆるキャラクターがペラペーラタレターレと母音の多い台詞を発しています。
そういえばこちらでは映画館にかかっている外国映画もすべてイタリア語吹替です。
ディカプリオも菅野美穂も全部イタリア語。
で一度知り合いのイタリア人に「イタリア人は映画を愛すると聞いているが、なにゆえに元来の言語で上映しないのであるか?それは映画の個性を失わせるであろう」と言ってみたところ、「優秀な声優学校があるので吹替技術は完璧。それにイタリア人は色とかアングルとか画面を目で楽しむのに夢中で、字幕なんか追ってられないのよ」とのお返事。
「それは単にどんくさいのでは?」とは言わずに「おお、視覚的なるものに価値をおくことは確かに重要である」と言える程度には私も大人になりました。

ついひっかかってしまうのがマイナー局の通販番組。
いまなんといってもイチ押しの商品は、お腹なんかに電極をくっつけてピクピクさせる器具です。
日本では確か肩こり・腰痛の治療器具だったと思いますが、どうやらこちらでは専らシェイプ・アップに使われるようです。
ものすごい水着をつけたお姉さんが、ソファやベッドの上で太股・お尻に電極を貼り付け、筋肉をピクピクさせているところが延々と、本当に延々と映し出されるその有様。
通販というのは口実で、むしろお父さん向け娯楽番組なのではないかと思われます。
他にもダイエット用サプリメントや引き締め下着、家庭用ジャグジーの宣伝が繰り返し流れ、ダイエットへの関心は非常に高い様子。
町では太った人をほとんど見かけないのですが、もしかしてみんな家でピクピクさせているのでしょうか。

そして怖いもの見たさでチャンネルを合わせてしまうのが「素人名人会」。
厳しいオーディションを勝ち抜いた(であろう)素人さんが自慢の芸をステージで披露するのですが、まあその芸のショボさが半端ではない。
「素人っぽさを楽しもう」とか「素人へのツッコミで笑わそう」とかそういうレベルの番組作りでは全然ないのですね。
剥き出しの素人がどれほど恐ろしいものか。

1番はナポリからやって来たジョルジョ。
だしものはおもしろジョークです。
軽快な音楽と拍手の中をジョルジョ登場。
「(一拍間をおいて)この間床屋に行ったら床屋のおやじがこう言うんだ。
『ずいぶん立派なおヒゲですね』って。俺は鏡を見ながらこう言った。」
(中略)
「『そりゃまたどうして?』
『だって旦那、あっしの女房を思い出すんでさ』。」
(一拍間をおいて喝采、満足気な表情を見せるジョルジョ)

手を振り上げたりのけぞったりのオーバーアクション。
目を見開いたり口を尖らせたり「おもしろ顔」の連発。
そしてオチの後にはナンシー関描く歌丸さんばりの「してやったり顔」。

「これでいいのか?」と問い詰めたい気持ちがふつふつと湧き上がってくるところへ、2番は垢抜けないスーツ姿のリカルド。
だしものは「歌」。
物真似かなんかやるのかなあと思っていたら、素のまま堂々と歌い上げてそのまま引っ込んでしまいました。

3番は美人系のルチア。
だしものは同じく歌ですが、歌いだすと音程がズレズレ。
頭を抱える指揮者、客席の爆笑が大写しに。
そんなにおかしいですか。

4番はパルマからタンクトップ姿のディーノ。
だしものは「腋の下でブー」。
腋の下に掌を挟んで、バンドの演奏に合わせて腋を開いたり閉じたりブリブリブー…

インターリュードでセクシーダンサーたちが登場、古ーい振付のダンスを踊っている間、私の脳裏にはこれまでに見てきた日本のバラエティ番組の断片が浮かんでは消え、テレビ番組の進化について思いをいたさざるを得ませんでした。
イタリアからは間違ってもモンティ・パイソンは出て来ないな。

(2002年3月号)