月刊ボンジョルノ

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地下鉄に気をつけろ

2007-04-17 | Weblog
地下鉄でぼーと座っているといきなり右肩をぼんぼんと荒っぽく叩かれた。
さては知り合いか。この時間にこの路線に乗ってるのって誰だ?
と思って見回したら、間に老紳士を一人おいて右側に座っているおばはんに

「ちょっと詰めて!あなたがほら…」

と言われた。

このおばはんはどうやら私がぼーとしているせいで自分が窮屈な思いをしていると判断したようなのだが、左隣でプリントを読んでいるサラリーマン風の男と私との間はキツキツで、もはや私の独断では少しも詰めようがない。
とりあえず左方向に向かって「すみませんがちょっと詰めていただけますか」と言ったら「あ、すみません」と男がお尻半分ぐらい移動したので結構なスペースが出現した。
私が詰めると右隣の老紳士も明らかに狼狽した様子で遠慮がちにこちらに詰めてきて、一応事態は収束したわけである。

収束しないのは私のムカっ腹である。
自分の窮屈さの原因を私にあると判断を誤ったのはまあ仕方がない。
しかしよく事実を確認もせぬままに「あなたが(そうやって座ってるからみんなが迷惑なのよ)」的な蛮声で私を誹謗したのは許せぬ所業である。
あまつさえ公共の場で他人に呼びかける、もしくはお願いをするのにいきなり肩を叩いて「ちょっと詰めて!」とはなんと野蛮な振る舞いだろう。
それだけ長生きして地球上の貴重な酸素をたくさん吸っておきながら「すみませんがちょっと詰めていただけませんか」となぜ言えぬ。
私はスーツではなくカジュアルな格好で通勤しているので、恐らく無作法な大学生とでも見てとったのだろう。
こういうおばはんはこちらがパリッとした格好でもしていれば絶対こういうマネはしない。相手を見るそのあたりの卑劣さも実に腹立たしい。
よっぽどねちねちと下手から絡みついて恥をかかしたうえで二週間ぐらいはイヤーな気持ちにさせてやろうかと思ったが、両隣および前に立っている人たちがみんな善良そうな人たちで「ああ変なおばはんだ」「ああ気の毒に」というムードが周囲に瀰漫していたので、強いてコトを荒立てるに及ばず、と思って澄まして座っていた。
なんかでかいアルファベットを散りばめた白いブラウスを着たおばはんは、麻布十番でわさわさと降りて行った。
よくいる「一歩手前の人」かと思って顔を確認したが、そういう人に独特の異常な気配は表情には漂っておらず、見た目やや派手めの普通のカタギのおばはんであった。
たぶんこのおばはん的には「言うたった!」と小さな世直し運動の本日の収穫の一つになっているに違いない。
それを思うと、今後電車で同席する方々のためにもやはりなんらかの形で「あんたは間違っている」ということを指摘して注意を促して差し上げた方がよかったのではないか、と今になっては思われるのである。