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バーボングラス片手のロックな毎日

松方弘樹さんの訃報報道について思うこと

2017-01-29 20:12:57 | MUSIC/TV/MOVIE
また一人昭和の名優が逝ってしまった。
松方弘樹さんがお亡くなりになられた。

定番のごとく連日、生前のエピソードが報道されるのだが、これがいつもあれ?って思うのよね。

「酒の飲み方が豪快だった」「金の使い方が半端なかった」「人柄が素晴らしかった」「実はこんなエピソードが」
有名人からこんなコメントを聞き出してメディアは記事にする。

「飲みに行くとボトル1本簡単に呑んでた」とか「連れて行かれたら一人ボトル一本飲まされた」、「一晩で1千万使ってた」とか「たまたま飲み屋で出会ったんだが、こちらの飲み代を払って帰ってくれてた」。
多分メディアは「ほら、昭和の俳優はこんなに豪快だったんですよ」「金も稼ぐが使い方も派手」という昭和イメージで書くんだろうけど、それってどうなのさ。

他には「こっちは新人なのに現場で気楽に声をかけてもらった」「共演したときプライベートにも誘ってくれてこんなこと言ってくれた」って人柄を褒め称えるコメントね。
これって、「今の俳優やタレントにはこんな人いないだろう」って、暗に嫌味を言ってるのか、勝手に決めつけてるのか。いやいや、まだまだいるだろうさ。

でもさ、最近じゃハメを外すとすぐ叩くじゃない?
勝新太郎が飛行機乗るときに大麻を下着に隠してて捕まったとき、記者会見で「今後は?」と聞かれ「もうパンツははかん!」と言った。当時のメディアは「さすが勝新太郎!」ってヨイショしてスルーしてた。いくら借金があって、どこどこに愛人がいてってのでも「役者だもん、仕方ないよ」って感じだった。

なのに、なんで今じゃちょっと不祥事起こしたら騒ぐの?
「モラルが欠如してる」「反省の色がない」「謝罪せよ!」ってマスコミもメディアも一般人も。

こういった大物俳優が亡くなられたときは、「役者とか芸能人っていうのはこういったバカじゃなきゃダメだ」「私生活は無茶苦茶でも、いい演技さえ見せてくれたらそれでいいんだ」的な報道するんだったら、今の芸能人やタレントの少々の不祥事は「あぁ、こんなことやったみたいよ、バカだねぇ」とか「ありゃりゃ、こら、奥さん大変だ、でも仕方ないね芸能人だもの」って感じでいいんじゃないの?

毎晩飲み歩いてるとか、大金を湯水のように使えるなんて、本当は羨ましい。妬ましい。だけど、でも彼女彼らは、一般人とは違うんだ、別世界の人であって欲しいんだ、と思ってるんじゃないの?

俺は芸能人、役者、俳優、歌手、アクターとかアーティストと呼ばれる人はぶっ飛んでないとできない職業だと思ってるよ。
最近のジャリタレは、ちょっと売れると高飛車になったりハメ外すけど、それでいいのよ。貧乏な売れなかった時にできなかった夢を今、叶えてるんだからさ。

マスコミも一般人も、発言や行動を世間の常識とかモラルとかを押し付け、型にはめようとする。
それでいて「最近の役者はつまらん」「最近はいい曲がない」「最近はコメディアンがタレント化してる」「テレビもお笑いもレベルが低下してる」
どっちやねん?

それとさ、こういったエピソードばっかり報道するんじゃなく、出演作品とかを褒めたりコメントして欲しいのよね。

松方弘樹さんって、代表的な主演作が無いのよね。
仁義なき戦いシリーズの主演は菅原文太だし、遠山の金さんだって人によっては「杉良太郎だ」「高橋英樹だ」「片岡千恵蔵だろ」って。
多分今の若い人には「あぁ。梅宮辰夫と一緒に釣りしてた人ね」とか「マグロを釣る人ね」って思われてるか、ちょっと前の世代には「バラエティにも出る人」ってイメージじゃ無いかな。

でもさ、松方弘樹さんって主演作の傑作、結構多いのよ。
「修羅の群れ」はヤクザ任俠映画の傑作だよ。リメイク版も松方弘樹主演だ。



何と言っても「首領になった男」が俺はイチオシ。
松方弘樹さんが初プロデュースしたこの映画は、中尾彬・金子信雄・室田日出男・梅宮辰夫・山城新伍・津川雅彦・渡瀬恒彦・十朱幸代・名取裕子・川谷拓三・江守徹って、これぞヤクザ映画ってキャスティング。なぜか近藤真彦も出てるがそれはいいとして、このキャスティングで今までのヤクザ映画のように大紋とか暴力の描写だけじゃなく、頭を使って金を稼ぎ、のし上がっていくスタイルを描いてる。
この映画、それまでの「一宿一飯」「親分の仇」といった、高倉健さんから受け継ぐ任侠路線とはちょっと違う。アウトローとかクライムムービーと呼ばれる今のスタイルはこの映画からではないかい。金子政次の「竜二」と同じく、ヤクザ映画のスタイル変換の礎になった作品だと思ってる。知名度はめちゃ低いのが不思議。



主演は黒木瞳だけど「姉御」の松方弘樹もいい。ビートたけしが嫌な奴役で出てるこの映画は、今ならR指定がつくようないやらしい場面も多いからか、世間さんの評価は低いのだけどね。
この映画での共演がきっかけになったのか、松方さんはバラエティに出るようになったんじゃないかな。
『天才たけしの元気が出るテレビ!!』のイメージソング「TAKESHI&HIROKI」名義の「I'll Be Back Again...いつかは」の作詞は秋元康さん。引っ張り出してきて見てちょっとびっくり。手びろいなぁ秋元さん。



メディア/マスコミは役者さん、特に主役を張るような名優さんが亡くなった時は、豪放磊落だった生前のエピソードばっかりじゃなく、出演作品とかについても報道して欲しいな。
テレビ局は他局の作品だったらダメだとか規制あるのかもしれないが、有名人からのコメントをバラエティ報道番組で流したり、変な追悼番組流すくらいなら、この映画このドラマを見ろ!的な番組作って欲しいんだけどな。その方が役者冥利に尽きるんじゃないかと思うんだけどな。

ご冥福をお祈りいたします。


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