グローバル・タックス研究会 ~Study Group On Global Tax~

貧困のない、公正かつ持続可能なグローバリゼーションのための「グローバル・タックス」を提言する、市民研究グループです。

連日報道されるトービン税議論と金融規制≪F.タイムスほか≫

2009-09-03 | トービン税/通貨取引税/金融取引税
ピッツバーグG20金融サミットを前に、英金融規制当局トップの「トービン税支持発言」が大きな波紋を広げ、フィナンシャルタイムスやガーディアンほか英国の主要メディアがトービン税や金融規制に関して連日報道を行っています。

一方、8月31日付ブルームバーグ(電子版)によれば、フランスのラガルド財務大臣が「ゆがみを引き起こさない限り金融への課税を支持する」と発言したことを伝えています。5月末に開催された「革新的資金メカニズムに関するリーディンググループ」総会で“通貨取引税に関する技術的・法的可能性を検討するワーキンググループ”立ち上げを決定しましたが、これに対しフランス財務省は消極的であると伝えられていましたので、財務省の態度は大きく変わったのでしょうか。

さらに、同日付フィナンシャルタイムス(電子版)の下記の記事の一部に
Nicolas Sarkozy, the French president, has called for next month's G20 meeting to consider a global tax and a cap on bank bonuses. Angela Merkel, the German chancellor, also backs limits on excessive pay.
≪ニコラ・サルコジ仏大統領は、来月のG20会合において国際税および銀行のボーナス上限について考慮するよう呼びかけた。アンゲラ・メルケル独首相も過大な報酬に対する上限の設定を支持した。≫
とありましたが、どうやら global tax ではないようです。

以下、フィナンシャルタイムスとブルームバーグの記事を邦訳しましたので、ごらんください。

【フィナンシャルタイムス】
ターナー氏、トービン税への「ばかげた」反発に対し断固とした態度

Turner stands fast against 'ridiculous' backlash on Tobin tax

2009年8月31日3:00 政治部記者 Jim Pickard

ターナー卿は昨日、「膨れ上がった」金融セクターを抑制するための国際税に関する論争の的となっている同氏の考え方を強固に弁護した。

プロスペクト誌が主催、取材した討論会におけるターナー英金融サービス機構(FSA)会長による提案は、シティ・オブ・ロンドン(英国の金融・商業の中心地、以下「シティ」)の反発を引き起こした。

ターナー卿は、自己資本比率の引き上げによって銀行の行動を抑制できない場合、各国政府はトービン税として知られる金融取引への課税を考慮することもあり得ると主張した。

ターナー氏のような上級職かつ評価の高い人物による提案であったことから、この提案は危機感を抱いた銀行その他の金融サービスグループによる反撃を引き起こした。彼らはそのような税はシティに損害を与えると述べている。

昨日ターナー卿は、同氏が世界のその他の地域に対する課税なしにロンドンのみに課税しようとしていると示唆する者がいるのは「ばかげている」と述べた。同氏は、「元の記事を読んでいればそのような示唆をするはずがない」と話した。

同氏はまた、そのような政策を実施する権限はFSAにはないことを指摘した。同氏はスカイニュースに対し、「私はプロスペクトの記事で述べた内容について何一つ後悔していない」「私は具体的に税を導入することを提案したわけではないし、税を導入するのはFSAの役割ではもちろんない」と述べた。

FSAは今月、不適当な報酬に対する取締りの強化という最近政治家が表明した約束を果たすには不十分な内容のボーナスに関する指針を銀行に発行し、批判を受けている。

ターナー卿は、銀行家に対する多額の報酬の支払いを止めることは、実際にはシティの監視機構であるFSAの権限の及ぶ範囲ではないと述べた。

同氏は、「私が伝えたかったのは(中略)、FSAに対し、その権限を超えてまでボーナスの水準に制限を課すよう求めるのは止めてほしいということだ。そのような行為は我々の強制力の及ぶ範囲ではないし実際的な能力の及ぶ範囲でもない」と述べた。

また同氏は、企業の報酬構造に影響を与えたり、企業が過度のリスクを冒さないよう促すことはできるだろうが、社員らはリスクの低い活動をすることによって「多額の金額」を稼ぐこともあるだろう、と話す。

大臣らは年内に過大なボーナスを制限するための法案を提案する可能性があると発表している。

ニコラ・サルコジ仏大統領は、来月のG20会合において国際税および銀行のボーナス上限について考慮するよう呼びかけた。アンゲラ・メルケル独首相も過大な報酬に対する上限の設定を支持した。

ターナー卿はG20会合の2日前にロンドン市長公邸でこのような問題について演説することになっている。

またFSAは政治的な主導権争いの的にもなっている。保守党は、次期総選挙で同党が政権をとれば、FSAの機能のほとんどをイングランド銀行に統合すると約束している。

ターナー卿は、これが必ずしも同機構の終わりを意味するわけではないと話す。
同氏は、「保守党はFSAについて、そこで働く職員と彼らの仕事自体をお払い箱にするわけではないだろう」「FSAが担っている中核的機能そのものは残る」と話す。

一方、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)ロンドン市長は水曜にチャーリー・マクリービィ(Charlie McCreevy)欧州委員会域内市場・サービス担当委員と会談する。ジョンソン氏はオルタナティブ投資ファンドに関する指令案はロンドンの金融サービス産業に痛手を負わせる可能性があると論じることになるだろう。
原文:http://www.ft.com/cms/s/0/8ef12e6c-95c4-11de-90e0-00144feabdc0.html

【ブルームバーグ】
IMF・欧州、景気刺激策の解除の際には協調するようG20に要請

G-20 Urged by IMF, Europe to Coordinate When Reversing Stimulus

Rainer Buergin、Sandrine Rastello

8月31日ブルームバーグ ―― 国際通貨基金(IMF)と欧州諸国政府は、世界金融危機への対策として導入された緊急対策を解除する際には協調するようG20に要請した。

9月4、5日にロンドンで開催されるG20財務相会合を前に、ペール・シュタインブリュック独財務相は各国の財務相に宛てた文書の中で、いわゆる「出口戦略」で協調できない場合「競争のゆがみ」につながる恐れがあると述べた。またジョン・リプスキー(John Lipsky)筆頭副専務理事(IMFで2番目の地位)はインタビューの中で、協調の欠如は「他の国における負担と損失を生む可能性がある」と述べた。

財政措置およびシティグループや王立スコットランド銀行グループなどの銀行救済に2兆ドル以上を約束した後、支援策の解除の際にG20が足並みを揃えなければ、インフレをあおり不釣合いな債務負担や市場のゆがみを引き起こす可能性が懸念されている。

リプスキー筆頭副専務理事はワシントンで「この種の政策は協調を欠いた形より協調して解除される方が効果的だ」「これらの政策は多くの場合、銀行保証その他の政府による具体的な市場支援などの多くの分野において波及効果をもたらす」と述べた。

世界経済が戦後最悪の不況から抜け出す兆しを見せる中、G20財務相、中央銀行総裁は今週、9月24、25日にピッツバーグで開催されるG20サミットの議題を定めるため会合する。全米供給管理協会(Institute for Supply Management-Chicago Inc.)が今日発表した同社の景気指数によると、米国の景気は予測より改善している。

協調が「不可欠」

ブルームバーグニュースが入手した文書によると、シュタインブリュック氏は「万能の解決策などというものはない」「しかし、我々が行動を国際的に協調させることが不可欠だ」と述べた。

クリスティーヌ・ラガルド仏財務相は、支援策の解除は時期尚早と警告している。ラガルド氏は今日パリで「出口戦略を議論しないのは無責任だが、我々はまだ危機から脱していない」と記者に話した。

リプスキー氏は、出口戦略の実施を開始するには時期尚早だが、危機時にアイスランド、ハンガリーその他の国々に緊急融資したIMF(加盟国186カ国)は、景気刺激策をどのように解除していくかのロードマップを考案しているところだと述べた。

アリスター・ダーリング英財務相は今日、社会的混乱が将来起きるのを防ぐための新たな金融ルールを導入する際にも、各国政府は結束する必要があると述べた。

ダーリング氏はガーディアン紙に「グローバル化した現代の社会では各国の市場が相互依存しており、強固な国際金融規制が無ければ一国の金融システムが他国の金融システムと対抗することになる」と述べた。

市場の貢献

シュタインブリュック独財務相は文書の中で、経済危機に対処するための費用の調達に金融市場が「より多くの、国際的に協調した貢献」をできるようにする方法をG20で議論したいと述べた。アデール・ターナー(Adair Turner)英金融サービス機構(FSA)会長は先週、金融取引に対する「トービン税」を提案している。

ラガルド氏は、ゆがみを引き起こさない限り金融への課税を支持すると述べた「規制の改善および全金融商品への課税は全面的に賛成だが、他にとって不利益となる一部の金融商品への課税は反対だ」と述べた。

米連邦準備制度理事会、イングランド銀行を含む各国の中央銀行は、既に異なる政策を追求している。英中央銀行は今月、同行の債券購入プログラムを500億ポンド(810億ドル)増額し1750億ポンドに拡大することとした。一方米連邦準備制度理事会は米国債の買い入れを終了することにしている。イスラエル銀行は8月24日に突然政策金利を引き上げ、ハンガリー中央銀行は同日に政策金利を引き下げた。

ロンドンのモルガン・スタンレー共同首席グローバルエコノミストのジョアキム・フェルス(Joachim Fels)氏は8月26日の報告書の中で「各国間の相違は市場にとって再び大きなテーマとなりそうだ」と述べている。

G20メンバー国は、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、米国、英国、欧州連合である。
                           (翻訳;オルタモンド翻訳チーム)
原文:http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601068&sid=ae6jXh1NVk.U


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