アメージング アマデウス

天才少年ウルフィは成長するにつれ、加速度的に能力を開発させて行きました。死後もなお驚異の進化は続いています。

殺していいですか

2017-01-08 01:42:32 | 文化
 天城越え、と言えばまずは松本清張の【天城越え】、そして川端康成の【伊豆の踊子】です。何れもドラマや映画になっています。伊豆の踊子には見るべき作品は有りませんが。
 三村晴彦監督の【天城越え】は秀逸な出来映えでしたが、意外に評価は低いと思います。その理由が分かるような気がします。
 概要は、母の不倫現場を見てしまった少年は家出をして、天城を越えて下田の兄の元へと旅立ちます。
 美しい女性ハナ(田中裕子)と出会い、二人で仲良く旅を続けます。少年はハナを聖女のように思い、儚い憧れを抱きます。
 明らかに痴呆の旅商人とすれ違ったハナは少年に先に行って待っているように言い、男の後を追いました。路銀を稼ぐ為です。
 少年に男への憎悪がわき起こり、草むらで情交に耽るハナと男を盗み見しました。
 ハナが男から路銀をせしめてそこから消えました。ハナは娼婦だったのです。
 少年は不思議に名衝動に駆られ、無我夢中で男を殺てしまいました。が、逮捕されたのはハナでした。
 残虐な拷問を受けるハナ、遂に罪を着せられてしまいます。
 実家に帰った少年は沈黙を守っています。
 縄付きのハナが地元から街の署に連行されて行きます。
 遠くで見送る少年をハナがみやって、不思議な微笑みを見せます。ハナには男を殺したのが誰かも、少年を救う事に成るのも分かっていたのです。
 田中裕子という女優は元来女の情念を演じさせたらピカ一ですが、ここでの演技は壮絶で妖艶で、不思議な優しさに溢れていました。娼婦の身体と聖女の心を持った女性を演じきっていました。
 この映画はこれだけで十分なのに、蛇足がついていました。老いた少年が回想し、ハナを取り調べた刑事が真相を究明し続けていました。
 これは小説の一手法ですが、この【天城越え】では通用しません、。観客だけは真相を知っていたのですから。何故それを究明する必要が有るのか分かりません。余韻の有る内に終わって欲しい作品でした。

 最近、必殺始末人という映画をみました。田原俊彦と南野陽子が主演だったので嫌な予感を抱きながらも、最後まで見てしまいました。事件が起こったのはクレジットが流れた時です。この歌手異様にまでに上手いな、まさか南野陽子では? そんなのは有り得ない。

♪ 何処へ行けば良いの 胸に雪が刺さる 
旅の行方はどこ 心閉じ込めて 波も凍り付く

 石川小百合じゃないかと思いつき、クレジットで確認した。
 やはり石川小百合でした。因みに二十五周年記念の【恋路・たび】と言う歌だそうです。
 彼女は今日本で一番上手い歌手だと思っています。特に女の情念を歌わせたら絶品です。

♪ 隠しきれない 移り香を
いつしすあなたに 侵みついた
誰かに盗られるきくらいなら
あなたを 殺していいですか

 そんな石川小百合にしか歌えない歌を創ろうと、伊豆に籠もって出来上がったのがこの【天城越え】でした。
 この歌を聴いていたら、殺されてもいいかも、と思ってしまったりします。
    2017年1月7日   Gorou