二つ目の意見書は、「婦選会館耐震診断報告書等に対する意見書」です。建物の耐震性に詳しい一級建築士・建築構造士の執筆です。以下に概要を記します。
婦選会館耐震診断報告書等に対する意見書
<分析に使用した資料>
婦選会館耐震診断報告書(乙4号証)、および乙4号証の添付資料-既存設計図書、現地建物調査資料、耐震診断計算書(現状)、耐震診断計算書(補強案)、訴状、答弁書
1.耐震診断報告書の正否
・1962年竣工の婦選会館の既存部分は1981年に導入された「新耐震設計法」を満たしていないことは、耐震診断を行う前から予想されたものである。
・1983年増築部分(エキスパンションジョイント)は新耐震基準を満たしており、耐震診断の対象外部分である。
・報告書(乙4号証)や添付資料の耐震診断計算書に数箇所の誤りがあり、慎重さに欠けている。
・報告書で提案された補強案は妥当。
・1981年の新耐震設計法導入後に建築された建物を含め、約半数の建物が「耐震性に疑問あり」ということが明らかであるが、継続使用されている。
・婦選会館は鉄筋コンクリート造で低層建物、立地も超高層ビルが建築可能なほどの硬質な地盤の上に建築されている。大地震時に生じる被害は「軽微」で済む可能性が高い。
・婦選会館の全面使用禁止措置を直ちに実施するという措置がやむを得ない唯一の結論とは言えない。
2.耐震診断結果を受けた理事会の措置の是非、実施すべき方策
・事務所の移転先であるニューステートメナーも「耐震性に疑問」がある既存不適格建物。婦選会館を使用禁止にして、事務所をニューステートメナーに移転させる決定は矛盾している。
・高額な費用を支出して耐震診断を行ったのであるから、早急に耐震補強工事を行うべきである。
・耐震補強工事は、建物を部分的に使用しながら行うことが十分可能である。仕上げをボランティアで行い、耐震改修促進法を利用して工事費用を削減することも可能。
3. 耐震補強工事等費用の妥当性について
・耐震補強工事に要する期間は、1~1.5ヶ月、申請手続きなどが必要になった場合でも若干延長されるにすぎない。
・被告の見積概算(乙7号証)の1億9100万円のうち、耐震補強工事費の1000万円は妥当。設備機器更新工事費は新築の際の工事費用と比べても著しく高額。
・工事全体の見積金額(乙7)も坪単価100万円で婦選会館を新築した場合とほぼ同額の見積もりであり、異常に高額な見積もりである。
・財団(理事会)の意向を反映した見積書が存在するはずであり、もしも財団(理事会)の意向を反映した概算でないのであれば、見積の出し方として問題がある。