<新人ナースの研修風景>
私と健康心理学第9話:行動変容-3 ストレスマネジメントと禁煙
とある公立病院の新人看護師を対象として、1年近くメンタルヘルス研修をおこなった。
意気揚々と入職した新人が、3ヶ月も待てずに早期離職する例が後を絶たない。そこで、この病院では、新人研修からメンタル面をサポートするためにと、私の専門であるストレスマネジメントの実践を依頼してきたわけである。
4月早々、私と大学院生のY君は、リラクセーションを中心とするストレスマネジメント研修を行うために長距離バスに乗り込んだ。海峡を越え、目的の病院管理棟に着いたのは昼過ぎであった。
研修風景
研修室に集まった新人ナースたちは、ワイワイガヤガヤ。まだ学生気分が抜けないようである。
やがて看護副部長からにぎにぎしく紹介されて、私が登壇した。軽い導入部を過ぎ、パワポイント使った話が始まった。新人看護師は入職直後ショックを受けるかもしれないこと、そのショックストレスで潰れないようにしましょう、リアリティショック乗り越える方法な何か、女性の生き方はどうかなどなど30分ほど話してから、ストレスの検査用紙を使って現在のストレスを測ってみた。ストレスのプロフィールを描く頃には、看護職がもたらす健康被害を、他人事ではなく自分のこととしてとらえる準備ができたようであった。会場は静かにおちついて、表情に少し緊張感がみえる。
呼吸法指導
最後はいつものように、リラクセーションの指導。
「はい、ゆっくりと息を吐いて。今度は吸って。はいまた吐いて。吐いて。吐いて・・・、え、吐いてばっかりやって?そら、苦しくなったら吸えばよろしいやん。」
誰かが笑い出す。会場全体に笑いが伝搬した。
「ハイ、上手、上手。みんな息吐くの上手やね。息吐くには笑うのが一番です。」
張りつめていた空気が一掃された。
新人ナースたちは、なぜ今、呼吸の仕方を学ぶのか、まだ解せない様子。5月の連休明けには、1週間がかりでストレスマネジメントの研修を行うことを伝え、ぶあつい冊子を配布した。
ストレスドック
ストレスドックの実施である。ストレスドックとは、人間ドックのメンタルヘルス版で、心身両面の健康度を総合的に評価するために開発された調査パッケージである。今回は新人看護師用の特別バージョンを用意した。200問ほどの質問票からなる。その場で記入してもらい、持ち帰ってデータ処理し、分かりやすい資料として全員に結果を返すことにした。そして、その人に必要なストレスマネジメントの研修メニューを提案しようという筋立てである。
同じ研修ルームで、半月後の連休明けから1週間、5種類のストレススマネジメント技法を毎日彼女たちに教えようというわけである。
リラクセーション技法の修得は全員への課題である。その他、患者や同僚とのコミュニケーションの仕方を鍛える訓練、論理的な考え方を修得する訓練などをワークショップ形式で学んでもらおうという計画である。
リラクセーションの効果
リラクセーションとは、ストレス状態を自分で抑えるための技法で、呼吸法、自律訓練法、筋弛緩法などを学ぶことでストレスを自己制御するもの。生理心理学から生まれた心理療法で、呼吸法が基本中の基本。
リラクセーション技法を身につけたこの新人ナースは、その後現場に出て数々のストレスフルな出来事に遭遇した。医療ミスあり、上司や先輩とのトラブルあり。患者の経過が急変して死んでしまったという究極のリアリティショックを体験した新人ナースもいた。
そんなとき、研修で習った呼吸法を活用してしのげたかどうかを半年後に聞き取ってみた。うまく活用できたナースは、やはりこれからもこの病院で長く働いていこうという意欲がみられた。ところがうまく活用できなかったナースたちは、早晩退職も覚悟の上という感想であった。
ストレスマネジメント失敗で喫煙
中にはストレスフルな状況になると、タバコに手が行くようになった、アルコールが増えたという人も。病院での仕事に慣れて、2年目に入ろうとする今年の1月に、最後の研修を行った。
ぎこちなかったリラクセーションやアクティベーションがすんなりとできるようになっていた。入植者のなかで、私たちが介入を始めてから辞めてしまったナースは一人だけ。研修効果はあった、早期離職はくい止められたと安堵したのはいうまでもない。
1年がかりの取り組みであっった。いろいろ書きたいことがあるが、ストレスの発生が引き金となって喫煙し、喫煙習慣がついてしまった例が少なくとも数例はありそうである。次の課題は、職場を辞めさせないで、たばこを止めさせる介入法の開発である。
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余計な注釈
禁煙を始めて1年のY君とTさん、その後もなんとか禁煙は継続しているようである。
5月から禁煙を始めたX君はA就職活動のストレスからか、逆戻りしてしまった。リラクセーションを同時に教えて、ストレス反応を呼吸法だけで抑える術を身につけさせる予定である。
私と健康心理学第9話:行動変容-3 ストレスマネジメントと禁煙
とある公立病院の新人看護師を対象として、1年近くメンタルヘルス研修をおこなった。
意気揚々と入職した新人が、3ヶ月も待てずに早期離職する例が後を絶たない。そこで、この病院では、新人研修からメンタル面をサポートするためにと、私の専門であるストレスマネジメントの実践を依頼してきたわけである。
4月早々、私と大学院生のY君は、リラクセーションを中心とするストレスマネジメント研修を行うために長距離バスに乗り込んだ。海峡を越え、目的の病院管理棟に着いたのは昼過ぎであった。
研修風景
研修室に集まった新人ナースたちは、ワイワイガヤガヤ。まだ学生気分が抜けないようである。
やがて看護副部長からにぎにぎしく紹介されて、私が登壇した。軽い導入部を過ぎ、パワポイント使った話が始まった。新人看護師は入職直後ショックを受けるかもしれないこと、そのショックストレスで潰れないようにしましょう、リアリティショック乗り越える方法な何か、女性の生き方はどうかなどなど30分ほど話してから、ストレスの検査用紙を使って現在のストレスを測ってみた。ストレスのプロフィールを描く頃には、看護職がもたらす健康被害を、他人事ではなく自分のこととしてとらえる準備ができたようであった。会場は静かにおちついて、表情に少し緊張感がみえる。
呼吸法指導
最後はいつものように、リラクセーションの指導。
「はい、ゆっくりと息を吐いて。今度は吸って。はいまた吐いて。吐いて。吐いて・・・、え、吐いてばっかりやって?そら、苦しくなったら吸えばよろしいやん。」
誰かが笑い出す。会場全体に笑いが伝搬した。
「ハイ、上手、上手。みんな息吐くの上手やね。息吐くには笑うのが一番です。」
張りつめていた空気が一掃された。
新人ナースたちは、なぜ今、呼吸の仕方を学ぶのか、まだ解せない様子。5月の連休明けには、1週間がかりでストレスマネジメントの研修を行うことを伝え、ぶあつい冊子を配布した。
ストレスドック
ストレスドックの実施である。ストレスドックとは、人間ドックのメンタルヘルス版で、心身両面の健康度を総合的に評価するために開発された調査パッケージである。今回は新人看護師用の特別バージョンを用意した。200問ほどの質問票からなる。その場で記入してもらい、持ち帰ってデータ処理し、分かりやすい資料として全員に結果を返すことにした。そして、その人に必要なストレスマネジメントの研修メニューを提案しようという筋立てである。
同じ研修ルームで、半月後の連休明けから1週間、5種類のストレススマネジメント技法を毎日彼女たちに教えようというわけである。
リラクセーション技法の修得は全員への課題である。その他、患者や同僚とのコミュニケーションの仕方を鍛える訓練、論理的な考え方を修得する訓練などをワークショップ形式で学んでもらおうという計画である。
リラクセーションの効果
リラクセーションとは、ストレス状態を自分で抑えるための技法で、呼吸法、自律訓練法、筋弛緩法などを学ぶことでストレスを自己制御するもの。生理心理学から生まれた心理療法で、呼吸法が基本中の基本。
リラクセーション技法を身につけたこの新人ナースは、その後現場に出て数々のストレスフルな出来事に遭遇した。医療ミスあり、上司や先輩とのトラブルあり。患者の経過が急変して死んでしまったという究極のリアリティショックを体験した新人ナースもいた。
そんなとき、研修で習った呼吸法を活用してしのげたかどうかを半年後に聞き取ってみた。うまく活用できたナースは、やはりこれからもこの病院で長く働いていこうという意欲がみられた。ところがうまく活用できなかったナースたちは、早晩退職も覚悟の上という感想であった。
ストレスマネジメント失敗で喫煙
中にはストレスフルな状況になると、タバコに手が行くようになった、アルコールが増えたという人も。病院での仕事に慣れて、2年目に入ろうとする今年の1月に、最後の研修を行った。
ぎこちなかったリラクセーションやアクティベーションがすんなりとできるようになっていた。入植者のなかで、私たちが介入を始めてから辞めてしまったナースは一人だけ。研修効果はあった、早期離職はくい止められたと安堵したのはいうまでもない。
1年がかりの取り組みであっった。いろいろ書きたいことがあるが、ストレスの発生が引き金となって喫煙し、喫煙習慣がついてしまった例が少なくとも数例はありそうである。次の課題は、職場を辞めさせないで、たばこを止めさせる介入法の開発である。
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余計な注釈
禁煙を始めて1年のY君とTさん、その後もなんとか禁煙は継続しているようである。
5月から禁煙を始めたX君はA就職活動のストレスからか、逆戻りしてしまった。リラクセーションを同時に教えて、ストレス反応を呼吸法だけで抑える術を身につけさせる予定である。
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