FUJISUZUKO

藤鈴呼

灰 2

2007-10-20 21:06:10 | Weblog
最初から読む http://blog.goo.ne.jp/fujisuzuko/e/16c94452f4ecc253f849d30801485783




第2の章 電 話







●・ ・ ・男・ ・ ・●





電話が鳴った・・・。

もしかして・・・紗代か・・・!



馬鹿な・・・。

あいつから電話などあるわけがない・・・。



受話器を取った・・・。

ん・・・? 誰だ・・・?



!!!

紗代・・・!?



無言だが・・・ かすかに聞こえる息遣いは・・・ 紗代だ・・・!

「おい・・・ お前か・・・ 紗代か・・・ 何とか言えよ!」



受話器は、公衆電話からだ・・・。

アナログな、雑音が・・・聞こえる。



「紗代! 紗代!」

おれは、ただ叫んだ。



嬉しかった。

何も言わなくても・・・ 嬉しかった・・・。



「・・・タッくん・・・ あたし・・・あたし・・・もう・・・帰れないよね・・・
帰ないよね・・・。」

泣きながら、紗代の声が聞こえてきた。



懐かしい声だ・・・。

昨日まで、当たり前だと思ってた、紗代の声だ・・・。



「おれ・・・ おれ・・・。」

悪かったと・・・ 言いたかった。



帰って来い! ・・・こころが、叫んでいた・・・。

おまえがいなけりゃ、おれ、また元に戻っちまうんだよ!



「声がね・・・ 聞きたかったんだ・・・ ありがとう・・・それじゃ・・・。」

「ま・・・待てよ! おい! 紗代!」



ツーツーという無機質な音を聞きながら、おれは泣いていた。

泣くしか・・・なかったんだ・・・。







●・ ・ ・女・ ・ ・●





彼の声は 心なしか 震えていたような気がした。

そう・・私は なんにも言えずじまいだったのだけれど・・・



(これで・・・いいんだ・・・)

心の中の自分に 問い掛けてみる。。。



(達也とは・・・もう・・・戻れない)

目の前には 海が広がっている。



(あの場所へ 行こう・・・)

気が付けば あの街への切符を手にしていた。



走る―――――――― 走る。

ただ、ひたすらに。



達也との思い出を切り捨てるために、今の私が出来ることと言ったら・・・

(これ以上この街に留まっていることなど 出来ない・・・ 

そんな事をしたら・・・あたし。。。)



まるで、ストーカーのように 達也につきまとっていたあの頃。

一緒にいることが、こんなに素敵だなんて…思いもしなかった。



お互い仕事で離れていても、毎日のように携帯で話をした。

帰ればまた逢えるのにね・・・。



普通、花束なんて男が女に贈るものよね。

でも達也の誕生日に、 「おらよっ!」 なんて わざと男みたいに 投げ渡してた・
・・ そんな自分が懐かしい。

(嗚呼・・・あの頃の方が 私・・・ 倖せだったのかも知れないね。。。)



両思いになって、恋人になって・・・

(もしかしたら、知り合わない方が倖せだった・・・?)



季節は まだ 巡り行かずに。

舞い散る桜の花びらに この私が 成れれば良いのに。









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灰 1

2007-10-20 21:01:03 | Weblog
素晴らしく長くなりそうな合作です。随時更新予定です♪



「 灰 」       

     words by: しまさん & ふじすずこ






第一の章 独 白







●・ ・ ・男・ ・ ・●





お前が去った夜

おれは一人で・・・酒を飲んでいた・・・。



何かを叫ぶお前の顔が・・・グラスの中で、何度も・・・見える。

だからおれは、何杯も・・・何杯も・・・グラスをカラにしなくちゃならなかったんだ。



今頃気がついても遅い・・・そんなことはわかってる。

どっかのうざったい女性評論家なら、今のおれは絶好のカモかもな。



お前がいなくなった部屋は・・・おれと同じ灰色に見える。

お前が残して行ったものは、鍋とフライパン、そして・・・二人の記念写真・・・。



戻って来い・・・のどまで来てる、この叫び。

叫ぶことができたら、どんなに楽になるだろう。



意地っ張りのおれと、おれのおんなになろうと一生懸命だった・・・お前・・・。

おれたち、幸せだったのか・・・そうなのか・・・。

  







●・ ・ ・女・ ・ ・●

 



何もない部屋の中で

行方知れずの愛に 耳を 傾けていた・・・。



ヒステリックだって貴方は言ったけれど・・・私は 感情に素直になっただけなのに。

だから私は、ひっぱたいたのよ・・・貴方を・・・今頃になって冷たくなっていくこの
指・・・。



ずっと私だけを見詰めて欲しかったのに・・・それさえも叶わなかったから

何処かへ消えた愛情をかき集めて、これから独りで生きてゆくのね。



いつも料理中に後ろから絡み付いてくる貴方が・・・その温もりも今は消えて。

私に残されたものは、貴方からもらった・・ただ1つだけのお守り・・・銀色に輝く丸い
・・・リング。



引き止めて欲しい・・・心の中の言葉、届かない。

振り返ることができたら、また抱き締めあえるのに。



泣くことばかりの私に、貴方の大きな背中がとても遠く見えた あの瞬間から

幾つ時を重ねたと言うの? 季節はまだ 変わっていないのに・・・。
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