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日々是気の向くままに

日々是好日(口実)いろんな分野を気ままに書いていきます。

高額三線売り付け物語

2018年10月17日 | 日記
ある日、三線を使用したポップスが全国的にヒットした。今までは誰も見向きもしなかった沖縄県以外の「内地」でも、三線を習い始める人が出てきた。三線ブームの到来である。おかげで、沖縄の三線店では三線が飛ぶように売れて、新たに三線店を始める人も出てきた。しかし、それもしばらくすると陰りが出始め、それから10年以上もたつと、元の状態に戻り、三線店は食べていくのがやっとの状態となってしまった。
そこで考えた。数が売れないのなら、高級な三線を売り付ければ儲かるかもしれない。「八重山黒木」というのはどうだろう。今では入手困難な「八重山黒木」の原木が「古民家」を解体したら出てきたと言うのだ。いやいや、実際には東南アジアから仕入れた材料でそれとそっくりのものを使って三線を作れば、誰にも分らない。通常10万円前後のカマゴン・カミゲンのものを「八重山黒木」だと言えば50万円と言っても売れるだろう。更に「かの有名な名工」の作だと言えば、70万円でもマニアが飛びつくだろう。ウチナーンチュ同士ならヤバいが、遠方の大和の人間なら売付けてもかまわんだろう。「ウーッシッシッシ、おぬしもワルよのう。」

八重山黒木の三線は値打ちが無い。良く鳴るのはユシギ。でもどちらも代用品にすぎない。

2018年10月17日 | 日記
八重山黒木というのは、もうかなり前から入手困難、というより入手「不可能」な状態である。
八重山黒木の三線は、中古なら存在するかも知れないが、これから新たに制作されることなありえないだろう。
ところが、無いと言われるとよけいに欲しくなるのが人情で、それにつけ込む悪徳業者がいる。
東南アジアから木目の良く似た材料を輸入してきて、これが八重山黒木であると言われても、誰にもわからない。棹を作る職人さんでさえもダマされているかもしれない。
よくあるのが、解体された古民家から出てきたなどという話。しかし冷静になって考ると、昔の家にそんな貴重な材料は使っていないと思う。当時もしあったらもうその時点で三線になっている。

柿の木の系統であり、東南アジアの黒檀に比べると軽くて柔らかい「八重山黒木」の「どこが」「どう」良いというのだろうか。良いのは木目の見栄えだけで、肝心の三線としての強度や音の鳴りは劣っている。
そもそも三線というのは、もともと唐(中国)から「三絃」が伝わったのが始まりで、当時から「棹」も「胴」も「皮」も、材料は全て東南アジア産のものを輸入している。三線の絶対条件であるニシキヘビの皮は、そこにしかない。
だから、沖縄産の材料にこだわる必要はないのだが、貧しい当時に作ったのが、沖縄に自生していた硬くて粘りのある「ユシギ」(イスノキ)で作った三線であり、琉球王朝時代の開鐘(ケージョー)と呼ばれる「良く鳴る三線」は、八重山黒木ではなく「ユシギ」製である。

そして、昔も今も三線の一番贅沢な材料は、東南アジア産の黒檀の棹なのだ。
東南アジア産というと、何だか劣っている感じがするが、こと三線の材料に関しては最高級のモノである。
八重山黒木もユシギも、どちらも本物の黒檀の代用品にすぎない。

歴史的に見ても八重山黒木の三線には何の価値もなく、無意味に高額なだけで、まさに「まぼろし」を追い求めているだけなのだ。