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「イスラエルへの愛」を告白する田村 耕太郎氏+布施 広氏

2011-01-11 19:49:42 | パレスチナかイスラエルか
今回は、「イスラエルへの愛」を告白してた方々の論説を2つ紹介。

1つ目は、前参議院議員こと田村 耕太郎氏。
・世界最強の農業立国イスラエルに学べ!(2011年1月11日 kotarotamura.net)

ここで田村氏は、日本はイスラエルの農業から学ぶべき、という論をぶち上げていたのだが・・・。
田村氏は、冒頭からとんでもない爆弾を投げつけてきた。
以下、2011年1月11日 kotarotamura.net『世界最強の農業立国イスラエルに学べ!』から冒頭部分を(略

---- 以下引用 ----
[前回田村氏が公開した記事でのこと]前回稼ぐ農業のモデルとしてオランダを紹介した。
実は、オランダ以上の農業立国はイスラエル。
今日はその概要を紹介したい。
国土の60%が乾燥地に覆われ、雨季は11月から4月までの間しかなく降雨量は北部で平均700ミリ、南部では50ミリ以下である。
もともと、”アラブ人が農業できないと捨てた”とまで言われるほど過酷な土地に建国されたのがイスラエルなのだ。

この過酷な条件食料自給率は93%以上。イスラエルの農業人口8万人。
一方日本の農業人口400万人。
現在農業輸出高21億ドルでほぼ同じ。
イスラエルが50倍の効率を持っているともいえる。
(以下略)
---- 引用以上 ----

いきなり Theodor HERTLの「民なき土地に土地なき民を」の喧伝かよ(毒)
この「民なき土地に土地なき民を」の問題点は以下参照(手抜き)
・『偽イスラエル政治神話』(23) 第2章:二〇世紀の諸神話 第4節:"民なき土地に土地なき民を"の神話-1/2(jca.apc.org)

というか、この後の田村氏の記事で問題なのは、イスラエルの農業の構造ってのを全く無視してることなのだが。
簡単に書くと、イスラエルは占領してる(というか見方を変えればイスラエル全土が占領地という気がしないでもない)西岸地区で農作物を作っているのよね。
しかも、西岸地区に住んでるパレスチナの人達の水や土地利用・移動を妨害してる上で・・・。
この辺については、去年12月に Human Right Watch(HRW)が出した報告書でも触れられていた。
・Separate and Unequal(2010年12月19日 hrw.org)

田村氏は、記事の中でイスラエルの農業における節水技術を称賛していた。
が、その裏で、イスラエル政府はパレスチナの人達の水利用とかを妨害してんだから笑うしかない。
この辺については、この報告書からホンの一部を引用したおまけを参照のこと(手抜き)

簡単に書けば、田村氏はこの記事で「イスラエルへの愛」を示したって所だ。
占領を続け人種差別的政策を次々と打ち出すイスラエルに対し・・・。


2つ目は、毎日jp に掲載された毎日新聞専門編集委員布施 広氏による日本人論。
・反射鏡:よみがえるイザヤ・ベンダサン=専門編集委員・布施広(2011年1月9日 毎日jp)

この論説の冒頭、布施氏はこの記事で最初に紹介した『日本人とユダヤ人』で使われていた「法外の法」という概念を引き合いにして、沖縄の普天間米軍基地の移設問題に触れていた。
ちなみに、ごく一部の方々の間では、以前から「日ユ同祖論(日本=ユダヤ同祖論)」なんてのが受け入れられている。
簡単に書くと、「日本人は古代ユダヤ人の末裔」って奴だ。
去年は去年で、某ビジネス誌上で「一流社員が読むべき本」としてこの論を扱った『日本人とユダヤ人(山本 七平著:イザヤ・ベンダサンをペンネームとして使っていたとか)』が挙げられていた。
・『日本人とユダヤ人』(2010年1月3日 president.jp.reuters.com)

この辺りついては面倒なので省略。

その後、布施氏は、ベンダサン(というか山本 七平氏)の論を引き合いに、謎だらけの日本人論をぶち上げた。
以下、2011年1月9日分毎日jp『よみがえるイザヤ・ベンダサン』から序盤部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
さてベンダサン氏によると、日本人のもう一つのキーワードは「台風一過」である。
日本人が忍耐と言う場合、それは「首をちぢめてじっと台風一過を待つこと」であっても、ユダヤ人のように「何千年でもつづく人災に対処するため、何代にもわたって重荷を負いつづける」ことではないという。

 これも正しい指摘だろう。
多くの日本人は尖閣諸島周辺での中国漁船衝突事件やロシア大統領の国後島訪問、北朝鮮の韓国領砲撃などに驚いても、やがて「のど元過ぎれば」で忘れるか、忘れたように暮らす。
日本人の関心は、放っておくと外交・安保から身近な生活関連事項に移りがちで、それが日本人のデフォルト(初期設定)のようにも思える。
だが、それでは長期的な対処を要する問題が解決しないのは言うまでもない。
(以下略)
---- 引用以上 ----

いやいや、何も「外交・安保から身近な生活関連事項に移りがち」なのは日本人に限らないだろうに。
逆に、布施氏に対して、自身が唱える日本人なのかどうか問い返したいわい。

が、布施氏の論説で本当に問題だったのは、「正真正銘の」ユダヤ人識者(布施氏談)ことベン・アミー・シロニー(Ben-Ami SHILLONY:בן-עמי שילוני)ヘブライ大学名誉教授の発言を引用した後の展開。
ここで、布施氏は、イスラエルへの憧れを示した上で、中国・ロシア・北朝鮮を敵視していた。
以下、2011年1月9日分毎日jp『よみがえるイザヤ・ベンダサン』から終盤部分を(略
ただし、SHILLONY 名誉教授の発言部分は斜め文字にした。

---- 以下引用 ----
(中略)
ユダヤ人はホロコースト、日本人は原爆投下。
ともに大きな悲劇を経験したが、第二次大戦後は正反対の道を歩いた。
ユダヤ人はイスラエルを建国し、「自分たちは弱すぎたから悲劇を味わった」と考えて外敵(アラブ諸国)に身構えた。
日本は逆に「軍事力への信頼が強すぎた」と反省して軽武装国家の道を選んだが、尖閣事件後は「自分たちは弱すぎる」と感じているかもしれない
--と。

 パレスチナを占領し、敵対国の核施設などを「防衛的先制攻撃」で破壊して安全を担保してきたイスラエルに対して、日本は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」して「安全と生存を保持しようと決意した」(憲法前文)国である。

 その日本も戦後65年にして考え込まざるをえない点に、今の国際情勢の危うさがあるように思える。
そもそも中国やロシア、北朝鮮を「平和を愛する諸国民」とみなしていいのか。
重大な疑問が平和立国・日本を立ちすくませる。
(以下略)
---- 引用以上 ----

SHILLONY 名誉教授の発言自体も結構問題なのだが、これを受けた布施氏の見解の方がもっと危険だわな。
布施氏は、日本政府に日本の周辺諸国を「敵」に回して欲しいんか?

確かに、イスラエルは、「自分たちは弱すぎたから悲劇を味わった」と考えて外敵(アラブ諸国)に身構えたわけだ。
しかし、その後イスラエルが辿った道はどうだったか?
繰り返し行われる戦争・侵攻、パレスチナの人達の大量殺害、イスラエル国内の非ユダヤ系の人達への抑圧的行動・・・。
およそ正気の沙汰じゃない。

どうも、布施氏の論説からは、日本にイスラエルと(悪いところだけ)同じような道を歩ませたい、という意思を感じてしまう俺。
つか、これも「イスラエルへの愛」って奴だろうか?


それにしても。
「日ユ同祖論」にしろ、「イスラエルへの愛」にしろ、両者のどちらかへの支持を示す人の根本には「選民思想」への憧れがあるんだろうか(苦笑)。


2011年2月11日追記:
20011年1月24日になって、田村 耕太郎氏は日経ビジネスオンライン上に件の記事をベースにした記事を(会員向けに)公開していた。
・「食糧自給率」より「稼ぐ農業」!(日経ビジネスオンライン)
・「食糧自給率」より「稼ぐ農業」!-イスラエル、オランダ型農業で日本農業を再生せよ-と言うが・・・(2011年1月27日 正しい食事を考える会;上記事の全文転載モノ)

こっちには、「もともと、”アラブ人が農業できないと捨てた”とまで言われるほど過酷な土地に建国されたのがイスラエルなのだ」といった文言はない。
流石に、田村氏もこの記述の問題点に気づいた、と思いたい・・・。


おまけ:2010年12月19日分 hrw.org『Separate and Unequal』から水利用の状況に関する『Water』というセクション(このセクションは Summary の一部)から、冒頭部分を(略
ただし、一部表記を変更した。

---- 以下引用 ----
(中略)
Water has long been a scarce resource in the semi-arid region, and is under increased threat of over-extraction; a symbol of the pressure on regional water resources is the fact that the level of the Dead Sea is dropping by one meter per year.
Israeli authorities have controlled West Bank water resources since they seized the land from Jordan in 1967, and continue to control completely all Palestinian access to water resources in the West Bank, including in Areas A, B and C[オスロ合意で定められた管理区域区分].
Israel provides Jewish settlers with access to water for domestic and agricultural use that it denies Palestinians.
This policy has benefited the Jewish settler economy while damaging that of Palestinians, whose agricultural sector has lost up to 110,800 jobs compared to its potential with adequate access to water resources, according to the World Bank.

Jewish settlements—which use a significant proportion of the water to produce agricultural goods for export by a government-run private export company, Agrexco—are serviced by wells in the West Bank (largely in the Jordan Valley), and by the Israeli national water network (Mekorot), which itself extracts water flowing from aquifers lying beneath the occupied West Bank.[注13]
Even many unauthorized settlement outposts are connected to the national water network.
In general, Israeli subsidies for settlers, including those for settlement agriculture products, help offset costs of water and other utilities.
(以下略)

[注13]Israel’s use of water resources originating in the West Bank includes substantial runoff from the Western and Northeastern aquifers into areas inside Israel; Palestinians are barred from using more than a small fraction of the resources of these aquifers before they flow into Israel.
The joint Israeli-PA water commission does not have authority over such water resources when extracted inside Israel.

---- 引用以上 ----

田村氏には、イスラエルの農業技術の素晴らしさばかりが目に映っていたようだ。


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