今月23日のことになるが、フランスの上院で「『アルメニア人の虐殺』を否定するのを禁止する」法案()が可決されたのだが・・・。
・「アルメニア人大虐殺」否定禁止=仏で新法-トルコは対抗措置も(2012年1月24日 時事ドットコム)
・「アルメニア人大虐殺」の否定を禁じる法案を可決、仏上院(2012年1月24日 afpbb.com)
・トルコ 報復措置も辞さず―仏のアルメニア人虐殺否定禁止法で(2012年1月25日 jp.wsj.com)
そもそも、『アルメニア人の虐殺』って何?
元は、1915年から当時のオスマン帝国の支配下にあったアルメニアの人達が強制移動などを強いられた結果、1915年~1923年にかけて多くの人達が亡くなってしまったってこと。
しかし、亡くなった人達の人数やその原因については、長年論争が続いている模様。
アルメニア政府などは「オスマン帝国による虐殺で150万人以上が虐殺された」と主張し、トルコ政府とかは「50万人程度の人達が戦争や飢えで亡くなってるし、アルメニア側にも責任がある」なんて言う状態で・・・。
話を例の法案に戻す。
この法案の可決を受けて、トルコ政府は反発を強めてる模様。
以下、2012年1月25日分 jp.wsj.com『トルコ 報復措置も辞さず~』から前半部分を(略
---- 以下引用 ----
【パリ】
トルコは24日、第1次大戦中に当時のオスマン・トルコ領内で起きた「アルメニア人大虐殺」を公の場で否定することを禁止する法案をフランス上院が前日可決したことに強く反発、報復措置も辞さない姿勢を示した。
同法案可決を受けて両国間が緊張しており、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する両国間で大きな外交上の亀裂の恐れが強まっている。
フランスの国民議会(下院)も昨年12月に同法案を可決している。
上院では賛成127、反対86で可決された。
15日以内にサルコジ大統領の署名を経て成立する。
同法案は、フランスの法律によって認定された大虐殺、人道的な犯罪、戦争犯罪を否定した場合、禁固刑最大1年と4万5000ユーロ(約450万円)の罰金を科すという内容。
フランスの法律で大虐殺として認定されているのは、第1次大戦中のアルメニア人殺害と第2次大戦中の「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)」で、ホロコーストを否定するのは既にフランスの法律で禁じられている。
トルコでは下院に続き上院の同法案可決を受けて、フランスは国際法をもてあそんでいるなどと抗議の声が上がっており、「無責任な」決定に対抗するため、「あらゆる措置」を講じるとしている。
トルコ外務省は「法律の最終手続きが完了した場合、われわれはこれまで検討してきた適切な措置を実施するのをためらわない」との声明を発表した。
(以下略)
---- 引用以上 ----
実は、トルコ政府だけじゃなく、アゼルバイジャン政府も例の法案可決に反対してる模様。
その背景としては、アゼルバイジャンがアルメニアと長年対立してるってのもあるようだが・・・。
・Azerbaijan denounces France vote on Armenia 'genocide'(2012年1月24日 hurriyetdailynews.com;AFP)
つか、この法案については少なからず反対する上院議員もいたのも事実。
もっとも、採決の際棄権か欠席した議員も相当いたけどな。
・Scrutin n° 93 - séance du 23 janvier 2012(2012年1月23日 senat.fr;フランス語)
以下、2012年1月23日分 senat.fr『Scrutin~』から投票結果を(略
---- 以下引用 ----
投票参加人数(Nombre de votants):236
投票総数(Suffrages exprimés):212
投票総数の過半数(Majorité des suffrages exprimés):107
賛成(Pour):126
反対(Contre):86
棄権(Abstentions):24
欠席(N'ont pas pris part au vote):111
議員総数:347
---- 引用以上 ----
欠席や棄権は例の法案に賛成、という説もあるが・・・。
例の法案は議員にとっても扱いの難しいブツ、ってことの裏返しなんだろうか?
で、例の法案に対しては、表現の自由の侵害に繋がるという懸念もあるんだよな(フランスの議会でもこれに関する批判があったらしい)。
・フランス : アルメニア人虐殺の否定を禁じる法案は、表現の自由への脅威(2012年1月27日 amnesty.or.jp)
・France: Genocide-denial bill threatens freedom of expression(2012年1月24日 amnesty.org)
Amnesty International の声明では、(トルコ政府の姿勢を非難しつつ)国際人権法で表現の自由の制限を認める場合について言及していた。
その上で、例の法案の問題点を指摘していた・
以下、2012年1月17日分 amnesty.or.jp『アルメニア人虐殺の~』から後半部分を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
国際人権法が表現の自由の制限を認めるのは、他者の権利や評判への配慮を含めた特定の目的のために、もしくは国の安全や公序を維持するために、必要かつ妥当な場合である。
今回のケースは、いずれにも当てはまらない。
そして過去の大事件やその評価に対する、「非常識な」異議や矮小化によって、表現の自由の行使が「犯罪である」と捉えられてしまう、とアムネスティは考えている。
国際人権法はまた各国に対し、差別や暴力のきっかけとなる、国や民族、宗教への嫌悪感の提唱の禁止を義務づけている。
「この法案は、暴力や嫌悪を誘発する人種差別や排外的発言と闘う欧州ガイドラインを具体化するものである」とフランス当局は主張している。
しかしながら、禁止の対象となる誘発表現がどのようなものであるかが法案には記されていないし、そもそも誘発行為を禁止する法律は、すでに存在している。
「同法案の真の問題は、1915年のアルメニア人の大量殺人や強制移動が虐殺であるかどうかということではなく、この議論をうけて、当局が表現の自由を削ごうとしていることなのです」とニコラ・ダックワースは述べた。
「フランス当局は、国際人権法に定められた義務に従うべきです」
---- 引用以上 ----
例の法案については、フランスに住んでいるアルメニア人(約30万人)の票狙いとか、トルコの EU 加盟妨害が狙い、なんて説もあるが・・・。
いずれにしろ、例の法案に賛成した議員の方々は、こうした問題点を無視したのは確かなようだ。
にしても。
今後、世界各国で「○○(過去の戦争犯罪とか)を否定する発言を禁止する法律」なんてのが広まったら笑えないというか・・・。
・「アルメニア人大虐殺」否定禁止=仏で新法-トルコは対抗措置も(2012年1月24日 時事ドットコム)
・「アルメニア人大虐殺」の否定を禁じる法案を可決、仏上院(2012年1月24日 afpbb.com)
・トルコ 報復措置も辞さず―仏のアルメニア人虐殺否定禁止法で(2012年1月25日 jp.wsj.com)
そもそも、『アルメニア人の虐殺』って何?
元は、1915年から当時のオスマン帝国の支配下にあったアルメニアの人達が強制移動などを強いられた結果、1915年~1923年にかけて多くの人達が亡くなってしまったってこと。
しかし、亡くなった人達の人数やその原因については、長年論争が続いている模様。
アルメニア政府などは「オスマン帝国による虐殺で150万人以上が虐殺された」と主張し、トルコ政府とかは「50万人程度の人達が戦争や飢えで亡くなってるし、アルメニア側にも責任がある」なんて言う状態で・・・。
話を例の法案に戻す。
この法案の可決を受けて、トルコ政府は反発を強めてる模様。
以下、2012年1月25日分 jp.wsj.com『トルコ 報復措置も辞さず~』から前半部分を(略
---- 以下引用 ----
【パリ】
トルコは24日、第1次大戦中に当時のオスマン・トルコ領内で起きた「アルメニア人大虐殺」を公の場で否定することを禁止する法案をフランス上院が前日可決したことに強く反発、報復措置も辞さない姿勢を示した。
同法案可決を受けて両国間が緊張しており、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する両国間で大きな外交上の亀裂の恐れが強まっている。
フランスの国民議会(下院)も昨年12月に同法案を可決している。
上院では賛成127、反対86で可決された。
15日以内にサルコジ大統領の署名を経て成立する。
同法案は、フランスの法律によって認定された大虐殺、人道的な犯罪、戦争犯罪を否定した場合、禁固刑最大1年と4万5000ユーロ(約450万円)の罰金を科すという内容。
フランスの法律で大虐殺として認定されているのは、第1次大戦中のアルメニア人殺害と第2次大戦中の「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)」で、ホロコーストを否定するのは既にフランスの法律で禁じられている。
トルコでは下院に続き上院の同法案可決を受けて、フランスは国際法をもてあそんでいるなどと抗議の声が上がっており、「無責任な」決定に対抗するため、「あらゆる措置」を講じるとしている。
トルコ外務省は「法律の最終手続きが完了した場合、われわれはこれまで検討してきた適切な措置を実施するのをためらわない」との声明を発表した。
(以下略)
---- 引用以上 ----
実は、トルコ政府だけじゃなく、アゼルバイジャン政府も例の法案可決に反対してる模様。
その背景としては、アゼルバイジャンがアルメニアと長年対立してるってのもあるようだが・・・。
・Azerbaijan denounces France vote on Armenia 'genocide'(2012年1月24日 hurriyetdailynews.com;AFP)
つか、この法案については少なからず反対する上院議員もいたのも事実。
もっとも、採決の際棄権か欠席した議員も相当いたけどな。
・Scrutin n° 93 - séance du 23 janvier 2012(2012年1月23日 senat.fr;フランス語)
以下、2012年1月23日分 senat.fr『Scrutin~』から投票結果を(略
---- 以下引用 ----
投票参加人数(Nombre de votants):236
投票総数(Suffrages exprimés):212
投票総数の過半数(Majorité des suffrages exprimés):107
賛成(Pour):126
反対(Contre):86
棄権(Abstentions):24
欠席(N'ont pas pris part au vote):111
議員総数:347
---- 引用以上 ----
欠席や棄権は例の法案に賛成、という説もあるが・・・。
例の法案は議員にとっても扱いの難しいブツ、ってことの裏返しなんだろうか?
で、例の法案に対しては、表現の自由の侵害に繋がるという懸念もあるんだよな(フランスの議会でもこれに関する批判があったらしい)。
・フランス : アルメニア人虐殺の否定を禁じる法案は、表現の自由への脅威(2012年1月27日 amnesty.or.jp)
・France: Genocide-denial bill threatens freedom of expression(2012年1月24日 amnesty.org)
Amnesty International の声明では、(トルコ政府の姿勢を非難しつつ)国際人権法で表現の自由の制限を認める場合について言及していた。
その上で、例の法案の問題点を指摘していた・
以下、2012年1月17日分 amnesty.or.jp『アルメニア人虐殺の~』から後半部分を(略
---- 以下引用 ----
(中略)
国際人権法が表現の自由の制限を認めるのは、他者の権利や評判への配慮を含めた特定の目的のために、もしくは国の安全や公序を維持するために、必要かつ妥当な場合である。
今回のケースは、いずれにも当てはまらない。
そして過去の大事件やその評価に対する、「非常識な」異議や矮小化によって、表現の自由の行使が「犯罪である」と捉えられてしまう、とアムネスティは考えている。
国際人権法はまた各国に対し、差別や暴力のきっかけとなる、国や民族、宗教への嫌悪感の提唱の禁止を義務づけている。
「この法案は、暴力や嫌悪を誘発する人種差別や排外的発言と闘う欧州ガイドラインを具体化するものである」とフランス当局は主張している。
しかしながら、禁止の対象となる誘発表現がどのようなものであるかが法案には記されていないし、そもそも誘発行為を禁止する法律は、すでに存在している。
「同法案の真の問題は、1915年のアルメニア人の大量殺人や強制移動が虐殺であるかどうかということではなく、この議論をうけて、当局が表現の自由を削ごうとしていることなのです」とニコラ・ダックワースは述べた。
「フランス当局は、国際人権法に定められた義務に従うべきです」
---- 引用以上 ----
例の法案については、フランスに住んでいるアルメニア人(約30万人)の票狙いとか、トルコの EU 加盟妨害が狙い、なんて説もあるが・・・。
いずれにしろ、例の法案に賛成した議員の方々は、こうした問題点を無視したのは確かなようだ。
にしても。
今後、世界各国で「○○(過去の戦争犯罪とか)を否定する発言を禁止する法律」なんてのが広まったら笑えないというか・・・。