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「イスラム過激派のテロ」という前提があったんだろうが

2011-07-24 20:45:52 | 時事ネタ(海外)
一昨日ノルウェーで発生した爆破事件+銃乱射事件は、色んな意味で世界各地に衝撃を与えた(と思う)。
・The aftermath of the Norway attacks — in pictures(2011年7月23日 guardian.co.uk)
・Slik foregikk massakren(2011年7月23日 nrk.no;ノルウェー語)

実は、この事件の発生直後、一部の報道で「イスラム過激派の犯行」なんて伝えられてた。
これに関して、イスラム教徒の方々から反発が出てたらしい・・・。
・ノルウェーテロ:イスラム圏で西側報道に反発(2011年7月24日 毎日jp)

欧州の人達がイスラム教徒(+ユダヤ教徒)に偏見や嫌悪感を持ってるのは以前からのこととはいえ・・・。
さしあたっては、2011年7月24日分毎日jp 『ノルウェーテロ:イスラム圏で西側報道に反発』を全文(略

---- 以下引用 ----
 【カイロ和田浩明】
ノルウェーで22日起きた連続テロで、欧米メディアが当初、イスラム過激派の犯行を疑う報道を繰り広げたことに対してイスラム圏で反発が出ている。
欧州では過去にイスラム過激派が関与した大規模テロがあり、今回も過激派ウェブサイトに「犯行声明」が一時、掲示された。
だが、逮捕された容疑者はノルウェー人の男で、反イスラム的な考えを持っている可能性も浮上した。

 ノルウェーはアフガニスタンに派兵しており、国際テロ組織アルカイダなどが批判してきた。
英BBCや米ニューヨーク・タイムズ(電子版)などの主要メディアは、連続テロの発生から数時間の間は「イスラム過激派犯行説」をほのめかす報道ぶりだった。

 実際、イスラム過激派のサイトには「今回の攻撃はアフガン駐留が理由だ」などとする犯行声明の体裁を取った文書が一時、掲示された。
サイトにはテロを称賛する多数の書き込みも行われた。

 しかし、逮捕されたアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)は反イスラム的な傾向のあるキリスト教原理主義者とされる。
簡易ブログ「ツイッター」では容疑者逮捕後、「西側の報道はイスラム非難に偏向している」といったイスラム圏からの書き込みが目立った。

 エジプトのイスラム過激派専門家、ムニール・アディーブ氏は「今回の事件報道は西側諸国にイスラム教徒に対する誤った理解があることを示した」と述べた。
---- 引用以上 ----

う~む。
欧州各国では、イスラム教徒(+ユダヤ教徒)への反発が強まってるという話もあるしな~。
PEW Global Research が今月21日に公表した世論調査の結果は、そうした反発が根強いってのを示してるかと。
これについては以下参照(手抜き)
・Common Concerns About Islamic Extremism: Muslim-Western Tensions Persist(2011年7月21日 pewglobal.org)

ちなみに、日本でも同じような論調の記事でこの事件を伝えてた所もあった。
・狙われた「平和の象徴」(2011年7月23日 MSN産経ニュース)

こっそり「ノルウェーの外交上の懸案は商業捕鯨だけ」なんて捕鯨ネタを入れてるのが、3K新聞の面目躍如というべきか(謎笑)


・・・話を毎日jp の記事に戻すと、guardian.co.uk や NYTimes などは、事件発生から少し後になって Ansar al-Jihad al-Alami と名乗る人物(Global Jihad:世界イスラム聖戦に関わってるとか)が例の事件を起こした、なんて伝えていた。
が、そうでないことが判明するや否や、NYT はその記述を削除していた模様。
この辺は以下参照(手抜き)
・Norway attacks suggest political motive(2011年7月23日 guardian.co.uk)
・At Least 80 Dead in Norway Shooting(2011年7月22日 nytimes.com)
・Corporate Media Runs False CIA Story Stating Muslim Group Claimed Responsibility For Oslo Bombings(2011年7月22日 Alexander Higgins Blog)

記事を修正するだけマシ、って思いたいけど・・・(違)

変な話、上の騒動ってのは、例の事件の背景について「イスラム過激派によるテロであって欲しい」という編集側の願望が招いたことかもしれん。
あるいは、受け取る側が(イスラム過激派によるテロという)「かくあるべき」話を望んでいたことなのか・・・。


こういう話は、今回の事件に限らないのかもしれない。
以下の事例は、少し角度が違うけど・・・。
・Who is the real oppressor of Gaza women’s rights?(2011年7月22日 Electronic Intifada)

上の EI の記事では、Gaza 地区における女性の扱いに関する報道が、Gaza 地区の実態とズレてることに触れていた。
その中で、2009年10月に出てきた『Gaza 地区の女性がバイクを乗るのを Hamas が禁止した』という報道の問題点を以下のように指摘していた。
以下、2011年7月22日分 Electronic Intifada『Who is the real oppressor~』から中盤部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
For instance, a few months ago, a “unique” story was covered by several major news agencies that described the harshness of the Hamas regime in Gaza by stating that women in Gaza are not allowed to ride motorcycles.

This spurred a lot of talk and media attention among the good-hearted international media community, so very concerned about the situation of women under the Hamas government in Gaza.

But did any of these media agencies care to ask even as few as ten women in Gaza what they thought of the “right” to drive motorcycles?
No, because they know that these women, who really have no time to spare on such needless matters, would have ridiculed them.
The women would be more wiling to discuss real issues that matter to them, such as women in Israeli jails, poverty, lack of adequate health care, lack of education and job opportunities that are mainly attributable to the Israeli occupation.

Instead, international media decide to focus on mundane, yet “attractive” issues that affect very few women in Gaza, but that do a good job in ruining the image of Gaza and of Hamas.
Real issues do not matter.
Put aside issues that are caused by the occupation — we already know those, we are told.
Tell us about problems caused by the Hamas government.
(以下略)
---- 引用以上 ----

↓『Gaza 地区の女性がバイクを乗るのを Hamas が禁止した』という記事の一例。
・Hamas bans women on motorcycles in Gaza Strip(2009年10月8日 reuters.com)

「Hamas はGaza 地区の女性は抑圧してる」なんて前提を立てて、どういう話をニュースにするかを決めるからこそだろうが・・・。
例の事件もそうだが、こういう事例を見ると、思い込みとか偏見をできる限り捨て去るのが難しいかを嫌でも思い知らされるわ。


それはそうと。
例の事件の影響について、marburg_aromatics_chem さんが意味深な指摘を・・・。
・ノルウェーでの爆弾テロ・銃乱射事件の容疑者は移民受入反対論者(2011年7月24日 ドイツ語好きの化学者のメモ)

以下、2011年7月24日分 ドイツ語好きの化学者のメモ『ノルウェーでの爆弾テロ~』から終盤部分を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
ところで日本での無差別爆弾テロというと、小学生の時に起きた三菱重工ビル爆破テロが思い出される。
また、サリンによる化学テロも、無差別テロということで、全世界を震撼させた。
その後も各地でテロが起きているが、日本でも狂信的団体がテロを起こす可能性はゼロではない。
また日本では、世界人権宣言や日本国憲法の精神を遵守すべきはずの政治家だけでなく、影響力のある言論人たちが、外国人排斥思想を国民に吹き込んでいる。
社会科教科書での歴史記述内容の問題について、様々な議論があるのは周知のことだ。

(中略)
日本ではまだまだ人権意識が低く、外国人排斥思想など右傾化しやすいと危惧している。
外国人の人権を擁護するリベラル派日本人を、極右思想を持つ日本人が殺害するという事件も起きるだろう。
そして言論の自由・表現の自由が脅かされるのではないかと心配だ。

また、忘れてならないのは、イスラエルのラビン首相を暗殺したのは、パレスチナ人ではなく、極右思想を持ったユダヤ人であった。
同様に今回のノルウェーでのテロも、自分と異なる考えを持つ労働党員を狙ったもので、自国民同士が対立しているのだ。
ノルウェーを含めたヨーロッパで、これ以上、外国人排斥運動が広がらないことを祈りたい。
---- 引用以上 ----

実際、日本では「(ノルウェーの)移民政策が原因」と言い張る人達もチラホラいるしな~。
それどころか、例の事件の容疑者を擁護する意見すら・・・。

この調子だと、例の事件以上の危険な事態が日本で発生しても不思議じゃね~な・・・(汗)


2011年7月28日追記:
以下の記事に trackback を送信。
・“ノルウェーの悲劇”を決して日本で起こしてはならない(2011年7月26日 vanacoralの日記)


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2 コメント

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ストックホルムのテロがあったからかな? (nessko)
2011-07-25 20:43:20
去年の12月に、ストックホルムであった爆破テロの犯人は、イスラム過激派だったそうですから、同じ北欧だというので、最初に頭に浮かんだんじゃないでしょうか。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110113/erp11011307260019-n1.htm
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nessko さんへ (flagburner)
2011-07-26 18:35:55
コメント&情報ありがとうございます。

>去年の12月に、ストックホルムであった爆破テロの犯人は、イスラム過激派だったそうですから、同じ北欧だというので、最初に頭に浮かんだんじゃないでしょうか
確かに(苦笑)
それに加え、イスラム過激派以外の人達によるテロの可能性について考えが及ばなかったのもありそうです。

幸か不幸か、日本ではこの事件について割と冷静に伝えられている気がします。
もっとも、仮にこのような事件が日本の近くの国で起こっていたら、ヒステリックな反応をするのが目に見えますが・・・。
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