並んで泳ぐオシドリ 2014-01-10 明治神宮
その日の朝。TVから『日本のマチュピチュにロープが張られ…。』といったフレーズが流れてきました。さるTVコマーシャルで取り上げられ、急速に観光客が増え、事故が起きているということのようです。僕は行ったことが無いのでわかりませんが、冬はかなり危ないということらしいです。
最近の、TVやウェブサイトの影響は実に大きく。何かあると、あっという間に広まってしまいます。いや、何かなくても、商業目的で、あるかのごとく情報を操作している節もあると思うのですが…。
実際、グルメ番組などがあると、その後はとんでもなく人が来るようです。そういう僕も、食べることは大好きで、何度かそういった情報に頼った事はあります。が、しかし、満足が得られたことはほとんどありませんでした。
「なんでこんな情報に群がるのかね?」
もっと自分の感覚で、良い店を見つけろよ。という気持ちは強くあります。あまり知られていない自分の贔屓の店を探そうよと言いたいです。
「インターネットとかで、こんなに情報が流されたら、仕方ないじゃない」と上さん。
確かにそうなのでしょう。
さて、その日僕は仕事の打ち合わせが早く終わったため、帰りに明治神宮に寄ってみました。都内で、学生の実習に使える場所は無いかと、何カ所か目を付けていたのです。
行ってみると、松の内も開けたと言うのに、結構人が沢山いるのに驚きました。
僕は、新宿御苑、井の頭公園、そしてここ明治神宮にオシドリが居ることを知っていました。ここは初めてだったのですが、久しぶりにオシドリでも見て行こうと暗い常緑樹の並ぶ森の中を探して歩いていると、突然広い草地と、池が現れました。そして、初老の男性が二人、池の方を眺めているのです。
「ここで間違えなさそうだ」と思い、彼らの視線を追うと、確かにいました。薄暗い藪上になった場所に、雄が2羽とメスが1羽。しばらく眺めていたのですが、何も動きが無いので、ほかの場所を一回り見てくることにしました。
薄暗い藪状の水面で休むオシドリ 2014-01-10 明治神宮
30分ほど歩きまわって戻ってみると、何やら騒々しいのです。先ほどの二人とは別に何人かの見物者集まっていて、その中の一人が、大きな声で話しかけているのです。
「ここ三脚立てていいのか? 最近オシドリの写真を撮りに来る人が増えて、三脚がずらりと並ぶので、三脚禁止になったんだぞ! だから、俺は、手持ちでもとれる小さいレンズで来たんだ」ということでした。
確かに、野鳥の情報が流れると、一気にファンが集まります。特に最近は、三脚、ボディー、レンズを合わせると悠に100万円を超えるカメラセットを持ったリタイア老人と思わる人がいて、その多さには驚かされます。以前、知り合いのプロカメラマンが、世界で一番高級カメラが売れているのが日本なんだ。それもプロではなくアマチュアが購入者の多くを占めている」と聞いたことがあります。
金額のことはともかく、決して悪いことではないと思います。実にいい趣味だと思うのですが、やや不満もあります。鳥や、自然に強い興味があるのではなく、カメラと言うメカと、コレクター的な撮影に強い関心に留まってしまう方が多いからです。
大声で話していた男性がいなくなると、別の男性が池に向かって何かを投げはじめました。どうやらドングリのようです。最初はオシドリの近くに一個ずつ。おしどりが首を持ち上げると、今度は、自分のいる近くの水面に、関取が土俵に塩をまくようにばバラと巻きました。すると、オシドリが急に泳ぎ出したのです。ありがたいことに、かなり近くに来てくれました。僕は、急遽立ち寄ったために、コンパクトカメラしかもっていなかったのですが、それでもありがたく撮影することができました。
オシドリ 水面に映る自分の姿を眺めているように見えますが、水底のドングリを探しているようです
2014-01-10 明治神宮
帰り道で考えました。日本のマチュピチュも、グルメも、オシドリも、みな同じ社会現象ではないだろうかと…。そして、同じように自然情報を発信している僕自身も、その現象を構成する、いや積極的進めている一人なのではないかと…。
すぐには答えが出てきません。しばらくの間は、霧のかかった視界を進むことになりそうです。