チタン鋳造はインゴットが溶けてゆく様が美しく、どこか劇的に見えます。
この後、アームが回転して鋳造が終了します。
最近当ラボでは、チタンの金属床のオーダーの割合が多くなっています。
現在のチタン鋳造は鋳造機や材料が格段に良くなっていますから、適合・物性の品質はもちろん、さらにレーザー溶接機の登場で修理の利便性・強度・仕上がりは昔とは比較にならないほど良くなりました。
金属床の素材が何であろうと口腔内装着の手間はコバルトクロムと何ら変わりませんし、金属アレルギー体質の方への対応がしやすいという大きな魅力がありますから、選択されやすくなっているのでしょう。
金属床の他には、時おり純チタンのフレームでメタルボンドも焼きますし、インプラントの上部構造や一部のカスタムアバットメント、自家製ブレードティースなどにも応用しています。
チタン鋳造は応用範囲が広く、鋳接タイプのアバットメントやアッチメントを除き、貴金属でできる範囲の鋳造物なら概ね可能です。
最近は金属床専用の技術のように見られがちなチタン鋳造ですが、実はこれほど用途が多彩な技術も少ないのです。
その気になれば補綴をチタンで単一金属化することもできるということも残念ながら業界ではすでに忘れられているんですね。
思い起こせば歯科のチタン鋳造の発祥は日本で、そのシステムが発表された当時は最近のものに例えるなら、CAD/CAMのような業界最大のトピックのひとつでした。
どこの義歯ラボもその導入を夢見た先端技工の花形でした。私も当時そう思った一人です。・・・80年代の中頃の話ですけどね。
チタン鋳造機を小型化して小規模な歯科技工所の卓上に持ってくるという発想を実現するには相当な苦労があったはずです。何と言っても世界初なんですからこれはもう「偉業」と言って間違いありません。
その偉業を日本人技工士(故人)が世界で最初に成し得たということに誇りを持って良いと思いますし、忘れちゃ可哀想ですよね。
まぁ、偉大なる先人に思いを致すのもたまには良いかと・・・。
EVANSPRO Dental Laboratory