窒化処理、ようやくモノになりました。

2011-04-09 17:39:08 | チタン関連
以前、本ブログで紹介したチタン鋳造床の窒化処理ですが、機材を導入したもののうまくいかず苦労していましたが、どうやらモノにできたようで自然な黄金色と高い表面硬度、化学的な安定性を得られるようになりました。
窒化処理は絶版となって既に久しい機材を使用するため、手探りで最適なプログラムを構築せねばならず、思いのほか時間がかかってしまいました。



チタン及びチタン合金は良く知られている通り、軽量で生体親和性にすぐれた金属です。
私個人は適正に鋳造されたものなら補綴用金属としてCo-Cr合金よりも優れた素材ではないかと思っています。

その反面、化学的に活性で高温下では酸素や埋没材、その他溶湯に触れる物質と極めて反応しやすく、常温においても紫外線の条件により酸素と化合したり、歯磨材などに含まれるフッ素と結合して面荒れや変色を起こしやすいという欠点もあります(チタン合金の場合は少し異なりますが)。
口腔内にセットされ、光沢が無くなって汚い灰色に変色した純チタン鋳造床をよく見かけるのはそのためです。
窒化処理を施したチタン床なら取り扱いに神経質さはありませんし、表面に生成された窒化チタンは硬度が高く摩擦係数が低いため、汚れやキズがつきにくく処理が驚くほど長持ちします。意図的に剥がそうとしなければ、おそらく10年以上経っても剥げ落ちないのではないでしょうか。

チタンはとても良い素材ですから、その欠点を補完したかったのです。
当ラボの高真空下・高アルゴン雰囲気下で鋳造したチタンは弾性に富み、コンタミネーションが少なく品質が高いのが特徴ですから、さらに良いものにという強い思いがありました。
ですから、窒化処理ができるようになった事は素直に嬉しいですね。

とりあえず純チタン鋳造体についてはほぼ完全な窒化処理ができるようになったので、今度はチタン合金に試そうと思っています。




EVANSPRO Dental Laboratory
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Welcome! Mr.Enrico Steger その2

2011-04-03 23:31:41 | ジルコニア
さて、講演会です。

Steger氏、若い頃はカーリーヘアの美青年という感じで、Art Garfunkelに似ていたように記憶しています。28年という年月の長さをあらためて実感。

ひとたび語りだすと、さすがはイタリアンだなぁ、と思いました。
とにかく明るく無邪気なお人柄です。
技工への情熱が伝わってくるような内容で、プロジェクターで映し出される作品の映像には圧倒されました。
作者の才能や情熱、そして解剖学とロジックが一体となって初めて技工物は芸術へと昇華するのだとあらためて考えさせられました。

講演会は二部構成でSteger氏の講演の後、お弟子さんのWilli Tratter氏によるCAD/CAMの実演講習が行われましたが、Steger氏は客席(私の隣の席)から厳しく鋭い視線を注ぎ、時にはTratter氏に注文をつけたりしていたのが印象的です。
Zirkonzahn社のCAD/CAMは日本でこそマイナーですが、世界的にはかなりなシェアを持っているとのことで、その充実振りは大したものです。素晴らしいアイデアマンでもあるSteger氏のノウハウと歯牙形態が取り入れられており、対応はジルコニアとレジン。



Zirkonzahn社のCAD/CAMによるフルジルコニア・ブリッジ。
Steger氏の歯牙形態が反映されています。
陶材の築成はごく僅かで、かなりな審美性を獲得していました。こういう作品を実際に手にとってみると、やはり刺激になります。
でも自分はあくまで和魂洋才の精神でやるぞ、とも思いますが。



サンプルの中に茶色のブリッジを見つけ、休憩時間にSteger氏に質問したところ、
「木から削りだしたんだよ、日本の木を。」との事。
触れてみると確かに木製、これがまたかなり高精度なんですよ。
「さすがは希代の天才Enrico Steger、予想もつかない事をやるなぁ。」と変に感心してしまいました。
そして、私が京都から来たこと、氏の発表に影響を受けたことなどを話したところ「私が始めて来日したとき、京都で講演したんだよ。」と。「1983年ですか?」と聞き返すと「そう、その通り。」と感慨深げな表情をされたのが印象的でした。



Steger氏のサインと名刺。あのボロボロの「アナトミカル臼歯咬合面形成法」に揮毫して頂きました。
ハタチの頃にかえったようで、嬉しかったなぁ。



左は日本人で初めてドイツ・技工マイスター資格を取得され、数々の執筆活動をされている大畠一成氏。今回は通訳の労をとっておられました(マイクがお顔にかかってしまい申し訳ありません。)。
そしてSteger氏、私。

この講習会が開かれたのが3月10日、翌11日に東日本大震災が起こり、Steger氏らも交通機関の乱れから予定より一晩遅れで次の訪問地の韓国へ飛び立ったとのことでした。
またいつか、日本の状況が一段落したら来日してほしいと思います。


Grazie!
Spero di vedere e affrontare la giornata.



EVANSPRO Dental Laboratory








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