25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

悪女について

2015年06月22日 | 文学 思想
 再読の本です。
 悪女について」という突然に窓から飛び降りて死んでしまった女性について書かれた小説です。他殺なのか、自殺なのかの真相はわかりません。ただ週刊誌では、「悪女、詐欺師」となじり、作者である有吉佐和子はインタビュー作者を設定して彼女(富野小路公子)と関係のあった人物27人に聞いてまわるという小説の構成になっています。
 彼女は美しいものが大好きなのです。彼女ほど宝石が似合う女性はいないというほどです。夜学で勉強し、簿記の1級までとってしまい、税理士もできるほどです。これは計算なのか、無意識なのかわかりませんが、言い寄ってくる男性に拒否ができません。 彼女は不動産業だけでなく、宝石業もやり、レストランもやりと幅広く、事業を広げていきます。大富豪になってしまうのですが、お金持ちの女性実業家が集まる「トウキョウレディーズクラブ」にも入ります。お金持ち層とマージャンをしても、わざと負けて、お金を惜しみもなく使います。お金持ち女性のもっている指輪やペンダントなどを新しいデザインにして作り直してあげるのも安い値段で引き受けます。
 事業拡張のひとつですが、自社ビルのワンフロアーを使って、「エクササイズ、サウナ、マッサージ、休憩室、自由な飲食」ができるサロンも開きます。入会金は当時昭和45年頃)で200万円です。入会金の7割は退会すると戻ってきます。体育大学をでたトレーナーはみなハンサム(イケメン)で、受付では蝶ネクタイをし、トレーナーはみな若い男性です。そのトレーナーの優しい指示にしたがってメニューをこなしていきます。すでにこんなのが昭和35年にあったのですね。自由交際は厳禁です。

 帝国ホテルにもこのようなフロアーが新館にありますが、残念ながら、エクササイズと連動していません。プールとサウナ、お風呂は連動しています。エステサロンは別の階です。ジムも別の階です。
 富小路公子(本名は富本希美子といいます)の商売のしかたを見ているとすごいものだと思います。女性であることをフルに使っています。宝石商の社長と付き合いながら若い大卒の新入社員である男性とも交際します。子供が二人生まれますが、若い彼ののほうの戸籍にまで入ってしまい、子供ができると認知を求め、慰謝料5000万円を手にすることになります。宝石商の社長には、「あなたの子供よ。一切迷惑はかけず、自分で育てますから」と言って、実際にそうします。

 貴族層が楽しんでいたことをやがて成金の富裕層が真似る、というのは歴史の法則のようなものです。入会金200万円で1回ごとでは3万円。
 こういうくつろぎ方はまさに今、クタクタになって働いている女性たちの中には憧れる人もいることでしょう。客は女王様になってような気分になり、家に帰っても生き生きとしているように感じます。
 この本でおもしろい勉強をしました。
 成り上がり方がしっかりわかるといいますか、清く、正しく、美しく生きることが理想のこの富小路公子の本当の姿が徐々にあきらかになっていきます。そして彼女は「悪女だったか、そうではなかったか」という判断は読者に任されることになります。
 有吉佐和子の才能がいかんなく発揮されております。テレビでは影万里江がしましたが、まさにぴったりで、ものすごい演技でしたが、43歳でなくなったようです。その後沢尻エリカもしましたが、演技がもうひとつでした。目が大きすぎるように思いました。(写真は影万理江です)

ウィスキーとホロホロ鳥

2015年06月22日 | 旅行

 以前沖縄の那覇に行ったとき、「ちょっとお見せしたいものがあるんですよ」とタクシーの運転手さんがちょっと寄り道をして、「どうです。見事な花でしょう」と言った。すると、黄色い葡萄のような形をした花が満開に垂れている。「ここは昔のオキヤなんですけどね。20分で5000円です。それで、この花の本当の名前はわからないんですけどね、白粉花とか一日花とか、言うらしいんですよ。一日で落ちてしまう、儚なげな花ですよね」 と運転手さんは解説してくれる。すでに夜の12時を過ぎている。こんな花を初めてみた。

 ホテルの部屋でその名前で検索をしてみた。どれも違う。次の日、別のタクシーの運転手さんにもしかしたら知っているかもしれないと思って聞いてみた。「ああ、安里(あさと)のね、あの道ね、ああ、あれは「ゴールデンシャワーっていうんですよ。「下がり花」ともいいますがね。「それでたった一日で落ちてしまうんですか」と僕はそのことが知りたい。つまり儚げであるかどうかだ。「そうなんですよ。でも次の日また満開になりますよ。毎日咲いては落ちて、新しいのがでてくるんですよ」
 「ありゃ、それだったら熱帯のブーゲンビリアみたいなもんじゃないですか」と僕はがっかりしたように言うと、「マレーシアからきた花だと聞いてますよ」と答えてくれた。よく知っているものだ。タクシーの運転手さんというものは。

その日は奇妙な日であった。その前の日、小説を読んでいたら「ホロホロ鳥の料理」が出てきた。へえ、そんな鳥の料理があるのか、と思ったのだった。キジや野鳥などは食べたことがある。ホロホロ鳥というのは食べたことがない。有吉佐和子の小説には、しっかりと野生の味がすると書いてあった。

 あるバーに行ったら、(このバーは行く価値有り。ウイスキーが揃えっている。料理もイタリアンがおいしい 安里駅前 GRATO 090-4000-2914)。デパートでも手に入らないのがある。ボウモアの2001年プレミアムまであったし、終売になったTOP BEAT もあった。
 山崎のようなスモーキー臭さのないウイスキーから飲み始めて、だんだんとスモーキーなものへいくようにした。仕入れ原価の1,3倍しか料金はとらないのだそうである。カウンター内の男性は調理番。この人はイタリアに修業の旅になんども行っている。ウィスキーのソムリエはもうひとりの男性で、彼はスコットランドで修業している。詳しい。とにかく詳しい。
 いろいろとウイスキーの話をしていたら、ホロホロ鳥の話がでて、今日はその鳥肉があるのだそうである。すっかり妙なものを感じて、注文した。ウイスキーにホロホロ鳥、なんだかすっかり良い気分になってしまって、タクシーに乗ったら、「下がり花」である。

 旅をするとこういうことにも出会う。