和歌山県湯浅町は、安土桃山時代より醤油・味噌の醸造で栄えた町です。
2006年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
2007年にも訪れたのですが、このときはひどい大雨で何も描くことが
できませんでしたが、今年再訪してようやく念願が叶いました。
レンタル自転車で走り回って描きましたが、お醤油のいい香りが
町全体に立ち込めていました。
湯浅町旧市街地は、まだあまり観光地化されていません。
また、重伝建に指定されると、各家の修理に補助金が出るために
修景される所が多いのですが、ここではそれほど進んでおらず、
古い状態の民家が目立ちます。
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2009.08.21
本瓦(湯浅町)
本瓦=丸瓦と平瓦を交互に組み合わせてできており、主に寺院で
見られます。本瓦は手間がかかり重さもあるため、改装時には
一般的な桟瓦に変えてしまう家も多く、残っているところは旧家のみです。
湯浅町では、屋根瓦に本瓦を使われる家が目立ちます。
ここのお宅(長屋)は、江戸時代からそのまま(何もさわっていない)
ではないかと思うほどの雰囲気でした。
桟瓦(奈良県奈良町)
本瓦の丸瓦と平瓦が一体となったもので、江戸時代に滋賀県で
開発されました。桟瓦は安価であるため、今まで板葺きが主流で
あったのが、その後急速に屋根瓦が普及する要因にもなりました。
一文字瓦(京都市中京区)
京都の町家では、桟瓦のなかでも京都特有の形式があります。
平入り屋根の軒先の瓦端を、すぱっと切り落としたように真一文字に
なっているのが特徴で、すっきりとした印象を与えます。
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切妻平入りの町家が並んでいる所を描きました。
庇の裏まで漆喰で塗り込められた塗屋造りが特徴的です。
この地区は車が通るには道幅が狭いため、建物との接触防止
にポールが立てられていますが、環境を考慮してか背の低い
ポールになっていました。
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2008.04.29
【寺内町の塗屋造の例】
垂木が漆喰で塗り固められているため、太陽光が庇の裏
まで回り込みやすく、明るい印象を受けます。
内部がどうなっているかは、
倉敷美観地区の町並み
を参考に。
【塗屋造ではない例】
京都松原の輪違屋(置屋)
富田林の寺内町は、中世末期に南河内石川の畔に寺院の境内、即ち、
寺内町として誕生した宗教自治都市です。
江戸時代には物資の集積地として商業が発展し、在郷町として栄えました。
国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。
寺内町は他の町と比べても区割りが大きく、京都などは間口の狭い切妻の
町家が並んでいるのに対し、入母屋造りの豪華で大規模な町家が連なって
おり、一帯が邸宅地のような感じを受けました。
18世紀後半に建てられた橋本家です。
背後に見える板塀や樹木も同じ敷地内らしく、寺内町で見られる典型的な
入母屋造りの非常に大きな町家です。かつては酒造業を生業としていたそうです。
この地区に住む方に話しを聞きましたが、若い人にとっては住みにくく、
息子達は出て行ってしまい、年を経て引退するころにまた戻ってくるそうです。
こんな大きな家に住むのは凄くうらやましい気もしますが、実際には
色々と大変なのでしょう。
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2008.04.29
橋本家の装飾 【持ち送り】
水切りのための庇を支えるために取り付けられていますが、
デザイン性の高い漆喰で塗り固められた持ち送り(左上)と、
標準的な木製の持ち送り(下部)
寺内町ではよく見かけられます。
明治時代初期から昭和初期にかけて花街として大変栄えた町で、
最盛期には置屋が数十軒、芸姑が200人以上いたそうです。
現在も僅かながらこの地域には置屋さん、芸姑さんが残っており、
古くから続く優雅な文化の継承の担い手となっています。
正面の古風な建物は現在はレストランになっていますが、かつては「萬玉楼」
という芸者置屋でした。主屋が三棟並んで建っていますが、奥から、大正時代の
数寄屋風建築、江戸時代中期の町家(看板のある建屋)、明治初期の町家
で構成され、それぞれの時代の華やかな文化の名残が残っています。
とても狭い道路に面した建物なので、写真では全景がフレームに収まらず、
絵画でこそ全ての建物が収まる広角的な表現になっていると思います。
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2008.10.15
近鉄奈良駅南部に広がる「ならまち」にある町家です。
元興寺の旧境内を中心とした一帯を「ならまち」と呼んでおり、
一帯は江戸時代末期から明治時代の町家の面影が残って
います。
この町家は間口が広く、一部高塀造りで、塀越しに槙の木を
覗かせています。現在、奈良女子大学のセミナーハウスとして、
大学の講義などに使用されています。
最近ファサード(外観)を修景しており、ばったり床机、奈良格子
を取り付け、瓦を葺き直し、壁の白漆喰を塗り直しているため、
全くの新築に見えるほど綺麗に仕上がっています。
※奈良格子・・・奈良によく見られる太い格子。
(ここでは高塀と玄関の間の太い格子のことです)
この町家は、毎年秋に開催される正倉院展の期間中に、
内部が一般公開されています。
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2008.10.13
[町家内部写真]
内部の吹き抜け空間と、松の梁が圧巻です。
改装中で瓦を下ろしており、とても明るくなっています。
(普段は薄暗いものです。)
上の写真のちょうど下側にある台所です。
この町家は通り土間が広く、おくどさんも残っています。