先日のリスクマネジメント講習を受けて〜
それぞれの立場で色々と思うところがあったかと思います。
自分の場合、カヤックを提供する側なので、やはり何と言っても「より安全なカヤック」を造る事、これに尽きます。
リスクマネジメントを考える際に、
先ず初めにカヤック自体は安全に乗れる状態であるのか?が大事です。
今回は、そんな「カヤックを造る立場から考えるリスクマネジメント」と題して、カヤックあれこれを綴ってみたいと思います。
自分は約2年前の2015年にベイロマンス カヤックスというブランドを立ち上げてカヤックの市場投入を始めました。
自分が造るカヤックは俗に言う「フィッシングカヤック」です。
自身は元々釣りが趣味だったという事もあって、個人的に趣味としてカヤックを作り始めたのがキッカケで…もう10年以上も前の事になります…
歳くったなぁ…
その昔、
就職先でFRP成形の技術(ボート、ヨット)を学びながら、自分が乗りたいカヤックを絵に描いて、ヒマをみては模型を作ったりしていました。
当時、フィッシングカヤックなるものは数が少なく、カヤックと言えばシーカヤック(ツーリングカヤック)。
細長く幅も狭い形状をしていて、初心者が気軽に乗れるモノでは無さそうだし、
ましては釣りなんて出来っこ無いと思いました。
スキルがある方はシーカヤックでも普通に魚釣りをしているらしいです!スゴイ!
なので、
「作るしかない」ってなった訳ですけど、最初に思いついたのは自転車みたいに足でペダルを漕ぐ「足漕ぎ」タイプのカヤック。
釣りをしたいから手を使うパドリングはしたくないし、疲れそうだし…
足で漕いで進む事が出来たら楽しいだろうなぁ〜
そんな安直な発想で、
自前のマウンテンバイクを分解して、知り合いの機械加工屋さんに頼んでチェーン駆動からステンレスのシャフトを取り付けてもらいながら、その間に自分はFRPで船体を作りこみ、ようやく船体も完成していよいよ機械の組み込み!
そしたら、
ギヤチェンジ式の手作り足漕ぎカヤック完成〜!
となるハズでしたが…
当時の就職先が突然の倒産、廃業。
完成間近だった足漕ぎカヤックは置き場を無くして、その後どうなったのか分かりません…
自分は当然ながらカヤック作ってる場合じゃなくなり、生活を立て直す事に必死。
それからはリアル ローリングストーン。。。
正に「転がる石」の如く、職を転々として、一向に生活が改善される気配もなく…
そんな日々を過ごしながらも「いつかは自分でカヤックを完成させたい!」という想いだけは持ち続けて、FRP成形の技術を学んでいた頃のようにアイデアが浮かんでは絵を描いてみたり、模型を作ったりしていました。
この間、実に10年以上…
いつ実現可能になるのか?わからないのに、
よくまぁ飽きずに続けたと思います。
けれど、それ程までに自分はカヤックが好きで船が好きなんですネ♪
あ…
話しを戻しますm(_ _)m
カヤックも船も、水に浮かびさえすれば良いだけの単純な乗り物。
そんな見方もありますが、
実は物すごーく奥が深い乗り物なんです。
特にカヤックは人力だけを頼りに海へ漕ぎだす乗り物。
軽さが求められ、それと相反する強度も同時に求められます。
そこに更に航行速度を高めることも求めると、難易度が格段にアップします。
ひょっとしたら「そんなの求めてないよ」と言う方がいるかもしれませんネ。。。
可能な限り性能を高めていく作業は、ひょっとしたら造り手の自己満足の世界なのかもしれません。
けれど「安全なカヤックとは?」を考えると、どうしても毎回毎回スピード(航行速度)に行きつき、
作れば作るほど壁が高くなっていき、
果たしてどこで折り合いをつけるべきなのか…
市販を開始したくらいから、
これが一番難しい事だと最近つくづく感じます…
すみません。。。
またちょっと話が逸れてしまいましたm(_ _)m
本題に戻します。
以前記事にした「よいカヤックとは?」にも書きましたが、リスクを減らす為には先ず用途(使用目的)にマッチしたカヤックを使う事です。
これについては他にもネットなどで沢山情報がありますのでここでは省略します。
では何故?使い分ける必要があるのか?について
それは使用する場所の自然環境がそれぞれ違うからです。
一見どれも同じように見えるカヤックですが、使う場所の自然環境に見合ったデザインや形になっており、もっともリスクが少なくなるように考えて作られいます。
なので、この選択を間違ってしまうと何らかのリスクを伴う事になってしまいます。
では、もっと話題を絞って。
カヤックフィッシングにおいてはどういう選択があるのか?
先ずは単純に「魚釣り」について考えてみます。
魚が居るのは海だけでなく、川や池、湖。
川の場合は恐らくわざわざカヤックに乗る必要は無いかと思いますので除外します。
比較的小さな池の場合も同じく除外して、ここからは海と湖で話を進めていきます。
湖の場合、
もっともポピュラーな釣りはバスフィッシング。
バスフィッシングは基本的に座って釣るスタイルではなく、立ってルアーをキャストする場合がほとんど。
カヤックの上でも立ってキャスト出来たら最高ですよネ〜♪
なので、カヤック自体の形状も一次安定性を重視した幅の広いタイプが作られます。
最近ではシートを高く設置したタイプもあり、座っててもキャストしやすいものがあります。
そんなの最高じゃん!
と喜ぶ事でしょう。
しかし、幅の広いカヤックは高い安定性がある反面、漕ぐ事に関してはパドリングがしにくかったり、速度を上げづらい、横風に流されやすいなどの幾つかのデメリットがあります。
これはカヤックや船に特有の「相反する性能」で、航行性能と安定性は互いに反比例する関係にあり、良し悪しと言う事ではありません。
湖などの比較的閉塞した環境の場合、水面移動を重視する必要が無く、航行性能よりも使用目的に合った安定性に特化した形のカヤックが作られています。
では海の場合はどうか。
ここも先ずは「魚釣り」から考えてみます。
釣りたい魚はどこに生息している?
浅場?深い所? 根魚?回遊魚?
自分は絶対この魚しか釣らない!って言い切れる人は限りなく少ないと思いますが…
「対象魚は浅場にいて、基本的に遠出はしない」
こんな方にオススメするカヤックはどんなタイプでしょう?
「それなら湖で使ってるのと同じでいいんじゃない?」
そう思った方。
自分が思うにその判断は間違いかもしれません。
海と湖の環境の違いを考えてみたら理解できる事ですが、海は閉塞されておらず、潮の満ち引きがあり、海流や波があります。
また、
風の影響も湖よりもダイレクトに受ける場所です。
もしも、湖用に作られたカヤックを海で使用したなら何が起こるでしょう?
一見すると安定感があり、ひっくり返りそうもなくて安心、安全に思えますが、これが落とし穴です。
海は湖よりも風や潮流などの影響を確実に受けるので、極端に幅の広いカヤックや座面位置が高いカヤックはダイレクトにその影響を受けてしまい、結果的に水面移動(パドリング)が増えてしまいます。
それでも体力やパドリングスキルに自信がある方なら、なんとかリカバリーするかもしれませんけど…f^_^;
海用に水面移動も考慮して作られたカヤックを選択する事である程度のリスクは回避出来ます。
海用に作られたカヤックの形状的な特徴は、比較的水面上の出っ張りが少なく風の影響を受けにくくしてあり、航行性能(航行速度)が発揮出来るように比較的全長が長く、幅も比較的狭くなっています。
海でのカヤックフィッシングにおいては座って釣るスタイルがほとんどなので最低限の安定性も確保しつつ、航行性能も高めた理想的な形と言えるでしょう。
近年更なる盛り上がりを見せている足漕ぎカヤック。
これはどうなの? と思った方。
自分が思うに現在市販されている足漕ぎカヤックはカヤックフィッシングの真の理想形と言えます。
故に自分も足漕ぎカヤックを作りたいと考え続けて来ました。
足漕ぎカヤックに実際に乗った事がある方は分かると思いますが、その推進力は侮れず、波風をモロともせず突き進みます。
万が一、海況が突然悪化した場合でも任意で移動が可能になるメリットは計り知れません。
もちろん、手が自由に使える事が釣りに最適なのは言うまでもありません。
ですが。。。
リスクマネジメントとして、万が一足漕ぎの機械が故障したら⁈ を想定しなければなりません。
足漕ぎだから〜と調子に乗って沖合まで行ったら、まさかの機械故障…
パドリングで帰る事を余儀なくされてしまいますが、足漕ぎカヤックは文字通り「足漕ぎの為のカヤック」なので、その殆どはパドリングに向いてるとは言い難いカヤックです。
普段からリスクを想定して練習している方ならば、何とかなるかもしれませんが、そうでない場合は恐らく自力でパドリングして帰還する事は難しいでしょう。
海保等へ直ぐさま救助要請し、体力消耗を抑えつつ救助を待つのが最善策かと思います。
そうならない為にどうしたらよいか。
機械は必ずいつかは壊れると思います。
日頃のメンテナンスは当たり前ですが、部品の消耗具合などの確認もすべきでしょう。
パドリングでも性能を発揮する足漕ぎカヤック。
そんなカヤックが出来たら理想ですけど…
また…
また話が逸れてしまいましたm(_ _)m
とにかく、想定しえる内容には何らかの対策を講じる必要があると思います。
脈絡もなく長々と綴ってしまいましたので、そろそろ話をまとめます。
自分が造っているカヤックは、基本的に海用です。
構想の段階から海で使用する事を想定し、考えられる限りの状況を加味した形に作り上げていきます。
試作段階では実際に何度も海に浮かべ、通常は出ないであろう海況でも海に出て、身をもって性能的な限界を探る検証を行いますが、そんな時は正直言って身の危険を感じる経験をします。
仮にカヤックは大丈夫でも時々自分自身が先に限界を感じる事もしばしばです。
しかし、これはカヤックを提供する側の最低限の責任であると自分は思いますので、限界点(これ以上は遭難しかねない)ギリギリまでやります。
とい言いつつ、
自分自身のスキルでは限界点に達しない時もあります。
一昨年にリリースした15.6ftのフィロソファー156は、ベテランカヤッカーの三好氏に屋久島の過酷な環境下で性能テストを行ってもらい、不具合を一つ一つ潰しながら完成させました。
なので、
三好氏が居なかったらフィロソファー156は完成しなかったと言えます。
昨年リリースした10.5ftのコリン・アスリートはサイズこそ違えど基本構成はフィロソファー156と同じで、高強度のパッケージングを持ちながら短いレングスを感じさせない航行性能と高い一次安定性を持たせる事が出来ました。
コリン・アスリートに関しては、
並外れた出艇回数を誇る関西のオーナー丸尾氏にモニター兼テスターとして活動して頂き、随時報告を受けています。
これらの活動は、実際にカヤックを使用しながらいち早く不具合を見つける為であり、より使い勝手を良くする為でもあり、次期モデルをどういった物にするかにも大きく関わってきます。
この様な造り込みは自分の所だけでなく、他のメーカーも同じだと思います。
しかし、どこまでやっても最善を尽くしただけで、やはり自然を相手にしている以上完璧は無いと思います。
フィロソファーで得た経験を次のコリン・アスリートに落とし込み、コリン・アスリートで得た経験を次のカヤックに、そしてまたその次へと、経験を蓄積させながら常に最善を尽くす努力を延々と続ける事。
それが自分がカヤックを造る上でのリスクマネジメントだと思います。
という事で。
相変わらず文章が下手で所々迷走してしまいました。。。
何と無く理解してもらえたでしょうか…
では失礼します