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名画館2 「三国志 Secret of Three Kingdoms」

2023-05-06 20:25:04 | 映画
●最高品質の中国TVドラマ:2018年公開 中国。1話〜54話。中国タイトル「三国機密」



筆者は映画オタクと長年自負してきたが、韓国ドラマも中国ドラマも殆ど見ない食わず嫌いだった。大したことはないだろうと偏見があっったからだ。ブルース・リー、ジェット・リー、ジャッキー・チェンの出演する映画は観るといった程度だ。

どれちょっと見てみようかと期待せず観てみた。なんと!一気に54話まで観てしまった。しっかりとした脚本、計算されたセリフ、豪華なセット、美男美女を揃えたキャスト、スリリングな展開。もし米中の仲が良かったならば、エミー賞、ゴールデン・グローブ賞の作品賞は確実に受賞していたのではないかと思うほど素晴らしい出来だ。

54話まで観終わった後、レンタル店に飛んで行き、中国TVドラマの他の作品を片っ端から借りてきて観た。「項羽と劉邦」、「三国志」、「曹操」、「孫子兵法」。
期待外れだった。品質が全く違うのだ。


・ストーリーと背景

後漢末期、12代皇帝の霊帝には何皇后(かこうごう)との間に生まれた劉辯(りゅうべん:13代皇帝、董卓により廃位され弘農王となる)、側室の王栄との間に生まれた劉協(14代皇帝の献帝。劉辯の異母弟。後に曹操の三男、曹丕に帝位を禅譲)がいた。劉辯より利発な劉協は、何皇后の嫉妬を恐れて生まれてすぐに父・霊帝の元から離されて育てられた。

ここからが良く練られたドラマの設定。跡継ぎのいない献帝が病に倒れ崩御。漢王朝の庇護者として君臨していた曹操に知れると、すぐさま曹操が自ら皇帝と僭称し取って代ることは目に見えていた。
ところが側室の王栄は双子を産んでいて、献帝・劉協(兄)とそっくりな劉平(弟)がいた。その弟の劉平(主人公:マー・ティエンユー)は、幼いころから司馬家に預けられて、司馬懿(仲達:後に三国を統一して西晋の礎を築いた:エルビス・ハン)の可愛い弟として育てられていた。漢王朝存続を望む献帝の皇后、伏寿(レジーナ・ワン。凄い美人)らが画策し、劉平を密かに許都の朝廷内に引き入れ、献帝の身代わりとして漢王朝再興をするよう告げられる。

許都は曹操が支配しており、曹操の腹心である県令(≒県知事)の満寵(トゥ・ナン)、や尚書令(国事の諸命令書を発する権限を司る長官)で智謀の軍師である荀彧(じゅんいく:ジーン・オウ)らが目を光らせていた。

果たして在野で育ち皇帝の生活を知らない身代わりの劉平は、満寵や荀彧らの厳しい監視の目を欺くことができるのか?ドラマが進むにつれ、さらに油断のならない機略縦横の祭酒(≒参謀)の郭嘉(サニー・ワン)、そしてラスボス的ライバルの曹操(ツェー・クワンホウ)らとの最終対立へと展開していく。

そして結末のドンデン返しには、マルチバース的大団円が待っている。

献帝が董卓らの奸雄らに政治利用され各地を漂泊して後、ようやく曹操庇護下の許都へ移り住んだAC196年頃から、曹操の三男・曹丕(後の魏の文帝:タン・ジェンツー)が皇帝を禅譲され、後漢が滅亡したAC220年頃までの間の約24年間の出来事を史書に沿う形で、魏内の視点から描いている。
したがって、三国志演義で描かれている劉備、関羽、張飛、趙雲などは出てこない。戦況の会話として名前が挙がる程度だ。


・見どころ:とにかく美男美女だらけ。劉平、司馬懿、郭嘉のロマンスは純愛路線。


身代わり皇帝・劉平と兄嫁となる皇后・伏寿との互いに一歩踏み切れない愛。劉平を害し利用しようとするものは許さないと策謀を図る司馬懿と弘農王の位牌を祀り劉平を支えて漢王朝再興に暗躍する唐映(故弘農王の妻、つまり前皇后:ドン・ジエ)との確執から始まった愛。謎の女・任紅昌(じんこうしょう:ドン・シュアン)にベタ惚れの鬼謀の軍師・郭嘉との愛。

この3組の男女のロマンスは女性ファンが喜ぶような純愛で貫かれている。切なく号泣したいロマンス好きの女性には必見である。



・ビジョビジョ場面の解説:鄴(ぎょう:袁紹の支配下)にある袁紹の息子・袁煕(えんき)の屋敷庭にて。第26話

漢王朝再興に輔弼してくれる忠臣にふさわしいのは誰か?河南の曹操か河北の袁紹か?それを見極めるのには実際に河北の鄴に行ってみると言い出した劉平。一人では行かせない、私も同行すると言い張る伏寿。皇帝がお忍びで曹操にも言わずに単独行などありえない話。また曹丕も伏寿への片思いもあり鄴に身分を隠してきていた。曹丕と後に彼の妻となる甄宓(しんふく:ワン・シャオミン)との出会い、貂蝉による呂姫(呂布の娘)救出譚などの挿入話のためだろうが、袁紹に宿敵曹操の息子・曹丕と正体がばれたらただでは済まない。史実にもない奇想天外な仮想の設定だが、ドラマは膨らみ、視聴者には年代を意識させることになる。

呂姫は手枷をはめられて、袁紹の息子・袁煕の夫人である甄宓の侍女となっている。呂布が敵対する曹操に対抗するために袁紹からの支援の見返りとして、彼の娘を人質に差し出そうとした話は有名である。また貂蝉は架空の人物で、呂布と貂蝉との間には子供はいなかったとされている。
この場面では、呂姫が「どれだけ待っていたか!遅い!」と貂蝉に格闘技で怒りをぶつける場面が出てくる。
まるで母娘を印象付ける場面になる。

呂布が曹操に捕縛され縊り殺された(絞殺された)のが199年。曹操と袁紹との雌雄を決する官渡の戦い(200年)が第30話に出てくるので、この場面は、呂姫がまだ人質として有効であった呂布存命中の197年から198年前後ということになる。艱難辛苦の流浪の果てに献帝が許都に移り住んだ196年では余裕などなかったはずだ。

ここでの見どころの1つは、後の文帝、曹丕の妻となる甄宓(しんふく)の破天荒な行動だ。意に添わぬ袁紹の息子・袁煕との不満鬱積の結婚への抵抗からか、曹丕をからかい半分に火遊びに誘うというハチャメチなヤンキー夫人ぶり。その性格のためか、曹丕と甄宓のロマンスは残念ながら家庭崩壊への道をたどる。
もうひとつは、貂蝉の舞が披露される。吉川英治・三国志では王允が養女として呂布・董卓に紹介し、その甘美な舞と美貌で二人を虜にしたとされる。



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