スペースノイズ

α宇宙域「地球」からの素粒子ストリングス変調波ノイズを受信!彼らの歴史、科学、娯楽、秘密など全てが含まれていた。

「第2部  ロシア動乱(スムータ)再び。 CIAによるプーチン失脚作戦」  プーチンの狙い プリゴジンの狙い ポスト・プーチン

2023-06-12 22:13:30 | 軍事
小説「「第1部  ロシア動乱(スムータ)再び。 CIAによるプーチン失脚作戦」  越境攻撃の狙い」からの続き。

何度も言うが、起きるのは、「革命」ではなく「動乱」である。

●動乱の兆し

米本土ラングレーからオンラインで会議に参加しているSAC(特別行動センター)のセンター長、巨漢のマシュー・ヘンリーが動乱(スムータ)の兆しについて説明を始めた。


ロシア軍内に広がる厭戦・反乱・不満

「なぜリヴォリャーツィヤ(革命)ではなくスムータ(動乱)なのか?その理由については後で説明します。
ロシア軍が統率・規律を失いつつあるという情報が次々と入ってきています。

・戦闘拒否:ルハンシク州、動員兵約600人が戦闘拒否。ロシアに送還。
・不満爆発、補給兵站の破綻:私財で食糧調達、弾薬までも自給自足を要求される。敵から奪い取れ!
・給料未払いで反乱:2022年11月。チェヴァシ共和国の動員兵100人ほどが反乱。
・給料未払いで反乱をしたと理由をビデオ公開:プーチンが約束した月給約40万円払われなていないと。
・列車移動中に酔った下士官が上官を殴り殺す:ロシア・マグニトゴルスク軍事裁判所の発表。
・動員令に反発して入隊事務所や行政機関への放火:2022年9月イルクーツク州で18件。徴兵委員が撃たれる。
・志願兵訓練所で発砲、11人死亡:2022年10月ベルゴロド露軍演習所で発生。発砲したCIS志願兵は射殺。
・ワグネル内で裏切者の傭兵をハンマーで頭部を殴打し撲殺:2022年11月。撲殺されたのは55才の禁固24年の服役囚のエフゲニー・ヌージン氏。9月にウクライナに投降後、反露を表明。ワグネルは私刑ではなく公正な行為と強弁。
・ロシア軍内の反乱は日常茶飯事
・公然とプーチンと軍上層部を非難:。ベルゴロドに移送されたまま、約500人の兵が命令も補給もなく非人間的な状況に置かれたと動画を公開。

(The.Daily.Digest、モーニングショー2022.9.29、毎日新聞2022.11.14ほか)


(The.Daily.Digest、)



プーチン離れ加速 辞任を求める世論、距離をとるCIS(独立国家共同体)、求心力低下、あせり

・占領したウクライナ4州の併合投票、カザフスタンも住民投票を認めないと表明:2022.9.26
・モスクワ、サンクトペテルブルクの一部区議からプーチン解任の要望書を公表:2022.9.13
・カザフスタン、EUへのエネルギー供給の意向。中国へ接近:2022.10
・モルドバ、CIS首脳会議を欠席。親欧米路線へ:2022.10
・キルギス、プーチン誕生日に合わせた旧ソ連諸国首脳の非公式会議を欠席。露への不信感:2022.10
・「ロシア兵の母」が「ウクライナから撤退を」と議会への書簡を公表:2022.11.29
・CIS首脳会議でプーチンから8か国首脳に金の指輪を贈呈。しかし指輪をハメたのはルカシェンコだけ。2022.12.26
・ロシア、異例の年越し。ウクライナ侵攻批判の大物歌手欠席、花火打ち上げ中止、アイスホッケー中止:2022.12.31
・プーチンに国際司法裁判所から逮捕状が出された。ウクライナの子どもをロシアへ強制移送。2023.3.17
・ロシア新任大使へのプーチンの挨拶、拍手無し:2023.4.10 クレムリン。
・ロシア高官の辞職を禁止:2023.5.18 知事、軍人、FSB、等々。
・イコン「聖三位一体」画を大聖堂へ移動し、戦争勝利を神頼み:2023.6.6。

(ロシア新任大使へのプーチンの挨拶、拍手無し:NHKニュースLive2023.4.10)


ロシア国内の遠心力増す。誰もが責任逃れを画策

「これらの報告された事象はほんの一部です。どれも軍の遠心力事象、すなわち軍の崩壊の兆しです。」SACセンター長、マシューが説明を続けた。
「2022年9月18日、ウズベキスタンを訪問したプーチンに、記者団から「ハルキウ州での露軍大敗・撤退」について訊かれて、「作戦の進め方は軍参謀本部が決めている」と答え、自身の責任ではなく軍に責任があると発言した」
「汚い男だな」ピクスビー大使がつぶやいた。
「勝てばプーチンの手柄、負ければショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長の責任。ショイグもゲラシモフも面白くないしやる気がなくなる。こういう責任逃れが公然と知られると軍上層部も部下の責任にすることになる。その部下もさらに下の責任にする。そうなると前線の兵士の弾薬不足や補給品不足、給料不払いも上が真剣に責任を果たそうとしないと気づき反乱や脱走に走ることになる」

「プーチンのために死にたくないと動員されるのを嫌ってロシア国外へ脱出する。プーチンと一緒に戦争責任を負いたくないと密かに辞任・辞職を図るロシアの高級官僚や軍関係者、FSBなどの治安関係者も国外に出たがっている。しかしその空気を察知したプーチンが2023.5中頃、この戦争が終わるまで公務員の辞職を禁止した。

CIS(独立国家共同体)もベラルーシ以外の国は、占領したウクライナのロシア併合を認めていない。力による現状変更を認めれば、次は自分たちがウクライナと同じ目にあうからと自覚しているからです。

残るは命令どうりに動く兵士や高い給料を信じている兵士、現状追認主義の国民が大半となるでしょう」


プーチンの狙い

「プーチンはこの先どう出るのか?CIAの分析は?」ピクスビー大使が訊いた。
「彼はもう手詰まりです。彼の最大の関心事は来年3月の大統領選に勝つことだけです。そのため選挙に逆風となる再動員令の発動もできないでしょう」マシューが答えた。
「プーチンに勝てる見込みはあるのか?」
「中国やトルコ、ローマ法王などからの「現状停戦・和平」を画策しましたが、ロシアの領土獲得で停戦などもっての外とウクライナ側が完全拒否したため潰えました。
そして今、ウクライナの反転攻勢が始まったため、ウクライナが占領地を奪還すれば、何のための戦争だったのか?
多くの犠牲を出した大義とは?とプーチンの威信は失墜し責任追及が始まるでしょう。彼はまたもやあの手この手で軍に責任転嫁を謀るでしょうが、威信を失墜したプーチンの言い訳を軍部が「はい、そうですね」と唯々諾々と従うとは思えません。ロシア大統領選は波乱含みの展開になる公算が大です」

「予測は?」
・不正選挙を画策して大統領選を勝ち抜く
・バトルシェフ、プリゴジンらと共謀(エリツィンとプーチンとの約束のように)、傀儡政権を樹立
 ・中国へ亡命

が考えられますが、プーチンが勝っても傀儡ができても今までのロシアではもうないので、すんなりとは行かないでしょう」


プリゴジンの狙い

「プリゴジンはプーチンと繋がっているのか?」
「軍トップのショイグやゲラシモフを口汚く罵り、戦闘の失敗を彼らの責任と名指しして批判するのは、プーチンが意図する方向と一緒です。また2023.6.4にワグネルがロシア正規軍の中佐を拘束・尋問した映像をSNSに流しました。ワグネルは傭兵。これはロシア軍の軍法や軍刑法を超越したプリゴジンの越権行為。普通ならプリゴジンは無事ではいられないはずだが、彼は何事もなかったようにロシア国内で討論会や記者会見を勝手に開いている。どう見てもプーチンの後ろ盾がないと出来ない言動です。

傭兵部隊が軍法会議を無視して正規軍中佐を尋問し映像を晒した。東スポWEB2023.6.6


プリゴジンの政治的影響力や存在感が高まっています。プーチンの料理人から民間傭兵会社ワグネルの創設者となり、更なる野望を渇望していることは確実です」
「次なるプーチンか」
「しかし簡単ではないでしょうね」
「我々の分析では、ポスト・プ-チンのロシア政局は軍事力を持つ勢力の攻防となると見ています

プリゴジンはロシア軍トップを完全に敵に回しています。またチェチェン共和国のカディロフ首長は、プリゴジンを「問題を叫んでばかりいるブロガー」(2023.6.1)と嫌っています。カディロフも残忍な特殊部隊「アフマート」を有しているのでプリゴジンが次のロシアのトップに立つことは許さないでしょう。

それとは別に我々が支援する自由ロシア軍団とロシア義勇軍団もプーチン政権やその傀儡政権の存続を容認するはずがありません」


ポスト・プーチンに備え軍事力を蓄えるロシア内勢力

「なにかキナ臭い権力闘争が起きそうだな」
「1990年代前後に起きたソ連崩壊では、ソ連邦という巨大なミカンの皮が破れ、ミカンを構成していた中身の各房、すなわちロシア、ベラルーシ、ウクライナ、バルト三国、CISなどが分離独立していきました。失敗した軍部エリートなどの反乱を除けば、軍事衝突の無い比較的穏やかな政権交代でした。その代わりロシア国内では、混乱の最中、政権を手に入れたプーチン、プーチン独裁を支える代わり甘い汁が吸える特権階級になった治安・国防職員のシロヴィキ、国営企業はタダ同然でだまし取った新興財閥のオリガルヒによって分割されました。

現在彼らはウクライナの反転攻勢でプーチンの失墜・ロシア国内の混乱が視野に入ってきました。今ある特権や富は自力で守ろうと傭兵・私兵を抱え込もうとしています。

ロシア国内の民間軍事会社の需要が増大し、報告・確認されているだけで37社ほどが乱立しているようです。
例えばショイグ国防相のパトリオット、電力ガス会社ガスプロムのポトーク、占領下にあるクリミヤ首長のコンボイなどがあります。

ご承知と思いますが、ロシアは多民族大国です。大まかな分類では、ロシアは8割の民族としてのロシア人「ルースキー」と、24の共和国に住むルースキー以外の「ロシア連邦の国民」としてのロシア人「ラシャーニン」で構成されています。今回のウクライナ侵攻で各州各地域に動員令が出されました。それを利用して武装化し民族独立の動きが起こっているとの報告もあります」

(動乱が予想されるポスト・プーチンの世界。サンデーステーション2023.5.14)



「ロシアの富も権力も全て思い通りにできると思い込んだ絶頂期のプーチンはこう言いました「私が(ロシアの)指導者でなければ国が崩壊する」と豪語しました。ある意味その通りになりつつあります。新しいロシア皇帝になり損ねた男は大ロシア消滅のボタンを押したのかもしれません」マシューは言った。

(ナショナルジオグラフィックCH「FACING PUTINライバルが暴く 真実と秘密」)



続く。


小説「第1部  ロシア動乱(スムータ)再び。 CIAによるプーチン失脚作戦」  越境攻撃の狙い

2023-06-05 13:47:54 | 軍事
筆者はhttps://blog.goo.ne.jp/ecaps16/e/03f0088c365950145d8ce0617fd9667a「ウクライナ危機PARTⅫ ロシア軍、崩壊か反乱の可能性。プーチンの短期決戦見積もりが大誤算。兵站が破綻し始めた。」で、ロシア分裂の可能性について言及した。
どうやら現実味を帯びてきたので、別視点から深堀してみよう。

そして起きるのは、「革命」ではなく「動乱」である。

◆小説「ロシア動乱(スムータ)再び。 CIAによるプーチン失脚作戦」

2023年5月22日、ウクライナ国境近くロシア南西部のベルゴロド州に装甲車両部隊が侵入、これをせん滅しようとロシア軍は砲兵、空軍に支援された約4200名、軍用車両約60台の部隊を投入した。これによりロシア国内で初めての地上戦が発生した。なお戦況は錯綜しており詳細は不明。ロシア側は「住宅35棟と行政庁舎が損傷した」、「ウクライナの武装勢力によるこうした行動には迅速かつ厳しく対処する」、「ウクライナ人数十人を殺害」、「侵入部隊をウクライナ国境まで押し戻した」と発表。ウクライナ側は関与を否定した。侵入部隊は、「打倒プーチン!」、「ウクライナに勝利を!」、「ロシアに自由を!」などを標榜する「自由ロシア軍」、「ロシア義勇軍」とみられている。

BBCニュースJAPAN 2023.5.23)


また6月1日にも越境攻撃があったとロシア国防省が発表した。同省によると、ベルゴロド州シュベキノ周辺で「親ウクライナ派武装勢力」によるとみられる砲撃とドローン攻撃が3回あり、いずれも撃退したという。この戦闘で侵入戦闘員を30人以上が死亡、4台の敵装甲車を破壊したとした。
ウクライナ側は関与を否定。

翌6月2日には、ベルゴロド州西側の隣接する3州、クルスク州、ブリャンスク州、スモレンスク州でも長距離ドローンや砲撃による小規模な攻撃があったが、死傷者や重大な事故の報告はなかったことは幸いだったと各州の知事や知事代行がウクライナを非難した。ウクライナ側は関与を否定。


●CIAとの会議

ウクライナ・キーフ。キーフ動物園から西北西約2km、シコルスキー通りに面したところに米大使館がある。

(Google Earth)


ロシアによるウクライナ侵攻の10日前、米国は一時的に大使館機能をリビウに移した。所在地は秘匿された。職員はポーランドなど国外から通勤することになった。だが空襲はあるものの侵攻はやがて頓挫。北からキーウに接近したロシア軍は押し返された。東部・南部から迫ったロシア軍もウクライナ軍の頑強な抵抗で遅々として進まなくなった。

ロシアは失敗した。我々はキーウに帰る
2022年5月頃から欧州各国は続々とキーウで大使館業務を開始した。
ロシア侵攻から約1年半近くになり、米・在ウクライナ大使館はおおいに増強された。まず空襲に備え地下施設が増築された。そして陸海空のC3I(指揮・統制・通信and情報)の強力な部隊・機関も米本土から派遣・移動してきた。大使館員たちは「まるでミニ国防総省が引っ越ししてきた」と噂していた。


大使館のエレベーター地下2階まで降りて、分厚い透明防弾ガラスで囲まれた歩哨ポストの前で、長身のキース・ピクスビー米・在ウクライナ大使はセキュリティーカードをカードリーダーに通した。
「やあフレッド。当直か?」大使は防弾ガラスの向こうのMP二等兵に声をかけた。
「おはようございます、大使。もうすぐ交代です」
「おつかれ、ゆっくり休んでくれ」認証OKが表示されて、開いた検問ゲートのドアを通り抜けながら、キースは二等兵に向かって片手を挙げながら言った。
「そうします」

キースが会議室のドアを開けた。20名ほどが入れる会議室だった。大小のモニターが壁とテーブルに4つ。テーブルの中央には音声会議用装置も置かれていた。部屋には6人の男がテーブルに座っていた。キースが会議室に入ると全員がドアのキースに顔を向けた。
「おはようございます。大使」キーウ支局長のフィリップ・パークスが声をかけてきた。他の者もボソボソと挨拶をした。
「遅れて申し訳ない」キース大使はスタッフ会議で遅れたと言い訳をした。
「これから始めるところです」如才ないパークス支局長が答えた。キース大使が席についた。


<メンバー紹介>

パークス支局長がメンバーを紹介した。CIAには作戦、情報、科学技術、行政の4本部があるが、5人は作戦本部のエージェントと工作員だった。1人だけロシア人が混じっていて、元SVR(ロシア対外情報庁)の職員だったという。
特別行動センター長のマシュー・ヘンリーは米本土ラングレーからオンラインでの参加だった。

(画像生成AIで作成)


作戦本部
・欧州部長:ジェイ・シーキンズ
・キーウ支局長:フィリップ・パークス

 ・SACセンター長:マシュー・ヘンリー(オンライン参加)
  ・SOG(特殊作戦グループ)
   地上班指揮官:ウォルト・ジェナー
   地上班チーム・ナンバー2(装備と特別プログラム部門):クリス・トラバース

  ・PAG(政策行動グループ)
   指揮官:ルーカス・レンフロ
   ロシア人協力者:フョードル・ザハロフ


注:SAC(特別行動センター)。氏名(Mグリーニー、Tクランシー「米露開戦」他から借用)

<ベルゴロド越境攻撃の戦況:少なくとも5エリアを占領>

(Wiki 「2023年ベルゴロド州への攻撃」)


メンバー紹介に続いて、モニターの前に立ち戦況図を示しながら越境攻撃の戦況を説明した。
「ご承知のとおり今回のウクライナ北部国境に隣接するロシアのベルゴロド州、クルスク州、ブリャンスク州、スモレンスク州での攻撃は、元ロシア兵が中心となっている「自由ロシア軍団」(リーダー:イリヤ・ポノマレフ)と極右のロシア人が集結して立ち上げた「ロシア義勇軍団」によるものです」

「兵員数としては中隊規模クラスの自由ロシア軍団とロシア義勇軍団との連合部隊は、2023年5月22日1200から翌23日2200の間に、ロシア・ベルゴロド州のシチェティノフカ、ゴルコフスキー、コジンカ、ゴーラ・ポドル、グロトヴァを占領し、引き続き交戦中です」(Wiki)


<反プーチン組織結集のためのリクルート継続中>

「かれらを一本化・組織化して武器装備を支給・訓練したのがSOG地上班の指揮官、彼、ウォルト・ジェナーです。ウォルト、説明してくれ」パークス支局長はテーブル対面のジェナー地上班チーム・リーダーにバトン・タッチした。

元レンジャーで長身痩躯のジェナー指揮官がリクルート現況を説明した。「自由ロシア軍は去年の3月、ロシア義勇軍は去年の8月に立ち上がった組織です。我々がリクルートしているロシア人反政府組織はこれだけではありません。他にも、去年8月末にプーチン寄りのロシア極右思想家アレクサンドル・ドゥーギンの娘を自動車ごと爆殺した「国民共和党軍」とも連携をしています。またロシア国内で閲覧されているテレグラムにもリクルート動画を継続して流していて、国外に脱出したロシア人やロシア国内からの反応も続いている状況です。

自由ロシア軍団、ロシア義勇軍団、ロシア国内の反体制地下組織への武器・装備等の提供、ウクライナ軍への反ロシア軍団移動等の情報連絡・補給支援要請および調整、越境ロシア州での情報収集、リクルート補充兵の身元調査などを担当しているのがASPB(Armor.and.Special.Programs.Branch)です。こちらにいるチーム・ナンバー2のクリス・トラバースが担当しています」ジェナーが隣に座るクリスを紹介した。そして目で続きの説明するよう合図した。


<越境攻撃の狙い>

中肉中背だががっちりした体格のクリス・トラバースがモニターの前に行き説明を始めた。
「今回の越境攻撃の狙いはいくつかあります」モニター画面にパワーポント資料が映し出された。

① ロシア国内ももう安全ではない。ロシア国内の不安醸成。
② ロシア軍の戦力分散。ベルゴロド州、クルスク州、ブリャンスク州、スモレンスク州にも国境警備兵力を割かせる。
③ ベルゴロド州を現ロシアから解放。自由ロシア共和国(仮)を樹立。反体制・反プーチン勢力の集結地として宣伝。


(Wiki 「2023年ベルゴロド州への攻撃」)


<グレイヴォロンの戦い> Novaya Gazeta Europe2023.5.25(越境攻撃に参加した人物へのインタビュー)

「今回の越境作戦は来る反転攻勢の一環でもありますが、「ロシア国内を攻撃しない」というウクライナ側ドクトリンを堅持するため、ウクライナ軍の戦闘支援のない厳しい侵入攻撃になりました。

ウクライナ側の砲兵支援があれば、グレヴォロン国境付近の防御態勢を簡単に破壊できたのですが、彼らは120mm迫撃砲で対処しながら前進、国境検問所までの道路は対戦車豪で通過できず、迂回して畑を横切ることになりました。悪いことに侵入前夜の悪天候のため、ぬかるみに行動を阻まれる悪条件が重なりました。

国境警備はコンクリート壁、30mm砲と重機関銃装備の4ないし5台のBTR-90(装輪式水陸両用装甲兵員輸送車)と国境警隊が守備していましたが、戦車2両を先頭に前進すると、ロシア側は全員逃げ出しました。検問所制圧後、周囲の民間人に家から出ないよう警告して、コジンカ、グロトヴォ、ゴーラ・ポドル制圧に分散して発進し占領。作戦開始から数時間後、砲兵、Su-25(攻撃機)、戦闘ヘリに支援されたロシア部隊が反撃を開始したので、越境攻撃軍団は一旦国境付近まで後退しました。

彼らには対空車両、対戦車車両がないので仕方がないことです。その代わり彼らには携帯式のスティンガーやジャベリンをたっぷり支給しています。グレイヴォロン近くで敵ヘリMi-8(武装輸送へり)を撃墜したようです。なかなか上手く使用して対抗していますよ」
「なぜ対空自走砲車両など支給してやらないのだ?旧式の在庫もないのか?」キース大使が疑問を発した。
「支給しないのではなく、支給してもすぐには使えないのです。これはF16提供問題と同じ問題です。高度に機械化された兵器は全て英語仕様でできていますから」ジェナー指揮官が答えた。大使もすぐ自身の愚問に気づいた。「そうか。習熟問題か」


<越境作戦でのCIA地上班の狙い>

「反ロシア軍団への武器供与の見返りとして要求しているのは、ロシア側情報の収集です。CIAとしてはグレイヴォロンにある

・行政庁舎(内務省の現地本部、FSB治安局)の情報
・ベルゴロド22核保管施設の情報


ですが、今回は残念ながら上手くいきませんでした。
FSB庁舎の占領はしたのですが、ロシア軍は砲撃で破壊してきたのです。民間人の死傷者も出たのですが、彼らは意にも介さない攻撃だったようです。ロシア軍は庁舎も民間施設も区別なく地域一帯を砲撃してきたようです。

それと核施設の占拠・搬出は彼らだけでは当然無理と分かっていたので、せめて情報だけでもと考えていましたが、どうやらロシア側が搬出を始めたようです。

鹵獲兵器はBTR-80 、BTR-82(装甲兵員輸送車)、R-330Zh(電子戦ジャミング通信ステーション車)。
情報対象としては国境検問所制圧時に鹵獲した文書類や地下室に隠れていた国境警備隊員の捕虜が戦果として報告されています」
「宝物の情報が掘り出されることを願うよ」僅かな戦果報告にがっかりするCIAメンバーに、いい言葉が見つからなかった。


<越境作戦でのPAGの狙い>

「ルーカス、君からの報告は?」モニター画面のSACセンター長、マシュー・ヘンリーが話題を変えるために、PAG指揮官、ルーカス・レンフロに発言を促した。切れ者と噂のレンフロが慌てることもなく徐に口を開いた。
「まず鹵獲した文書類の分析結果と国境警備隊員の捕虜の尋問をしたいと思います。国境警備任務はFSBの担任ですから、こちらのフョードル・ザハロフ氏に同席してもらい、通訳と情報評価を兼ねてもらいながら、グレヴォロンスキー地区、ベルゴロド州、FSB関連の情報を収集分析したいと思います。

これから取集できる情報を加味しながら、自由ロシア軍団、ロシア義勇軍団が占領した地区の住民への慰撫作戦を展開して味方を拡大していく案を練っています。
親軍団、親ウクライナ、反プーチンのプロパガンダ拡散も同時並行で行います。ウクライナでのロシア軍による残虐な戦争犯罪行為も各メディアを通じて広報していきます」卒なく答えるルーカス。

「ロシア大統領選は来年2024年3月だ。プーチンを失脚させるポイントは2つ。

・ウクライナ反転攻勢でのロシア軍敗退
・ロシア国内の社会不安増大、プーチンの威信失墜


が不可欠だ。のんびりする時間はないぞ。もっと社会不安を煽る具体策を考えろ!」海兵出身のマシューは、ルーカスのようなハーバード大を鼻にかけて他を見下すような雰囲気の男が嫌いなのだ。
ルーカスは大勢の前で恥をかかされて怒りを覚えたが、内心を抑えて答えた。
「そうですね。ロシア南部の州が越境した侵入者に脅かされていることを煽るために、生成AIで作ったプーチンの声で戒厳令や総動員令を放送するのはどうでしょう?」
「すぐにできるか?」
「できます。科学技術本部の技術システム研究・開発部と国外ラジオ放送部と事前に話していて、ハッキング・メニューに入れてあります」
マシューはルーカスの抜け目なさに舌を巻いたが、ルーカスの頭の良さは認めざるを得なかった。

(NHK ニュースウォッチ9 2023.6.6)



<SBU(ウクライナ保安庁)とは必要な時のみ連携>

「SBUとはどう連携している?」ピクスビー大使が訊いた。
「ソ連・ロシア時代から旧KGBの体質を受け継ぐ機関ですから、ロシアとの二重スパイが隠れている懸念があります。かれら(SBU)も我々(CIA)も秘密工作を行うので、情報漏れを防ぐにはお互い知らない方がいいという非公式な基本合意ができています。
重要なヒューミント(人的)情報の共有や相手方の支援が必要な場合のみ、その都度お互いの関連部局間で調整するという取り決めになっています」マシューSACセンター長が答えた。
「ただC3PY(ウクライナ対外情報庁:2004年にUSBから対外諜報機能が分離)のSSSCIP(ウクライナ国家特別通信局)とはNSAがシギント・エリント共有を担当しています」

注:NSA(国家安全保障局)、シギント(通信傍受)、エリント(レーダー波・ミサイル誘導電波などの電子情報傍受)

(ナショナルジオグラフィックCH「アメリカ国家安全保障局」)



<反転攻勢作戦とプーチン失脚作戦、そしてクレムリン突進作戦>

「ピクスビー大使。以上が反転攻勢へのCIA担当の「形成作戦」の現状です」マシューが説明した。
「ありがとう。マシュー。概況は理解できたよ」キースが感謝した。
「では私の方から、反転攻勢作戦とプーチン失脚作戦の概略をご説明します」
「ワクワクするね」
「ただプーチンは失脚しても亡命する可能性があります」
「それはまずいな。あのクソ野郎に天寿を全うさせてはいけない」
「同感です。そのため失脚時にすぐさま「クレムリン突進作戦」を発動して物理的に「消去」することも視野にいれています」

続く。

ウクライナ危機PARTⅫ ロシア軍、崩壊か反乱の可能性。プーチンの短期決戦見積もりが大誤算。兵站が破綻し始めた。

2022-10-15 10:05:57 | 軍事
●プーチンは誤算の繰り返し。短期決戦の頓挫とロシア軍への過信が、作戦の失敗と兵站の破綻を招いた

<当初のプーチンの侵略目標>

推測だが

・首都キーウを短期間で攻略し、傀儡政権を樹立。ウクライナ軍への戦闘停止命令。ノボロシア一帯を割譲させロシア領と承認させる。

・東部方面、南部方面のロシア軍の進軍を短期間で被害を最小化して完遂。

・ウクライナの東部と南部、プーチンが主張する元々ウクライナの領土ではないノボロシア一帯(東から、ルハンシク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州、ムィコラーイウ州、オデッサ州)を軍事侵攻で占拠し、ロシアの共和国として承認併合する。


(帝政ロシアの妄想に狂うプーチン。大下容子ワイド!スクランブル2022.5.5)


プーチンの主張(2014.4国営放送「ロシア国民との対話」)によると、「ノボロシア(=ニューロシア)はロシア帝国時代、オスマン帝国から獲得した新たな領土であり、元々ウクライナ領土ではない」というもの。ご都合主義もいいとこで、いつの時代の領土・国境が正しいと各国が勝手に言い始めたら世界中が混乱する。


<要のキーウ攻略の失敗。短期決戦の前提が崩れる大誤算。だがプーチンはロシア軍の戦力でこのまま押せばノボロシア占領は可能と戦争継続を選択>

ロシア軍の大戦力、最新兵器で攻撃したらキーウはすぐ落とせると過信していたプーチン。補給も短期決戦用だった。そのことは戦闘が長期するにつれ明白になっていった。また隣国ウクライナはロシア国内にも親戚や血のつながりのある人々もいて、大昔のキエフ公国まで辿れば、ロシアと兄弟国である。だから2月24日の侵攻開始まで侵攻先がウクライナであることを兵士たちには知らせなかった。事前に知らせて侵攻までに時間がかかれば兵士の間に動揺や反発が広がるのを恐れたからである。
だが短期戦の補給量のまま長期戦への移行、納得しにくい侵攻目的、それを無視して戦争継続を決断したプーチン。兵站の重要性、部隊の士気の重要性を理解できていない。軍事を知らない元スパイの限界である。

またロシア兵にも、ウクライナはロシアに比べれば貧しい弱い国、というウクライナ国民を見下す偏見・プロパガンダによる思い込みがあったようだ。

虐殺のあったブチャから避難したキリル・サゾノフさんの証言によると「この軍事作戦は貧困にあえいでいるウクライナ国民を圧政キエフ政府から解放するものであり、諸君たちは解放軍として歓迎されるだろう」と侵攻開始直前の上官訓示があったのではないかという旨の推測をしている。
ところがブチャに侵攻してきたロシア兵は、各家庭に電子レンジやパソコン、洗濯機があることに激怒した!
「なぜこんな良い生活をしているのか!」嫉妬に狂ったロシア兵。本来は騙して戦場に送り込んだ上官や軍上層部に怒りをぶつけるべきだが、それができないので残虐行為、略奪、拷問、レイプなどの怒りのはけ口をウクライナ住民へ向けた。

ウクライナ軍への早期戦闘停止命令の下命見込みがなくなり、東南部方面への侵攻はウクライナ軍とロシア軍とのガチの正規戦となった。短期決戦の前提が崩れ、長期戦へ移行すると補給品の不足が表面化していく。軍規の乱れ、士気低下、厭戦気分が補給品の不足とともに前線の兵士に蔓延していった。

ウクライナの方がいい生活をしていることに気づくロシア兵。報道特集2022.4.9)


略奪行為は軍法会議で処罰されるハズだが、ロシア軍規は無統制。報道特集2022.4.9)



過去記事「ウクライナ危機PARTⅩ ロシアは分裂・内戦の可能性。・・」でも書いたように、ロシア人口約1億6千万人のうち、6人に1人は最低生活水準以下の暮らしをしている超格差社会。貧しい人たちの7割がロシア正教に入信して、ホームレスの人々は教会で食事を支給されているような状況である。 

神頼みの必要のない一握りの人たちは、プーチンのプロパガンダが眉唾ものであることを見抜いているので、ロシアから国外に脱出できる。しかし大勢の貧しい人たちは、プロパガンダの是非を考える余裕はなく、また国外脱出のお金もない。圧政に苦しみ貧困にあえいでいるウクライナの同胞を救うために動員令に従い戦場に向かいなさいと、ロシア正教会のキリル総主教から説教されれば、それがプーチンのプロパガンダであっても総主教の言葉として従う。
(戦闘)義務の遂行中に戦死したのであれば、それは尊い犠牲だ

(プーチンの犬、キリル総主教。 ニュースウォッチ9 2022.9.27)



●兵站が破綻し始めている

<妻や母や娘からナプキンとタンポンを送ってもらえ!>

動員兵の訓練所で。
上官「自分の物は自分で用意しろ。軍服以外の必要なものは何もない。妻や母や娘に生理用ナプキンを頼むのだ。一番安いナプキンと一番安いタンポンだ。弾丸の傷にタンポンを押し込むと膨らむから
まるで漫画のような光景が隠し撮りで流されている。

(止血帯の代わりにタンポンとは。 報道ステーション2022.9.28)



<食事も戦闘服も寝袋も水も、すべて不足していた。略奪品で腹を満たした> 仏に逃れてきたロシア空挺隊員の証言。

パベル・フィラティエフ氏34才。経済的な事情でロシア軍に入隊、第56親衛空挺襲撃隊の隊員だった。
侵攻の2月24日04:00頃、駐留していたクリミヤの訓練所から北の国境方面に移動、攻撃の目標、目的などは
知らされなかった。
侵攻途中で敵はNATOおよびNATO支援によるウクライナ側の攻撃が始まったと思ったという。そう教え込まれていたからだ。今では「明らかな、完全なウソであるとわかります」とパベル・フィラティエフ氏は証言した。

彼の部隊はヘルソンに派遣されたが、補給環境は酷かったという。
最初から食事の問題が発生した。水、防寒着、寝袋も。とにかくすべてに問題があった。唯一足りていたものは弾薬だった。1か月後には、大半の戦闘服が使い物にならなくなった。しかし戦闘服は支給されなかった。土の上で寝ていると(戦闘服は)1か月で使い物にならなくなった」ここからも兵站準備が短期戦であったことが窺える。

(ロシア軍の酷い実態を証言する侵攻に参加したロシア空挺隊員。 TBS NEWS DIG2022.10.8)



<軍服150万着消失の怪事件。おそらくプーチン得意のフェイク。元々用意していなかったのでは>

招集兵用に用意していた軍服150万着が消えたという。
ロシア下院議員で元陸軍中将のアンドレイ・グルコフ氏のSNSによれば、
どこに消えたか分からない。なぜこんな問題がおこるのか。誰も説明しようとしないのだ!」と激オコの投稿をした。
おかしいだろう。下院議員ではなく動員令をかけたプーチンこそが激怒して「犯人を捜しだせ!」と騒ぐハズだ。プーチンの信用に泥を塗るような事件だ。怪事件で済まされる簡単な問題ではない。大事件である。

元々用意などしていなかったものであったとすれば説明がつく。プーチンはウクライナを脅すために、30万人の動員令をかけ、すぐに招集し戦場に送れることを見せたが、動員兵には相応の装備品が必要であることに頭が回らなかったのだ。前にも書いたが、兵士を戦力化するには、士気、練度、食料、武器、弾薬が必要である。元スパイで軍事に疎いプーチンは兵士を大量動員して武器、弾薬を揃えればなんとかなるという頭だから、軍服が足りないという訓練所からのクレームを聞いて、150万着用意していたがなぜか消えたしまったという事件をデッチあげて非難をかわそうとしたのであろう。プーチンらしい姑息さが匂う。

日刊ゲンダイDIGITAL2022.10.5)


兵士戦力化の5要素に、「食料」としたがもちろん象徴的な言い方だ。正確には食料を含む兵士用の補給品・装備品のことである。上記の不足例で挙がっているように、携行食料、医療キット、水筒、防寒着、寝袋も必要である。特に重要なのは防弾チョッキ、戦闘用ヘルメット、ヘルメットクッション(ハゲないように)、軍靴である。他にも弾帯、背嚢、雑嚢なども必要だ。

とにかく補給・兵站の重要性を理解していないプーチンは、誤算続きでいまやドツボにはまり始めている。


●兵站の破綻は、フロントライン(前線)の破綻。崩壊する前線兵士の銃口はどちらに向けられるか?軍かプーチンか

どこの国の軍隊でも将兵は古今東西の戦闘・戦史を習う。何が勝敗を分けたかを研究・理解するためである。特に現代戦では短期間で大量の軍需品を消耗する。兵站を無視して遂行された旧日本軍のインパール作戦の失敗を挙げるまでもなく、兵站の重要性は現代の軍人なら理解している。


<プーチンは兵站を理解していない>

5月9日はロシアの戦勝記念日。キーウ攻略を諦め東部方面へ戦力を集中し始めた頃だった。一挙に戦況挽回のためウクライナに宣戦布告をして国家総動員令を発表するかと思われたが、誇れる戦果がなかったためか、これまでどおりのプロパガンダ、やむをえないウクライナ進攻を続けることを発表しただけだった。

翌5月10日、米上院議会の公聴会で、米の各情報機関、インテリジェンス・コミュニティーを統括するヘインズ国家情報長官が、ロシアの動向分析を説明した。

・プーチン大統領は長期戦に備えている。
・東部ドンバス地方の確保以上(ノボロシア確保)の達成が狙い。
・ドンバスへの戦力集中は、キーウ攻略失敗の主導権を取り戻すための一時的な動き。
・戦闘の長期化で戒厳令を出す可能性。
・核使用はロシア存亡の危機と感じた時。


また次の点も指摘した。(下記の画面参照)

・「自分の野心といまのロシアの軍事力とのズレに直面している」→現実のロシア軍戦力への過信。軍の実情を理解できていない。

・「ロシア軍が兵士の増員などをしなければ、オデーサから沿ドニエストル地方まで支配できない」→ノボロシア一帯の占領には現状の兵力では不足(動員令が必要)


(ニュースウォッチ9 2022.5.18)



だがこの時点でプーチンが短期戦から長期戦に切り替えたとしても、G4担当(兵站)の将軍に動員令に備え兵員用装備品を準備せよ、と命令したとは思えない。「私が(ロシアの)指導者でなければ国が崩壊する」と豪語するほどのプーチン独裁である。

(ナショナルジオグラフィックCH「FACING PUTIN:ライバルが暴く 真実と秘密」から)


誰も気を利かせて言われる前に装備品を増産・備蓄などはしない。余計なことはしないのだ。プーチンから直接命令されるまで待ちの姿勢である。その結果が下記の補給品不足の惨状となった。

・動員令をかけてすぐに猫も杓子もかき集めたが、あらゆる兵員用装備品が不足していることが露見した。
他の装備品も上記で説明した通りの酷い有様だ。

(支給されたボロボロに錆びたAK-47。報道ステーション2022.9.28)


・英国のGCHQ(政府通信本部。米のNSAと相当する情報機関)のフレミング長官も、10月11日のBBCラジオ4の番組で、ロシア軍の状況について「絶望的な状況が広がっている」と説明した。「兵員、武器、弾薬が不足しつつある」とも。

(GCHQフレミング長官。 ロイター2022.10.12)

(RUSI:英国王立防衛安全保障研究所。Royal United Services Institute for Defence and Security Studies)


●プーチンは逃亡先を探し始めたか

プーチンはウクライナ、G20、トルコのエルドアン大統領、イーロン・マスク氏など方々に和平交渉の打診をかけ始めている。弱気の表れだ。裏の意図は亡命先を探っているのかもしれない。もしそうなら、核は使用されないかもしれない。核のボタンを押せばもう後戻りはできない。だからまだ交渉の余地があるうちは、逃げ口は見つかる可能性がある。命が惜しくなった独裁者は、権力を手放しても各地に密かに隠していた巨額の金がある。いい条件の逃亡先を見つけ、妥当な交換条件(多少足元をみられても我慢する)で合意できる相手は見つかるだろう。

プーチンの逃げ出す気配を少しでも感じたら、強気の発言を繰り返してきたメドベージェフ安全保障会議副議長やペスコフ報道官、ラブロフ外相らも一転して浮足立つだろう。プーチンには逆らえなかった、仕方なかったと手のひら返しとなるか。ショイグ国防相や軍上層部の幹部も自分には責任はない、命令に従っただけだと言い出すかもしれない。

逆に獰猛なボルトニコフFSB長官やプリゴジン・ワグネル代表、チェチェンのカディロフ首長たちには、直下に強力な暴力装置を有しているので、弱気になったプーチンに取って代ろうとするかもしれない。
あるいは未知のダークホースが登場するのか?

分裂か内戦か。最終章が近づいているのかも。


ウクライナ危機PARTⅪ ロシア動員令等に伴う戦闘への影響分析。核使用、ATAACMS、エクスカリバー誘導砲弾・・

2022-10-01 10:33:39 | 軍事
●プーチンの核使用について

プーチンの核使用の脅しは、7:3でブラフだろう。
使われるとしたら、小型の戦術核で、標的はウクライナ軍の重要な前線基地、補給基地、部隊集結地が候補となるだろう。

(露の戦術核の運搬手段は多岐にわたる。サンデーモーニング2022.3.20. ワイドスクランブル2022.4.29)



<核によるザポリージャ原発攻撃、公算は低い>

TVであるロシア専門家が、堅牢なザポリージャ原発を核攻撃するのではないかと語っていたが、可能性としては相当低いだろう。プーチンが正気を失っていたらありえるが。
当原発が攻撃されたら、せっかく住民投票で獲得した少なくともヘルソン州、ザポリージャ州は汚染され人が住めなくなる。全住民が逃げ出すことになる。国内外だけでなく、両州の親ロシア住民からもプーチンに対して怨嗟の声が上がるだろう。

堅牢といえども原発を破壊する目的なら、何も批判を受ける戦術核を使う必要はない。外部電源を長期に遮断する処置を行えば、自動的にメルトダウン、水素爆発、臨界爆発が起きる。


<核使用決断はプーチンに相当な精神的プレッシャーになる。プーチンは脅し専門。軍事部門の強硬派の目には大規模核攻撃でないと劣勢挽回は不可能と見ている>

プーチンが核使用を決断すればルビコン川を渡ることになる。停戦交渉の余地もなくなる。プーチン政権の残された道は破滅か勝利かだけになる。決断の前には、米の報復がどのようなものになるか?あれもあるか、これもあるか、あるいは・・と、プーチンの胃はキリキリ痛むことになるだろう。
正常な神経なら小型核1発で戦況を好転させることはできないことは明白。戦術核だけでなく、戦域核も含む大規模核攻撃を決断しないと勝利できないと強硬派は考えているはずだ。軍もプーチンの戦争遂行の本気度を疑い始めているのかもしれない。


<プーチンは元スパイ、軍事は専門外。謀略、噂、嘘、脅しで相手に勝てると思っている。兵士の数だけでは・・>

だがプーチンは劣勢挽回のための秘策として大量動員(100万人動員も可能と噂を流布)を決断したところをみると、核使用はブラフで、大規模動員数をちらつかせることでウクライナ側の士気を砕き、同時に軍の不満にも応えることもできて一石二鳥だと思っているのかもしれない。ノルドストリームのガス漏れもタイミングが良すぎる。事故ではなくロシア側の謀略工作だろう。

今回の動員令。兵士を戦力化するのには5つの要素が重要である。士気、錬度、食料、武器、弾薬だ。
だがロシアの状況をみると、徴兵から逃げ出し、反発抗議による放火等。1日ほどの訓練で戦場へ。ロシア脱走兵よる証言などから補給の劣悪化。戦地での略奪。ボロボロのカラシニコフ貸与。どの要素をとっても今回のロシアの予備役動員は落第点ばかりだ。軍から兵隊が足りない、これでは戦えないと突き上げられたプーチンの付け焼刃の対応である。つまり部分的動員令だけではロシア軍反転攻勢となる戦力化に寄与することはないだろう。
気づいた方もおられるだろう。最近キーウやリヴウ、オデーサ等へのミサイル着弾の情報を聞かなくなった。ハイテク兵器も枯渇し始めた兆しではないか。


●ロシアが核使用しても米は核での報復はしないだろう

ロシアが核を使用した場合、米は核兵器で報復するだろうか?米が直接小型核をロシアに発射することはない。米露の直接戦争になってしまう。ではウクライナに反撃用の小型核を提供する?そんなことをすれば核のエスカレーションを後押ししたとして米が非難されるだろう。

では米の軍事報復カードは?
可能性として高いのは、制限していたハイテク兵器の提供だろう。ゲームチェンジャーとなる2つの兵器を紹介。


<ATACMS>(エイタクムス SSミサイル)

真っ先に頭に浮かぶのは、約80km射程に制限していた高機動ロケット砲システム「ハイマース」。この運搬システムに規制していた長射程300km超のATACMSを搭載すれば、ウクライナ軍の戦術の幅が大きく広がる。


<エクスカリバー誘導砲弾>

既にウクライナに大量に提供しているM777 155mm榴弾砲。侵攻当初、欧米はウクライナに提供する兵器について検討した。すぐに使えて有効な兵器。M1エイブラムスなどハイテク兵器は、操作運用などは英語仕様でネットワーク化システム化していて習熟期間が必要。ロシア製兵器に慣れているウクライナ軍にはすぐには役立たない。

そこで候補に挙がったのがM777 155mm榴弾砲(取り扱いやすく小回りの利く超軽量級火砲)

同様の兵器体系のウクライナとロシア。その榴弾砲の射程は約28km。M777の射程は約30km超。たった2kmの差、と思うなかれ。2kmでも射程外になる。砲兵戦では砲撃してすぐにその場から撤収しなければならない。砲弾の弾道をレーダーで解析して発射位置を特定する対砲迫レーダーや音源標定等により、位置が特定され、敵から反撃を受ける。砲撃し素早く撤収するには軽量でなければならない。その点M777はチタン製に改良したため、重量も従来の火砲の約半分の約4tの超軽量となった。大型ヘリだけでなくより小さなヘリでも吊り下げて輸送可能だ。「空飛ぶ砲兵」と呼ぶ人もいる。また設計改善で砲脚の取り扱いもよく、操作砲兵数も従来火砲の半分5名で可能だ。

これだけでも有利だが、エクスカリバー砲弾を米が大量提供するとなると、さらに有利になる。(Wiki等参考)

4月にカナダが「M777 4門とエクスカリバー砲弾を提供した」と報道があったが、既に消耗してないだろう。大量提供が必要だ。

当砲弾が発射され放物線の頂上に達すると弾体から滑空翼が展張され目標に向かって滑空を始める。いわばグライダー式砲弾となる。これにより射程が約40km〜57kmと延びることになる。

エクスカリバーは、GPS補正と慣性誘導によるプログラム誘導のため着弾精度が高い。2007年からイラクで初めて実戦投入されて以来、アフガニスタンなど実戦でブラシュアップされていった。2014年の信頼性テストでは、目標から平均1.6m以内に着弾した成績だ。エクスカリバー1発は、無誘導砲弾で10発〜50発を必要とされる目標破壊に匹敵するといわれている。

推測だが、砲弾セットの取り扱いも簡単でウクライナ軍にすぐ適用が可能と思える。
目標のGPS座標などのプログラムデータを弾体のフラッシュ・ドライブに必要な弾数分だけコピーする。あとはその砲弾をM777にセットして発射。既にカナダからの提供で取り扱いマニュアルもできているはずだ。

エクスカリバーは火砲との互換性も高く、米軍ではM198 155mm榴弾砲、パラディン(M109 155mm自走榴弾砲)でも使用できる。英のAS-90自走砲、スウェ-デンのアーチャー自走榴弾砲でも発射可能。

米はM777を72門。米以外の各国も4月頃から155mm榴弾砲の提供を予定していた。どれだけ提供されたかは軍事情報のため不明だが、英はAS-90を20両、加はM777を4門、独はPzH2000を100門、豪はM777を6門、蘭はPzH2000台数不明(多分10両前後)、許(ノルウェー)はM109を22両、仏はカエサル40両(エクスカリバーとの互換性は不明)、波蘭(ポーランド)はAHSクラブ18両(砲塔はAS90なのでエクスカリバーと互換性があるかも)、伊はケチっていて管理状態の悪い旧式のM109を検討となっていた。ほかにもスロバキアなどウクライナに勝利してほしい欧州の各国が提供を発表していた。
これでいくと200門両超のエクスカリバー発射台があることになる。(露発表の破壊数を考慮しても)


9月28日、米が発表した追加の軍事支援11億ドルには、エクスカリバーは含まれていないようだ。その代わりハイマース18基が追加される。これで10月以降には30基超のハイマースが揃うことになる。近接の部隊戦闘支援よりアウトレンジによる拠点攻撃と対露MLRS(射程90km)を重視しているようだ。多分、ハイマースによる攻撃が成果をあげているのだろう。

(報道ステーション2022.4.0. Wiki、JIJI.COM、)



以上、ATACMS、エクスカリバーの提供は速やかに実践投入適用が可能で、ウクライナ軍の急激な戦力アップが期待できる。

これに、攻撃ヘリ、制空戦闘機、高度な地対空ミサイル・システムなどのハイテク兵器提供が加われば、核使用のプーチンを素早く打倒することができるだろう。2発目の核を使う前に叩かないといけない。だが前にも言及したように、米軍仕様のハイテク兵器は、ネットワーク化システム化しているので、ウクライナ軍が簡単に使いこなすことはできない。
ひょっとしたら米は、プーチンの核使用を予想して相当前からウクライナ軍の一部を米でハイテク兵器の習熟訓練をしているのかもしれない。


ウクライナ危機PARTⅩ ロシアは分裂・内戦の可能性。プーチン皇帝はロシア国民とも敵対し始めた。ロシア革命前夜に非常に似てきた

2022-09-27 17:06:02 | 軍事
●思い通りにいかなくなったプーチン皇帝が暴走を始めた。ロシア国民でも容赦なし。TVに出てくる識者の多くが、ロシアではTVもネットも統制されていてロシア国民の多くは、ウクライナの惨状、ロシアの劣勢、戦争犯罪行為を知らないと言うが、そんなことはない。スマホ時代、ロシア国民はよく知っている。

ロシア革命を先導しソ連邦初代人民委員会議議長となったレーニン。彼もスターリン、プーチンと同じ冷酷な政治家だった。社会主義国家実現のため強硬な穀物徴収政策を断行。反抗する農民を毒ガスで殺戮した。3人の悪魔に共通するのは、目的実現のためには手段を選ばず自国民の命でも一顧だにしない非情さだ。

9/9にウクライナ軍に東北部を奪還された。露呈した武器と兵員の不足。北朝鮮にも武器供与を打診したとも報道が出る始末。最後の頼みの綱とされる中国。ウズベキスタンで習近平と首脳会談を行ったが、習の口は堅かった。経済連携はしてもウクライナ戦争への軍事協力は得られなかった。

追い詰められたプーチン。とうとうロシア国民から反発を買うことが確実な「部分的動員令」を2022年9月21日に発表した。

(「部分的動員令」に署名した、反対するやつは容赦しないと目が異常に座ったプーチン。7day2022.9.24)



<5月 だらだらと続くプーチン戦争。早く終わってほしいと願うロシア国民>

2月侵攻当初、プーチンもロシア国民もクリミヤ侵攻と同じように1週間程度でキーウを占領できると考えていた。
ロシア国民も自分たちに被害も及ばずに終わるだろうと気楽に推測し、プーチンや軍を支持した。だが思惑は外れ、3月、4月が過ぎてもウクライナの抵抗は続き、マリウポリではアゾフスタリ製鉄所で長期籠城するウクライナ軍に手こずった。

本来なら5月9日の対ドイツ戦勝記念式典で国家総動員令を発令して、一気にウクライナ侵攻をしたかったプーチンだが、目立った戦果の発表ができなかったので、国民の反発を恐れ当たり障りのない式典演説となった。

ロシア国民も、長引く泥沼戦争にプーチンや軍が発表するプロパガンダ報道に不信感を抱き始め、支持率が低下していった。

ロシアの独立系世論調査機関「レバダセンター」でも、軍への支持率低下要因の調査をしたところ、気にかかる理由として、
「民間人や兵士の死、破壊、捕虜」、
「戦争がないことを希望」が挙がった。

ロシア国民も戦争が長引けば、自分や家族が徴兵され死が間近になること、反撃で家が破壊されたり、捕虜になったりしないか、ウクライナの悲劇がわが身に降りかかってこないかと懸念がでてきたのだ。とにかくプーチンに早く戦争を止めてほしい、というのが多くの国民に広がっていったようだ。

(戦争が長引けばウクライナの悲劇がロシアにもという不安が拡散。報道ステーション2022.5.11)



<TVやネットを統制しても今はスマホ時代。噂は一瞬で千里を駆け抜ける>

下の動画をTVで見た方も多いだろう。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」のプリゴジン代表とみられる人物が、刑務所の受刑者を集めて、動員を強要している動画だ。

「半年経ったら、あなた方は戦場から帰宅し恩赦を受ける。そのまま居続けたい人は続ける。再び刑務所に戻るということは絶対にない。しかし戦地にきて初日に「想像と違う」と言い出したら、脱走兵として登録し銃殺する。考える時間は5分だ。私たちがここにいる間に決めろ」
世界各地で戦争犯罪の容疑がかけられている悪名高い「プーチンの私兵」と言われている組織の長だ。

注目して欲しいのは、この悪党の言葉ではない。左上にある赤丸の文字だ。「テレグラム@VCHK-OGPC」。
「テレグラム」は無料のロシア製スマホ・アプリ。運営は本社をドイツ・ベルリンに置く独立系非営利企業。Wikiによれば、世界で約4億人、ロシアで約3千万人が利用されている(2020年時点)。
2018年に一度はロシア当局が規制をしたが、テレグラムはそれに技術的に抵抗してサービスを継続した。今はどうやらロシア当局は規制をあきらめたようだ。

長い説明だったが、要はこの動画はテレグラムで誰かが隠し撮りをしてサイバー空間にアップしたものだろう。
他にも「テレグラム」動画で、ロシア情勢が流布されている。TVが規制されてもロシア国民はプーチン戦争の実情をよく知っているのだ。

(兵士不足解決に受刑者も狩り出すハメに。元CIA長官のレオン・パネッタはプーチンのことを「手段を選ばない、何でもあり」と称した。下画面は7days 2022.9.24)



<牙をむくプーチン皇帝、裏切られたロシア国民>

ロシア国内に多少の経済的痛みがあるぐらいで、国民の命や財産の破壊・喪失がなければ、そのうち戦争も終わるだろうから、独裁的なプーチン皇帝の好き勝手にさせておけ。下手に逆らえばひどい目に合うから黙っておこう、というのが、ロシア国民のスタンスだった。

だが「動員令」発令で、ロシア国民はプーチンが自身で勝手に始めた無謀な戦争の失敗のツケを国民に払わせようとしていることに気づいた。しかも「部分的」と姑息な言い回しで実際は誰彼構わず徴兵していることに、国民の不安・混乱・怒りが拡散した。特に子供をもつロシアの母親の反発は激しい。

(部分的動員令に反発・抗議がロシア各地で拡大。BBC NEWS|JAPAN2022.9.25 )



●ロシア革命の発端も、日露戦争戦時下で困窮するロシア国民が皇帝に「戦争反対」を訴えたところから起きた

20C初頭まで約300年間続いたロマノフ王朝。世界の全陸地の1/6を有する巨大なロシア帝国の富は、一握りの貴族と大地主によって独占されていた。半面、多くの労働者と農民は貧しい暮らしを強いられていた。鬱積した不満のマグマは革命の時を待っていた。

ソ連崩壊のドサクサに紛れて国営企業をタダ同然の金額で手に入れて巨万の富を得た新興財閥オリガルヒ、権力と特権を独占しロシアの国富を自由に享受する治安・国防省庁のシロヴィキたち。今のプーチン帝国の大地主と貴族たちだ。
オリガルヒとシロヴィキによる富と特権の独占は、ロシア国民の大多数を困窮させている。豊富なエネルギー資源の収益はオリガルヒたちのフトコロと軍需・防諜・治安を潤すが、多角的な国内産業の育成・振興には回らず、いびつな産業構造になっている。


<ロシアは超格差社会 6人に1人は最低生活水準以下の暮らし>

ロシアの人口は約1億6千万人。貧しい庶民の7割がロシア正教に入信。神にしかすがるものがないからだ。22年超の長く続く圧政と簒奪のプーチン政権下で信者が増え続けている。社会保障も手薄で手抜きにされ、孤児、麻薬、ホームレス、高齢者・身障者への支援が社会問題化している。プーチンは民衆の不満の受け皿を教会に担当させるためにロシア正教と癒着し庇護した。教会はさらに踏み込んで見返りに、孤児や貧しい家の子どもたちを集め、愛国心を育てるために「ロシア正教 軍事愛国団キャンプ」を組織化した。

(社会保障には金を出さずロシア正教を庇護し、国民の不満を教会に丸投げするプーチン。 NHK「失われし人々の祈り 膨張するロシア正教」2009年放送)



<1904.2-1905.9 日露戦争。大日本帝国が旅順を攻略しロシア帝国の威信が失墜。革命の時がきた!>

南下するロシアと日本が満州南部と遼東半島で激突。列強の1つで超大国のロシアと開国して間もないアジアの小国の日本との戦争は、今の軍事大国ロシアとウクライナとの戦争に似ている。

1904.2の開戦以来、一進一退が続いていたが、1905.1、攻略が難航していたロシア海軍の要塞、旅順軍港を陥落させた。
これは2022.9.10ウクライナ軍による東部ハリコフ州の要衝イジュームの奪還に似ている。エポックな戦勝転換点である。

スイスに亡命していた革命家レーニンは、アジアの小国日本軍により旅順が陥落したニュースを知って、ロシア国内の革命組織を通じてプロレタリアート(労働者階級)に呼びかけた。
「旅順陥落。専制政治は弱体化した。革命を最も信じていなかった人でさえそれを信じ始めている。ロシアのプロレタリアートは革命の攻撃を広げるよう努力しなくてはいけない」
今こそ革命の時、「戦争反対!」、「専制打倒!」を掲げて立ち上がれと檄を飛ばした。

1905年1月22日、当時の首都サンクトペテルブルグで、約10万人の労働者たちが皇帝への「戦争反対!」、「政治改革」、「労働者の権利・待遇の改善」を掲げての請願デモが実施された。それを鎮圧しようと政府が動員した軍がデモ隊に対し発砲し、多数の死者を出した。いわゆる「血の日曜日事件」、第一次ロシア革命の起爆となった事件である。

この発砲により、皇帝への信頼は失われ、各地で暴動が頻発した。
これはプーチンの「部分的動員令」の発令と似ている。ロシア国民の多くはウクライナ戦争を早く止めてほしいと願っているのに、その思いを逆なでするような行動に出たからだ。

第一次ロシア革命では、皇帝ニコライ2世の命も狙われたが、ニコライ2世は民衆の請願に答えて、国会(ドゥーマ)
改革を約束し、第一次ロシア革命は終息していった。再び皇帝政治打倒の革命の火が燃え盛るのは1917年の2月革命
である。

ここからがプーチン政治との分岐点である。ニコライ2世皇帝は民衆の請願を聞き入れたが、プーチン皇帝は国民にウクライナ戦争を止めるとは言っていないのである。むしろ戦争継続のため命を差し出せと強硬姿勢を崩していない。

(民衆の不満の鬱積が、あるキッカケで爆発する。NHK「ロシア革命 100年後の真実」)



ロシア革命を研究したロシアの歴史学者ゲンナジー・ボルジュゴフ氏は、

政権につく者には、常に社会の爆発を予見する賢さが必要です。つまり自ら改革、変化する力です。そうしないと爆発を招き、多くの犠牲が生まれることになります
と語っている。またロシア革命では1千万人から1千2百万人の犠牲がでたとも語っている。

果たしてプーチンに社会の爆発を予見する賢さがあるのか?


●分裂した場合、主に守旧派は3分裂、欧米歓迎派に分かれるだろう。プーチンの重しが無くなれば、ベラルーシなど近隣も不安定になる

3分裂する守旧派
1. プーチン派:プーチンにこけてもらうと困るグループ。必死でプーチンを支える。
2. 新旧派:プーチンの座に取って代わりたいグループ。全てプーチンのせいとして喜んで彼を世界に差し出す。
3. 風見鶏派:様子を見て態度を保留するグループ。上記1,2の勝ち馬に乗る気を窺う。

4.欧米歓迎派:もうプーチンやオリガルヒやシロヴィキは嫌だ。欧米の自由な政権を望むグループ。

中国などが絡んでくると、長期内戦の可能性も捨てきれない。