モザンビーク:「児童婚」貧困の連鎖 男女の格差助長
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/world/20140607k0000m030155000c.html へのリンク
毎日新聞
2014年6月7日(土)00:41
国連や国際NGO(非政府組織)が発展途上国で、18歳未満での婚姻(児童婚)の撲滅活動を進めている。低年齢での妊娠が女性の学ぶ機会を奪い、男女格差や貧困の拡大につながると考えられているためだ。英国政府も7月、国際会議を開き反児童婚機運を盛り上げる。児童婚の多いアフリカ南部モザンビークから実態を報告する。【同国中部ザンベジア州で小倉孝保】
ザンベジア州の州都ケリマネから未舗装道路を車で1時間。ニコアダラの公立病院産科病棟には約50人の妊婦が列を作っていた。同病院によると、1日40人の診察が限界だ。
タニア・ジャイメさん(14)は小学7年生。妊娠7カ月とみられるが、病院での診察はこの日が初めてだ。自宅から病院までは自転車で約1時間。前日も朝7時に来院したが、すでに診察待ちの女性が多かったため、改めてこの日午前6時に病院に来た。
ジャイメさんはおなかの赤ちゃんの父親である大工(17)と一緒に暮らす。「父さんも、母さんも私の妊娠について特段、何も言いません」とジャイメさんは笑顔で言う。母も13歳ごろ、ジャイメさんを身ごもった。ニコアダラで児童婚は珍しくなく、ジャイメさんのクラスでも子供を産んだ生徒が3人、妊娠している生徒がジャイメさん以外に2人いる。
都市から離れるほど児童婚は増える。同州バジョネはニコアダラから車でさらに4時間ほど行った小さな村だ。電気も届いていない。公立タパタ診療所を訪ねる。看護師に診察データを調べてもらった。5月1~20日に妊娠の診察を受けた女性のうち13歳以下が13人、14歳が7人。児童婚は実に一般的だ。
フランシス・フェルナンドさんも農業を営む男性との間に2歳の長男、生まれたばかりの長女がいるうえ、現在、3人目を妊娠中だ。自分の年齢は「わからない」と言うが、地元の住民によると15~16歳らしい。
フェルナンドさんの場合、長男の出産で小学校を中退したため文字は読めず、公用語(ポルトガル語)を話すことさえできない。「子供が欲しかったわけではないが、避妊法を知らなかった」とフェルナンドさんは現地の部族語で話した。
モザンビークの法律は男女とも18歳未満の結婚を禁じている。このため、ジャイメさんやフェルナンドさんは法的には結婚していない。あくまで事実婚である。児童婚の背景には、弊害や家族計画についての知識がない▽伝統的習慣になっている▽娯楽がなく、低年齢から性的行為に走りやすい--などの事情がある。
児童婚の多くは低年齢での妊娠がきっかけになっている。このため、女性が学校に通えず学ぶ機会を奪われる▽極端な多産傾向が強く、母体の健康が損なわれる--などの弊害が指摘されている。学校教育を受けられず結果的に文字を読めない女性が増え、社会的な男女格差を助長し、女性が貧困から抜け出せないという悪影響もある。
国際NGO「国際家族計画連盟(IPPF、本部ロンドン)」は各加盟協会を通じ児童婚撲滅に取り組んでいる。モザンビークでは加盟協会「家族保護協会(AMODEFA)」のスタッフやボランティアが小さな村を訪ね学校、診療所で児童婚の弊害を説明し避妊法を教えたり、避妊具や避妊薬を無料配布したりしている。
交通・通信事情の悪さが、スタッフ訪問の障害になり問題解決にはインフラ整備も必要だ。同州マガンジャデコスタのゴンザガ市長(57)は「貧困の連鎖を断ち切るため児童婚をなくしたい。ただ、地元の習慣でもあり撲滅は容易ではない。国際社会の協力が必要だ」と語る。
国連児童基金(UNICEF)が昨年発表した報告によると、途上国に住む20~24歳の女性のうち、18歳未満で結婚したのは全体のおよそ3分の1に当たる約4億人。サハラ以南のアフリカと南アジアに集中している。日本政府は昨年5月、IPPFとの戦略的パートナーシップ覚書に調印しアフリカでの自発的家族計画促進を支援している。
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/world/20140607k0000m030155000c.html へのリンク
毎日新聞
2014年6月7日(土)00:41
国連や国際NGO(非政府組織)が発展途上国で、18歳未満での婚姻(児童婚)の撲滅活動を進めている。低年齢での妊娠が女性の学ぶ機会を奪い、男女格差や貧困の拡大につながると考えられているためだ。英国政府も7月、国際会議を開き反児童婚機運を盛り上げる。児童婚の多いアフリカ南部モザンビークから実態を報告する。【同国中部ザンベジア州で小倉孝保】
ザンベジア州の州都ケリマネから未舗装道路を車で1時間。ニコアダラの公立病院産科病棟には約50人の妊婦が列を作っていた。同病院によると、1日40人の診察が限界だ。
タニア・ジャイメさん(14)は小学7年生。妊娠7カ月とみられるが、病院での診察はこの日が初めてだ。自宅から病院までは自転車で約1時間。前日も朝7時に来院したが、すでに診察待ちの女性が多かったため、改めてこの日午前6時に病院に来た。
ジャイメさんはおなかの赤ちゃんの父親である大工(17)と一緒に暮らす。「父さんも、母さんも私の妊娠について特段、何も言いません」とジャイメさんは笑顔で言う。母も13歳ごろ、ジャイメさんを身ごもった。ニコアダラで児童婚は珍しくなく、ジャイメさんのクラスでも子供を産んだ生徒が3人、妊娠している生徒がジャイメさん以外に2人いる。
都市から離れるほど児童婚は増える。同州バジョネはニコアダラから車でさらに4時間ほど行った小さな村だ。電気も届いていない。公立タパタ診療所を訪ねる。看護師に診察データを調べてもらった。5月1~20日に妊娠の診察を受けた女性のうち13歳以下が13人、14歳が7人。児童婚は実に一般的だ。
フランシス・フェルナンドさんも農業を営む男性との間に2歳の長男、生まれたばかりの長女がいるうえ、現在、3人目を妊娠中だ。自分の年齢は「わからない」と言うが、地元の住民によると15~16歳らしい。
フェルナンドさんの場合、長男の出産で小学校を中退したため文字は読めず、公用語(ポルトガル語)を話すことさえできない。「子供が欲しかったわけではないが、避妊法を知らなかった」とフェルナンドさんは現地の部族語で話した。
モザンビークの法律は男女とも18歳未満の結婚を禁じている。このため、ジャイメさんやフェルナンドさんは法的には結婚していない。あくまで事実婚である。児童婚の背景には、弊害や家族計画についての知識がない▽伝統的習慣になっている▽娯楽がなく、低年齢から性的行為に走りやすい--などの事情がある。
児童婚の多くは低年齢での妊娠がきっかけになっている。このため、女性が学校に通えず学ぶ機会を奪われる▽極端な多産傾向が強く、母体の健康が損なわれる--などの弊害が指摘されている。学校教育を受けられず結果的に文字を読めない女性が増え、社会的な男女格差を助長し、女性が貧困から抜け出せないという悪影響もある。
国際NGO「国際家族計画連盟(IPPF、本部ロンドン)」は各加盟協会を通じ児童婚撲滅に取り組んでいる。モザンビークでは加盟協会「家族保護協会(AMODEFA)」のスタッフやボランティアが小さな村を訪ね学校、診療所で児童婚の弊害を説明し避妊法を教えたり、避妊具や避妊薬を無料配布したりしている。
交通・通信事情の悪さが、スタッフ訪問の障害になり問題解決にはインフラ整備も必要だ。同州マガンジャデコスタのゴンザガ市長(57)は「貧困の連鎖を断ち切るため児童婚をなくしたい。ただ、地元の習慣でもあり撲滅は容易ではない。国際社会の協力が必要だ」と語る。
国連児童基金(UNICEF)が昨年発表した報告によると、途上国に住む20~24歳の女性のうち、18歳未満で結婚したのは全体のおよそ3分の1に当たる約4億人。サハラ以南のアフリカと南アジアに集中している。日本政府は昨年5月、IPPFとの戦略的パートナーシップ覚書に調印しアフリカでの自発的家族計画促進を支援している。