世界は超高層ビル時代に突入 中東では1千メートル超える建設計画予定
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2014年3月25日(火)08:37
(産経新聞)
今月7日に全面開業した高さ300メートルの超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)は、横浜ランドマークタワー(296メートル、横浜市西区)を約4メートル上回り、約21年ぶりに日本一高いビルの記録を塗り替えた。だが、世界の高層ビルランキングでは、ハルカスは75位。現在計画中の超高層ビルにはなんと高さ1千メートル級のものがあり、世界的には「1千メートル」の時代が迫っているのだ。
■世界1位は高さ828メートル
国際NPOのCTBUH(高層ビル・都市居住協議会、本部・米イリノイ州)によると、世界の高層ビルの高さランキングで「あべのハルカス」は、75位に入った。これは韓国・釜山にある世界で2番目に高い超高層マンション「斗山(ドゥサン)ウィーブ・ザ・ジェニス」など、アジア・中東にある3つのビルと同じ高さだ。
現在「世界で最も高いビル」は、2010年に完成した中東・アラブ首長国連邦のドバイにある「ブルジュ・ハリファ」で、高さ828メートル。163階建てで、アルマーニが運営するホテルをはじめ、マンション、オフィスなどを備えた複合ビルだ。産油国の富を示す象徴的なビルといえる。
続く2位は、同じく中東・サウジアラビアの「メッカ・ロイヤル・クロック・タワー」で、高さ601メートル。2012年に完成、高級ホテルなどが入る。3位は台湾の「台北101」で、高さ508メートル。日本の建設会社、熊谷組がJV(共同企業体)を組んで建設した2004年完成のオフィスビルで、ブルジュ・ハリファに抜かれるまで世界一の超高層ビルとして名をはせた。現在もアジアで最も高いビルだ。
このほか、日本の不動産大手、森ビルがプロジェクトを進め、2008年に完成した中国・上海の「上海環球金融中心」が高さ492メートルで世界4位。101階建てで、商業店舗やホテル、オフィスが入る複合ビルで、高層階は展望台として多くの観光客を集めている。
■5年後には1千メートル超の超高層ビルが!?
だが、現在「世界一」のブルジュ・ハリファも、その座を守れるのは時間の問題とされる。さらに高い超高層ビルの計画が、同じ中東で予定されているためだ。
CTBUHによると、2019年の完成を目指し、現在建設が進むサウジアラビア・ジッダの超高層ビル「キングダム・タワー」は、高さ1千メートルという大台突破を計画。同国の王族系企業、キングダム・ホールディング・カンパニーが推進するプロジェクトで、建設費は46億サウジリヤル(約950億円)。167階建てで、マンションやホテル、オフィスが入居する複合ビルになる予定という。
このタワーには「マイル・タワー」との別名があり、実は当初は1マイル(約1600メートル)の高さを目指す計画だった。だが地盤調査などの結果、高さ1千メートルに変更。同様に1千メートルを超える超高層ビルの建設計画はこれまでも浮上したが、具体化には至っておらず、現状ではキングダム・タワーが5年後にも「世界一」となる見込みだ。
また、中国では高さ600~700メートル級の超高層ビル建設計画が目白押しで、少なくとも4カ所で計画が進行中。実現すれば、数年後には中国勢が世界の高層ビルランキングの上位を“独占”する。韓国も首都・ソウルにホテルやオフィスが入る複合ビル「ロッテ・ワールド・タワー」(高さ555メートル)の建設を進めており、2016年の完成を目指している。
一方、米国では01年の米同時中枢テロ事件の舞台となったニューヨークの「ワールド・トレード・センタービル」跡地に、「ワン・ワールド・トレード・センター(1WTC)」(同541メートル)を建設中。今年中に完成の見通しだ。
■日本で200メートル超は34カ所、世界のわずか4%
日本で超高層ビルが建ち始めたのは、1968(昭和43)年完成の「霞ケ関ビル」(東京都千代田区、高さ147メートル)からとされる。CTBUHによると、高さ200メートルを超える超高層ビルは世界に約840カ所あるが、日本では34カ所と全体のわずか4%程度だ。例えば関西では、200メートル超のビルは6カ所。あべのハルカスのほか、地方自治体の第3セクター破綻の象徴となった「りんくうゲートタワー」(高さ256メートル、大阪府泉佐野市)や現大阪府咲州庁舎の「ワールド・トレード・センター」(同、大阪市住之江区)、日本で最も高い高層マンション「ザ・北浜」(大阪市中央区)などだ。
日本ではなぜ、世界のように高さ500メートルを超えるようなスーパー超高層ビルの建設が進まないのか。日本列島は「世界の地震の約2割を占める地震大国」(住宅メーカー)という側面もあるが、大阪市がこれまで御堂筋沿いで行ってきたように、都市景観保全を目的に全国の各自治体が実施する「高さ規制」という政策もあるためだ。
航空法でも、旅客機の安全運航を最優先する狙いで、空港周辺に一定の高さの建物などの設置はできない。また、土地に対しどの位の建物を建てられるかを示す「容積率」も、ビルの高さを制約する一定の条件になる。
ただ、安倍晋三政権は3月中に地域選定を進める国家戦略特区で、建物の容積率の緩和をメニューのひとつとして盛り込む方針。東京などの大都市圏で規制が緩和され、超高層ビルが建てられる環境が整う可能性も出ている。
(西川博明)