6月16日から19日までの4日間、能勢射撃場で開催された西日本学生ライフル射撃選手権大会において、3年生のUKが女子3種目を制覇し三冠を達成した。
彼女との出会いは、高校2年生の夏。インターハイ最終日のファイナルだった。来年の受験者を獲得するため、広島に入っていたが、お目当ては3年のYSだった。
ARのファイナルの結果は、団体での悔しさをバネに、個人優勝したYSが、ピストルだけでなくライフルでも非凡な才能を持っていることを実証した形で幕を下ろした。
そんな中、同じ高校の1年後輩で、3位入賞した選手がいた。それがUKだった。
小柄な体格に似合わない、大きく構える姿勢と、淡々と撃つ射撃スタイルは、決して目立った存在ではなかった。
その後、高校選抜で5位に入賞、日韓大会に出場するも、その後大きな大会で、入賞から遠ざかってしまう。
私の中では、是非うちに来てもらいたいという思いが有った。ただそれは彼女自身がそれを望まなければ実現することはない。
大学に来てくれていた、高校の先輩からそれとなく話をしてもらっていたが、後は待つしかなかった。
夏が過ぎようかという時に、顧問の先生から連絡が入った。
「 本人が受験したいと言っています。」
私としては、待ちに待った連絡だったので、もちろんNOは無かった。
そして、本人に大学に来てもらって、初めて話をした。
「うん。大丈夫だ。」
私は確信した。
そこから、受験までの懸命の勉強が始まった。私の中で不思議と焦りは無かった。
そして、無事合格。狭き門であったが、彼女なら大丈夫だと思った感触は、間違いではなかった。
入学し、1年生から活躍を続ける。出る試合出る試合ファイナルに出場し、入賞をしていく。
それは、ローカルでもメジャー(全日本クラス)でも変わりなかった。
1年生の彼女の活躍があったからこそ、その年の全日本女子学生選手権の総合団体優勝に結びついたと思っている。
それだけ安定して結果を出し続けてくれた。
しかし、個人での優勝は無かった。
日本学生選抜では準優勝、 インカレは6位、JOCカップは3位、全日本選手権は7位。
関西の学生の大会でも準優勝止まりだった。
そんな彼女に私が掛けた言葉は、「シルバーコレクター」
非常に残酷な言い方だが、何とか優勝を勝ち取って欲しいという思いからだった。
しかし、過去に「シルバーコレクター」よりももっと残酷な「ブロンズコレクター」というニックネームをつけた選手がいた。
それは、UKの3年上の高校、大学の先輩であるAMだった。
AMは高校2年で国体優勝してから、数々の大会に出場し、入賞を果たす、しかしUK同様に優勝からは遠ざかっていた。
高3のインターハイ3位、大学1年のインカレ3位、全日本選抜4位。まさしくブロンズコレクターだった。
UKの実績は、AMと比較しても遜色ない。しかしAMとUKは体系も性格も違う。射撃のスタイルも異なっている。
UKはAMのように注目されることがほとんどなかった。
AMは3年生でその才能を開花させた。
日本学生選抜で3姿勢優勝。東京国体の3姿勢で優勝。インカレの伏射で優勝、3姿勢で準優勝。
この年、MPA指定され、ユニバーシアードにも出場している。
その後彼女は、ナショナルチームに入り、ワールドカップにも出場する選手と成長した。
持ち前の明るさと、人を惹きつける魅力、そして何よりも感謝する心を持ち、多くの仲間からのサポートを受けられる人間力を持っていることが、彼女が強くなれた要因ではなかっただろうか。
今年、UKは3年生となった。
そして、西日本学生に続いて、7月に行われた、日本学生選抜の3姿勢で初優勝を飾った。
AMと同じ道を歩もうとしている。
今のUKには、本来の実力に、「勝ち運」が宿っている。
「勝ち運」とは、他力本願な意味ではない。
「棚から牡丹餅」は、落ちてくる棚を探さない者には、絶対得られない。
日々の努力によって、落ちてくる棚を探し当てられた者だけが得られる「ご褒美」だから。
また、ただ努力するだけでも必ず得られるとは限らない。でも必ず落ちてくると信じて努力し続けることによって、引き寄せることはできると思う。
やみくもに努力をするのではなく、目標を立て、その目標に向かって、何をやるかを行動に落とし込み、そしてそれをやり切ることが、真の努力である。
もう、「シルバーコレクター」とは呼ばせない。強くなった彼女は、今年大きな飛躍を遂げることを確信している。
まだまだ世界との差がある。国内でもトップ選手をもっと脅かす選手になってもらいたい。そして超えて欲しい。
射手として、射撃の技術だけではなく、更に人間力を磨くことによって、多くのチャンスが得られるだろう。
彼女と初めて話をした時に感じた「大丈夫だ」という根拠は、「努力するという才能を持っている」というものだった。
UKが努力し続ける限り、無限の可能性が広がっている。そう信じて疑わない。