24日から26日まで、大阪市立大学で開催された高分子討論会に参加した。大学2年の時の部活の大会で訪れて以来の大阪、だったかもしれない。
新幹線もホテルも予約してくださった指導教員の優しさに甘え、先生と先輩の後ろを歩くだけでよかった3日間は楽だった。「大阪市立大学に行くなら地下鉄の方が安くて乗り換えが少ないですよ」などと野暮なことを言ってはいけない。静々と、ただ後ろを歩くのみ。
しかし……電車を乗り間違えたのは流石に指摘した。これも後ろを歩く者の務めか。大学ではなく、危うく奈良へいくところだった。(笑)
学会発表と聞くと、講演会場でパワーポイントを使って大観衆を前に研究を朗々と語り上げる姿を想像されるかもしれない。確かに「口頭発表」の場合はそれに近い状況がそこかしこの講義室で見られるが、大観衆と言うほどの入りでは決してない。
一方、自分は「口頭発表」ではなく「ポスター発表」。A0サイズのポスターを体育館に並べられた看板に飾り、通り過ぎつつも興味がありそうな人に対して説明する、というものだ。40分前後の担当時間内に来た人は3人。後方で聞いていた人も含めると、6~7人といったところか。大盛況だった。先輩の実験の結果の整理でしかない発表だったが、いい経験になったと思う。
高分子学会という名前の通り、高分子合成から物性に至るまで、研究対象の物も範囲も広い。知識が狭く浅いこともあるのだろうが、仮に自分が10年後も大学に残っていたとしても、他の研究者のポスターを見て内容が理解できるとは思わない。気管支から肺胞に張り巡らされる毛細血管の如く、高度に局在化・専門化された学問領域で名を馳せるというのは大変なことなのだと改めて思い知らされる。
こういうアカデミックな雰囲気は嫌いではないし、むしろ好きな方だと思うが、素人目に見ても(作ってどうするのよ)と思わずにいられないグラフトポリマーや星型ポリマーを見たり、座長が必死になって質問時間を埋める努力をする口頭発表を聞いたりすると、これでいいのか?とも思う。いったいどれほどのポリマーが合成され、クロロホルムに溶かされ、ハロゲン系廃液と共に捨てられているのだろう。知的好奇心という大義名分の影に研究者の道楽は隠れていないのか?などと、ホテルで考えていた。
学会2日目は大阪城観光。こういう羽伸ばしも悪くない。足を棒にして、ひーひー言いながら、3人で頑張って歩いてきた。大阪城を訪れる人はぜひ、「大阪・夏の陣」について予備知識を得ておいた方がいい。その方が楽しめる。間違いない。
つゆとをち つゆときへにし わかみかな
なにわの事も ゆめの又ゆめ
豊臣秀吉が死を前に詠んだ辞世の和歌。天下統一を果たし、朝鮮進出も目論んだ偉人が残す「ゆめの又ゆめ」の言葉の重さと言ったらない。
2日目の夜は居酒屋で大変おいしい料理を頂きながら、生中を空ける。極上の幸せの一時だった。
3日目は学会会場へも行かず、早々と名古屋に帰る。特急を使わずにのんびり帰ろうと思ったのはよいが、降りしきる雨の中、青山町とかいう山の中にある駅に放り出されるとは思っていなかった。飽きるほどの深緑と立ち込める霧が、迫力をもってその自然の悠久を伝えてくる。特急電車の窓越しには決して感じられない圧倒的な緑と水が、そこにはあった。
伊勢中川を越えて近鉄名古屋線に入ると、少しずつ建物が多くなる。雨も上がり、車内も賑やかになる。急行と鈍行を乗り継ぐのは時間がある時にしかできない贅沢だったのだろうか。特急を使わずに帰ろうと思うこともなくなるのだろうか。そうだとしても、あの青山町駅で、乗ってきた電車がホームから離れていくその後ろ姿は忘れないだろう。忘れたくはない。何となくそう思う。
……うたた寝をしながら研究室で資料作成に励んだ深夜、取れなかったの電話の代わりになるものは何だろう。目下当面の悩みを抱えつつ、帰ります。どうぞよい週末を。
……取れなくてごめん。
新幹線もホテルも予約してくださった指導教員の優しさに甘え、先生と先輩の後ろを歩くだけでよかった3日間は楽だった。「大阪市立大学に行くなら地下鉄の方が安くて乗り換えが少ないですよ」などと野暮なことを言ってはいけない。静々と、ただ後ろを歩くのみ。
しかし……電車を乗り間違えたのは流石に指摘した。これも後ろを歩く者の務めか。大学ではなく、危うく奈良へいくところだった。(笑)
学会発表と聞くと、講演会場でパワーポイントを使って大観衆を前に研究を朗々と語り上げる姿を想像されるかもしれない。確かに「口頭発表」の場合はそれに近い状況がそこかしこの講義室で見られるが、大観衆と言うほどの入りでは決してない。
一方、自分は「口頭発表」ではなく「ポスター発表」。A0サイズのポスターを体育館に並べられた看板に飾り、通り過ぎつつも興味がありそうな人に対して説明する、というものだ。40分前後の担当時間内に来た人は3人。後方で聞いていた人も含めると、6~7人といったところか。大盛況だった。先輩の実験の結果の整理でしかない発表だったが、いい経験になったと思う。
高分子学会という名前の通り、高分子合成から物性に至るまで、研究対象の物も範囲も広い。知識が狭く浅いこともあるのだろうが、仮に自分が10年後も大学に残っていたとしても、他の研究者のポスターを見て内容が理解できるとは思わない。気管支から肺胞に張り巡らされる毛細血管の如く、高度に局在化・専門化された学問領域で名を馳せるというのは大変なことなのだと改めて思い知らされる。
こういうアカデミックな雰囲気は嫌いではないし、むしろ好きな方だと思うが、素人目に見ても(作ってどうするのよ)と思わずにいられないグラフトポリマーや星型ポリマーを見たり、座長が必死になって質問時間を埋める努力をする口頭発表を聞いたりすると、これでいいのか?とも思う。いったいどれほどのポリマーが合成され、クロロホルムに溶かされ、ハロゲン系廃液と共に捨てられているのだろう。知的好奇心という大義名分の影に研究者の道楽は隠れていないのか?などと、ホテルで考えていた。
学会2日目は大阪城観光。こういう羽伸ばしも悪くない。足を棒にして、ひーひー言いながら、3人で頑張って歩いてきた。大阪城を訪れる人はぜひ、「大阪・夏の陣」について予備知識を得ておいた方がいい。その方が楽しめる。間違いない。
つゆとをち つゆときへにし わかみかな
なにわの事も ゆめの又ゆめ
豊臣秀吉が死を前に詠んだ辞世の和歌。天下統一を果たし、朝鮮進出も目論んだ偉人が残す「ゆめの又ゆめ」の言葉の重さと言ったらない。
2日目の夜は居酒屋で大変おいしい料理を頂きながら、生中を空ける。極上の幸せの一時だった。
3日目は学会会場へも行かず、早々と名古屋に帰る。特急を使わずにのんびり帰ろうと思ったのはよいが、降りしきる雨の中、青山町とかいう山の中にある駅に放り出されるとは思っていなかった。飽きるほどの深緑と立ち込める霧が、迫力をもってその自然の悠久を伝えてくる。特急電車の窓越しには決して感じられない圧倒的な緑と水が、そこにはあった。
伊勢中川を越えて近鉄名古屋線に入ると、少しずつ建物が多くなる。雨も上がり、車内も賑やかになる。急行と鈍行を乗り継ぐのは時間がある時にしかできない贅沢だったのだろうか。特急を使わずに帰ろうと思うこともなくなるのだろうか。そうだとしても、あの青山町駅で、乗ってきた電車がホームから離れていくその後ろ姿は忘れないだろう。忘れたくはない。何となくそう思う。
……うたた寝をしながら研究室で資料作成に励んだ深夜、取れなかったの電話の代わりになるものは何だろう。目下当面の悩みを抱えつつ、帰ります。どうぞよい週末を。
……取れなくてごめん。