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さっきも言ったけどここは見渡すかぎり山、山、山だった。塔はおろか建造物ひとつ見えない。
「地殻変動や長年の風雨にさらされ、崩れたんですよ。崩れた遺跡はカ・ディンギル一帯に散らばり、木に侵食されたり沼に落ちたりしたそうですが、面白いことに遺跡にかけられた魔法はそのままなんです」
「魔法って?」
思わず聞き返せば、リーダーらしきおじさんは黄ばんで皺だらけの見取り図を僕たちに見せてくれた。
「『鍵』の魔法です。全部で100階層ある迷宮に近道はなく、上の階へ行くためには下の階で扉を開けるヒントを見つけなければなりません。今もそうで、下の階で解錠しなければ、たとえ上の階を発見できても中には入れないということだそうです」
「なんて面倒なっ!」というアダムの素直すぎる感想に、おじさんは首を振った。
「いいえ、実は先人たちによる長年の探険の結果、最上階のひとつ下の階までは解錠されています。かくいう私も五十年前から遺跡の発掘を続け、3階分の解錠に成功しています」
「ということは、最上階のひとつ下の階の鍵を開けたのはあなたということですか?」
「ええ、そうです。これから99階へ行き、遺跡を探索して鍵を開け、最上階部分を探して秘宝を手にいれるつもりです。私は今回の遠征で終わりにしたいと思っているんです。彼らにずっと無理を言ってきましたから」
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