徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

理の月、旧世と懐古の町にて 4

2019-12-13 19:04:52 | 小説








 本文詳細↓



 「何を無様に固まっておるか。精霊とは皆このようなものよ」
 「いやでも、ヘタに動いて蹴ってしまったら申し訳ないじゃないか」
 頭上のアダムに向かってそう答えたら、返ってきたのは鈴が弾けるような笑い声だった。
 『蹴ったら申し訳ないですって』
 『かわいいわあ』
 『うふふ……』
 目を白黒させていると、アダムに頭を叩かれた。
 「おぬしはどこまで阿呆なのだ、トルル。実体を持たぬ精霊を蹴る心配など、見当違いも甚だしいことよ」
 そういえば故郷の町で妖精たちと一緒に遊んだことはあっても、精霊に会うのは初めてだった。だから接し方が分からずにいるといきなり、頭の上から緑の光が落ちてきた。楽しそうな笑い声を伴った緑の光が、何度も僕の身体を包んでは離れることを繰り返していた。
 『ふふっ、ずいぶん初心で素直な子。気に入ったわ』
 『私もよ。いいわ、話を聞いてあげる』
 『何が知りたいの? 蜜詰めの惚れ薬の作り方? 炭をダイヤへ変える方法?』
 『なんでも教えてあげる。だって私たちは、全ての大地と空にあるものだから』
 口から飛び出たお礼の声は、自分でも驚くぐらいうわずっていた。
 そして語った。忘れられない、蒼き月夜の想い出を。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする