徒然日誌(旧:1日1コラ)

1日1枚画像を作成して投稿するつもりのブログ、改め、一日一つの雑学を報告するつもりのブログ。

幕間 運命の席は夢の中を転がる−ケース7.付喪神の場合

2019-12-08 11:40:30 | 小説









 本文詳細↓



 (無貌の店員、壁際の席へ案内する)
 「失礼します。お相手の方をお連れしました」
 「んん? 人間? 人間やないか! 珍しいなあ、ウチここで人間見るん初めてやわ」
 (手足の生えた鼓(つづみ)、拍手で迎え入れる)
 「それでは只今から相席開始です。ごゆっくり」
 (無貌の店員、一礼して去る)
 「ちゃんと挨拶できて、礼儀正しいなあ。うん、それでこそ人間や。こちらこそ、よろしゅう。ほなまあとりあえず、乾杯からいこか。
 ……そんなチラチラ見てんと、聞きたいことあるんやったらなんでも聞いてきぃや。ここはそういうとこなんやし。まあゆうても、口もないのにどうやって飲んでしゃべっとるとかやろうけど。
 ……そらよぉ言われるからなあ、分かるで。せやけど、そんなんのっぺらぼうやって普通に飲み食いしよるし、手も足もないダルマが動き回るなんてこともザラなんやから、気にしたら負けやで。ああ、せや。自己紹介がまだやったな、堪忍堪忍。ウチは付喪神の鼓丸や。
 ……あんた、これまでに付喪神に会うたことあるか?
 ……町の家を転々として悪戯をしかける急須ぅ? そらけったいな奴と会うてんなあ! アッハッハ!
 ……ハー、笑(わろ)た笑(わろ)た。ところであんた、今日はどんなんと相席しとったんや? 
 ……スフィンクスって、あのめちゃくちゃごっつい獅身人面か? さっき飲みもん取りに行こうとしたら、踏みつぶされかけたで。しかも謝りもせんし、どっこに目ぇつけとんねん! おまけに声も五月蝿いやっちゃやし。あんなんと何を話しとったんや?
 ……はあ、息もつかせぬ謎かけの連打。そら疲れるわな。ご苦労さん。
 ……けど謎かけなあ。ウチも昔、ギョロ目の能面爺とか単衣(ひとえ)の女房さんとか、顔なじみとようやったわ。
 ……たとえばやな、『子子子子子子子子子子子子、と書いてなんと読む?』みたいな。
 ……正解は、『ねこのここねこ、ししのここじし』や。おもろいやろ? あとは、『紅の糸が腐って虫がつくと何になる?』とかどうや?
 ……これはちょっと難(むず)かったか? 正解は『虹』や。紅っちゅー字の糸が腐ってなくなったとこに虫がつくわけやからな」
 (鼓の付喪神、その後も謎かけや御伽草子を自分を打って拍子を取りながら語った)
 「失礼致します。只今順番に席替えのご案内を致しております。まだ相席していらっしゃらないお客様もいらっしゃいますし、これを機会に様々な方との交流はいかがでしょうか」
 「まあ今日は珍しくあんまり客も入ってへんみたいやし、おる客で卓回さなあかんわな。ウチはかまへんで。
 ……よし、ほなそういうことで。こっちこそ楽しかったで。ありがとうな」
 「恐れ入ります。それでは付喪神のお客様はこちらへ」



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