医薬品も、ワクチンや抗ウイルス剤がつくれず、厚労省は自動でPCR検査ができる「プール」方式さえ使えません。その結果、医薬品の貿易収支(2022年度)は4・6兆円の赤字です。目を覆いたくなるのは、日本の製薬企業がほとんど外資に乗っ取られつつあり、かつ研究所が次々と海外に移っていることです。
また、EV化が進んでいる中で、トヨタやホンダがテスラやBYDに非常に遅れを取っています。2026年にトヨタとホンダが電気自動車を販売するとき、それが空振りになると、自動車産業は決定的な危機を迎えます。
三菱ふそうと日野自動車の経営統合は、BYDのバスのEV化と自動運転に対抗しようとする意図ですが、これは三菱ふそうの親会社であるダイムラーから持ちかけられています。
一方、日野自動車の親会社であるトヨタは、まだFCEV(燃料電池自動車)で水素にこだわっている。本当の意味で技術の遅れを取り戻す気があるのか、(日本の)経常収支が赤字になる前に間に合うのか不安になります。
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要するに、安倍さんがなぜアベノミクスをやりたかったかというと、後年度負担を利用してアメリカ製兵器の爆買いをしたかったからです。なし崩し的に防衛費を増やして既成事実化してしまえば、事実上なんでもできてしまう。そこへ取ってつけたように、台湾有事や敵基地攻撃能力、防衛費はGDPの2%がNATOの常識であるといって、壁を突破せざるを得なくなるように仕向けたわけです。
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仮に43兆円の防衛予算が必要だとして、その財源はどうするのか。国債を出すわけにいかない。増税するのもいやだ。従来の予算を見直して、財政改革で引っ張り出しますといって出したお金が、元をたどると国債であったという話です。
余らせた基金の元をたどっていくと予備費で、その前は赤字国債であるというまやかしです。
マネーロンダリングで、結局は国債が防衛費に回っている。ある意味で国民を欺いて、見えなくしているわけです。赤字国債で防衛費を捻出するというと、「戦争と同じで問題ですよね」ということになります。増税は国民の負担になるのでいやだという話になるので、このようなごまかしを駆使するわけです。
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国債のマネーロンダリングというのは、まずは赤字国債を発行して、そのお金で予備費を膨らませて余らせるという手法です。2年ほど前に大きな問題になりました。要するに、財源は赤字国債ですが、それで予備費をたくさん積む。それは国会の審議を経ずに、政府の判断だけで使えるお金で、普通は災害が起きたときなどに当座のお金を用意しておくというものですが、日本の場合は毎年10兆円規模の予備費をつくってしまったということです。
東日本大震災の時、2012年の予備費でさえ2兆円です。重複もありますが、これが20年から22年度は毎年約10兆円で30兆円にも膨らんでいます。しかも、日経新聞などの報道では、新型コロナ対策の予備費12兆円のうち9割以上が使途不明で何に使ったのかわからないわけです。それを異常に膨らませてお金を余らせ、決算剰余金という形で防衛費を捻出しようとしています。
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いくつかのメディアが、予備費についてそれなりに検証しています。すでに財政規律は崩壊しているといわれていますが、会計検査院の2021年度の決算報告を見ると、新型コロナ18事業のうち、法律違反があるのが10事業、未執行が約18兆円です。約107兆円の予算(2021年度)全体で考えると、2割弱を使っていないのは異常です。
そういうものを予備費で設定しているのはおかしい。そのうち、実際に繰り越しが13兆円あり、不要で国庫に返納が4・7兆円あると会計検査院はいっているわけです。
これに加えて、2022年4月22日の日経新聞では、新型コロナ予備費12兆円のうち、9割以上がどのように使われたのか、具体的な使途が特定できないと書いてあります。つまり、まったくチェックがなかったということです。同年12月1日付けの日経新聞では、13ある特別会計が毎年平均で8000億円程度の余剰金を常に持っているとも書いてある。
さらに、2023年3月10日の東京新聞では、12省庁で176の基金があるうち27の基金がまったくの休眠状態で、この基金の残高が約13兆円弱、つまりお金がそこにたまり込んで、省庁が勝手に使っていると報じています。
へそくりですね。そうすると、へそくりを吐き出せという話になりますが、結局、それは防衛予算に貢ぐという形になっている。
なんの目的で基金をつくり、なんのために予備費があるのか、、、本来の財政チェックがまったく効いてないのが今の状態だということです。本当に、国家経営として大問題ですね。そういうことを許しているのも、ずるずると国債が発行できるような金融緩和が長く続いたからでしょう。いってみれば、アベノミクスがそういう仕組みをつくって、規律がない財政運営ができるようにしているということです。規律を締めつけるとズルができなくなってしまう。
アベノミクスで、なし崩し的な後年度負担で防衛費を増やしていって、ウクライナ戦争や台湾有事をあとづけの名目にし、臨時軍事費特別会計のようなやり方はいけないといいながら、形を変えて似たようなことをしています。このままでは、取り返しのつかない事態を招くと思います。
そういうことしていて、行き着く先はどこになるのか。
国内的なリスクと国際的なリスク、大きく分けて2つの終着点があると思います。維新のような新自由主義はまったく期待できないとして、このまま岸田・植田コンビがアベノ
ミクスを継承する大規模金融緩和の路線を進めたとき、はたしてどんな結末が待っているのか。破局、あるいは破綻への道筋を考えてみましょう。
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国債を発行して防衛費をどんどん積み増しているのに、日本がこれから取り組まなければならない問題はそこではなく、少子化であり国民生活を充実させること、かつ防災体制をつくることです。そこにお金が回っていないのは残念です。
ナオミ・クラインの話ではないですが、新型コロナという危機便乗型の「ショック・ドクトリン」のようなやり方です。予備費はもともと災害やその他の非常時に、国会のチェックがなくても緊急で使うことができるお金です。未曾有の被害をもたらした東日本大震災(2011年)のような非常事態のときでさえ、その翌年、2012年度の予備費は2兆円でした。
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歯止めなしのなし崩し的な防衛費拡大という方針の決め方が、今の日本を象徴していると思っています。一部の有識者会合が勝手に決めて、それで安保三文書を書き換えてしまう。先制攻撃とはなんなのか、どういう防衛力が必要なのか、どういう財源が必要なのかといったことについて、国会でまったくチェックしていません。ですから、防衛省のお抱えで都合のいいメンバーを集めて勝手に方針を決め、しかも財源はほとんどチェックがないままやっていく。本当に恐ろしいことだと思います。
たしかに、「防衛費は国債で出していません。せいぜい建設国債だけです」といいますが、予備費から充当しています。予備費とはなにかというと、国債で出しています。
結局、回り回って国債で防衛費を支えているのと同じです。
メディアは、2022年度の税収が71兆円と過去最大になり、そこから決算剰余金が出ているとウソをついています。ノンアフェクタシオンの予算原則で個別の税は個別の支出項目と結びついていません。そもそもプライマリーバランスさえ達成されていないのに、決算剰余金など出るはずがないのです。22年度は予備費が11・76兆円もあり、予算を計上されながら使われなかった不要額も11・3兆円で過去最大になっています。決算剰余金2・6兆円がここから出ているのは明らかです。
インフレ下で139兆円(補正予算を含む)の巨額予算を組めば税収が増えるのは当然です。しかし、税収だけでは予算の半分しか財源を調達できません。決算剰余金は赤字国債のあとに出てくるものを前取りしているだけなので、結局、その中には赤字国債がかなり含まれています。ごまかしです。
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赤字国債を出してはいけないということは戦争の教訓で、これだけはきちんと守って健全財政にしようといっていましたが、自分のところで赤字国債をつくって、毎年のように「臨時だ」「一時的だ」ということをやりながら常態化し、それでも足りないので基金や予備費をつくってお金を調達することがまかり通っている。気がついてみれば、ハイパーインフレに近い状態に向かって突っ込んでいる。そういう方向に踏み込んできたということですね。
国会のチェックが利かないという意味では、外国為替特別会計もそうですし、それから財政投融資も同じです。そういうところにかなりお金をつぎ込んでいこうとしています。
これらを余らせて財源をつくり出す。国会のチェックが利かないお金で防衛費を増大させていくという路線は、国のあり方として非常に危ないと思います。
戦争もしていないのに、こんなに防衛費が必要なのかと思いますが、、、それだけではないのですね。そういう形で財政を歪めている。チェック不要のお金をどんどんつくって、それは経済的破局を食い止めたり、あるいは少子化や産業政策のためには使わない。いわば究極の国家的無駄遣いをしているということですから、まさに破局を加速しているとしかいいようがありません。
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防衛財源の内訳を見ると、43兆円という金額は突然、上から降ってきたわけです。このうちの、いわゆる中期防衛力整備計画の5年分を引いた残りに17兆円をどう
調達するかというのが、今回の防衛財源確保法案です。
その中身を見ると、防衛力強化資金が4・6兆円です。外国為替特別会計(外為特会)から3・1兆円出すといいますが、先ほどの話のように2022年度の貿易赤字が21・7兆円で、もし経常赤字となった時に、このような形で外為特会の無駄遣いをずっと続けて大丈夫ですか? という話です。
日本は黒字国なので大丈夫というときだったらまだしも、それが赤字国になるときに外為特会の目的外使用をして、自国の通貨を安定させるためのお金を浪費してしまっていいのかということですね。
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歳出から見ると、後年度負担があります。これは、武器を購入したとき、単年度では決算できないので、分割して支払うというものです。後年度負担は、実は安倍さんがやってきた政策です。2013年度の段階では3兆円程度でしたが、2022年度段階では6兆円近くになっています。GDP1%の防衛費が守れなくなってきたのはなぜかというと、後年度負担が膨らんで次々とツケが回ってくるからです。
防衛費の増大は安倍政権のコア政策の一つで、防衛費をじわじわと増やしていく。しかも、国会のチェックの利かないお金が背後にあり、なおかつ後年度負担でなし崩し的に
拡大していきます。
実はウクライナ戦争や台湾有事は、取ってつけたあとづけの理由であり、2013年からこの路線は決まっていました。これが、アベノミクスの正体です。
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わけのわからない偵察機やさまざまなクズのような兵器をたくさん買って、そのあとの財政が膨らむことがわかっていながら、そうなれば防衛費のGDP1%枠が自然に破れるといったことだったわけですね。
台湾有事もあとづけの話で、実際はすでにその前から武器などを買っています。アメリカがそこまで要求はしていなかったのに、喜んで2027年度には防衛費をGDP2%に増額すると決めて、バイデン大統領が大歓迎した。
しかも、ミサイルはアメリカがつくるはずだった計画を日本が肩代わりする。このようなことをしている財政状況ではないと思います。
少子化問題もあり、産業政策は立ち行かなくなっていますし、大学ファンドなどはお金儲けで研究費を出そうとしますが、だいたい破綻します。しかも、きちんとした公正なルールがありません。ですから、教育や福祉に使わなければならないお金が、すべて防衛費の年10兆円に消えていくわけです。
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一般の人にどういう分野に予算を充てるべきかアンケートしたことがありますが、上位に上がったのは子育て、教育、防災対策です。ですが、実際にやっているのは防衛費増額です。アンケートで防衛費を挙げた人はゼロだったのに、必要ではないと考えている分野に予算がついてしまった。それがきちんと議論されてないところが、最大の問題です。
しかも、これが後々、日本経済と財政に深刻な影響を及ぼすわけです。
結局、経済が行き詰まったときに軍事や戦争、ナショナリズムに突っ込み始めるのは危険な兆候で、これに歯止めをかけなければいけません。「なにかおかしい」と思って漠然とした危機感を持っている人はいますが、具体的にそれがどういうものなのかがつかめていないのです。
「新しい資本主義」とはとどのつまり「新しい戦前」なので、戦争の前になにが起きたかということをもう一度振り返ってみると、1936年に二・二六事件が起きて、テロの時代になります。1937年には日中戦争が始まるのを契機にして、臨時軍事費特別会計ができるわけです。臨時なので、戦争が終わる1945年まで一度も決算をせず、ずっと国債で財源を調達していくうちに負債が大きく膨らんで、第二次大戦が終わったあとにハイパーインフレ(物価が短期間で数倍になるなど急激にインフレになること。「悪いインフレ」)になってしまった。
非常時の劇薬だといっているのに、劇薬がいつの間にか日常化してきた。まさに、アベノミクスの金融不安もそうです。気がついたときにはやめられなくなって、最後は破綻への道が待っています。
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一見、それを防ぐような形で問題を組み立てながらも、事実上同じように歯止めが利かないような処置を予備費や基金を使ってやっているのが現在です。戦前の臨時軍事費特別会計と非常に状況が似てきているのを危惧しています。
予備費や基金は、マネーロンダリングの手法だと指摘されています。こういう事態は戦前も同じで、誰も気がつきません。いつの間にか歯止めが利かなくなっているので、引き返せないのです。今はそれに近い状態に入り込んできている。原発と同じですが防衛費も、赤字国債で防衛費を膨らませてはいけないという太平洋戦争の教訓を形式的に踏まえながら、迂回して国会のチェックがまったく利かない予備費や基金を大きく膨らませ、余らせている。ここから決算剰余金3・5兆円や歳出改革3兆円を捻出して、どんどん防衛費を増長させているのです。
「岸田自民で日本が瓦解する日 アメリカ、中国、欧州のはざまで閉塞する日本の活路」徳間書店より抜粋
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ブラジル・レアル、ロシア・ルーブル、インド・ルピー、中国・人民元、南アフリカ・ランド──。これら5通貨にはある共通点がある。これら新興5カ国はいずれも、国名の頭文字を冠した「BRICS」と呼ぶグループを形成する。そして、通貨単位の頭文字がいずれも「R」で始まっている(人民元の略称は「RMB」)。BRICSでは今、この「R5」で構成する新通貨の構想が議論されている、、、
6カ国が新規加盟
国内総生産(GDP)で米国を猛追する中国、人口世界一となるインド、資源大国のロシアなど、世界経済への影響力を年々強めるBRICSだが、今後はさらに大きくなりそうだ。今年のBRICSサミットでは、アルゼンチン、サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、エチオピアの6カ国が来年1月に加わることが決定した。
一大産油国のサウジとイランは長く中東の覇権を争い、16年以降は断交していたが、中国の仲介によって今年3月、外交関係を正常化。BRICSにも同時加盟を果たした。UAEも世界有数の産油国に名を連ねる。アルゼンチンはトウモロコシなど穀物の輸出大国。エジプトやエチオピアはアフリカ大陸の人口大国で、エチオピアにはアフリカ連合(AU)の本部がある。
どのような基準で6カ国の新規加盟が決まったのかは明らかではない。ただ、国際政治が専門の福富満久・一橋大学大学院教授は、6カ国が新たに加わったBRICSについて、「国際政治のルール設定や貿易の取り決め、紛争処理の介入まで含めて、先進国がこれまで『大国の論理』で主導してきた。拡大BRICSはその対抗軸として、国際社会のルール作りを進めるという意思が原動力になっている」と指摘する。
BRICSは米ゴールドマン・サックスが01年、リポートの中で高い成長性が見込める国としてブラジル、ロシア、インド、中国を総称して「BRICs」と呼んだのが始まりだ。外相会合などを持つ緩やかな集まりにすぎなかったが、09年に初のサミットを開催。10年には南アが加わって5カ国体制となり、BRICSと呼ばれるようになった。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20231024/se1/00m/020/049000c
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精神医療の「闇」に迫る 日本経済新聞 2022年4月30日
日本で精神疾患により医療機関にかかっている患者は400万人を超える。だが現場でどんなことが行われているかはほとんど表に出ない。人権侵害とされるような行為であればなおさらだ。本書は3人の記者が丁寧な取材を重ね、精神医療の「深い闇」を浮き彫りしたルポルタージュである。
冒頭のエピソードからして衝撃的だ。4 年近く閉鎖病棟に入院させられていた42歳の女性。 この間子どもにも会えず、主治医は「社会的制裁だ」と言い放つ。「刑務所よりひどい」という言葉がうなずける。力ずくで自宅から連れだして病院に搬送する民間業者。薬漬けにさせられた末に、自死した若い男性......。
これが21世紀の光景かと、にわかには信じがたい事例が患者や家族の証言 を交え次々と明らかにされる。日本の現状が国際的に異常であることも浮き彫りにする。
医師の裁量で本人の意思に関係なく強制入院させられる「医療保護入院」制度の問題点を本書は指摘する。国や自治体も実態を認識しながら、放置あるいは利用してきた。
背景には精神医療に対する社会の無関心もあるのだろう。本書を読み、「このままでいい」と思う人はいないはずだ。我が事として考える契機になる一冊である。(東洋経済新報社・1760 円)
『ルポ・収容所列島』風間直樹・井艸恵美・辻麻梨子著
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「どうして中国にはこんなにカネがあるのか」。これは多くの人から受ける質問である。その答えはひとつではないが、最も大きな理由は、国家そのものの仕組みの違い、中でも土地に関する制度の違いにある。
中国の土地は事実上、すべて国家のものである。つまり国や地方政府は、いわば全土の大地主であり、その土地の「使用権」を売ることで莫大な利益を上げてきた。あらゆる権能を手にした「一党専政」の政府が自ら不動産デベロッパーになったのと同じで、儲からないはずがない。いわば無尽蔵のカネが湧いてくる「打ち出の小槌」を手にしたようなものだ。
その利益で中国政府は立派な高速道路や鉄道網などのインフラを造り、それらをテコにもう一段、経済を成長させ、さらなる土地の値上がりが実現する。そういうサイクルを実現し、成長してきたのが中国である。
しかし、広い中国とはいえ、土地は詰まるところ有限である。切り売りには必ず終わりが来る。過去20数年、全国各地で都市化は急速に進展し、政府が高い価値を付けて売れる土地はもうあまり残っていない。GDP押し上げの原動力になってきた「土地を中核にした、新たなおカネを生み出すサイクル」は消えつつある。
・・・
前述したように、土地の売却益に依存した成長は「1回限り」の有限のもので、いつかは終わる。これを前提に組み立てられた仕組みは、どこかで壊さなければならない。しかし、いわば「好きなだけおカネが生まれる仕組み」に慣れた者が、それを変えるのは苦しいことだ。おまけに不動産の世界には、どこでも権力と利権が深
く絡み合っている。
中国の「普通の人々」の感覚でいえば、政府の執政に対する信頼感はまだ高く、社会システムが崩壊するような状況にあるわけではない。しかし今後、これまでのような投資主導の粗放な量的拡大は不可能で、中国でもコツコツと努力して生産性を上げ、付加価値の高い商品やサービスを生み出して成長していくしか道はない。それは簡単なことではない。
2022年、中国の人口は革命後の混乱期以来、61年ぶりに減少に転じた。奇しくもその同じ年、地方政府の土地販売収益が大きく減少した。タイミングの一致は偶然にしても、中国をめぐる何か大きな動きがピークを超えたことを感じさせる。
https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2023092501/index.html
消滅する中国政府の「打ち出の小槌」 GDP拡大を支えた「土地財政」が終わる時
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ガザ・いま 石川逸子 2009年
ガザ いま 通学途上の子どもたちは 瓦礫の下敷きに
ガザ いま 窓ガラスを破られた暗いアパートで ひとびとは凍え
ガザ いま イスラーム大学の校舎は崩れ落ち 病院もねらわれ
ガザ いま 消防署が国連事務所が 難民キャンプの警察署が 爆撃され
ガザ いま 救急車も炎上し 野菜市場は空爆され
ガザ そのひとたちはなにをした
(先祖伝来の土地を追われ 逃れてきただけ)
ガザ そのひとたちはなにをした
(入植者に四〇%の土地も奪われ ひしめき暮らしているだけ)
ガザ そのひとたちはなにをした
(出口・入口をふさがれ 袋のネズミにされているだけ)
ガザ そのひとたちはなにをした
(道路もおりおり封鎖され 仕事にも学校にも行けないだけ)
ガザ いま その地に イスラエル機は無差別爆撃をおこない
ガザ いま その地に イスラエル戦艦はたえまなく砲撃をくわえ
ガザ いま その地に イスラエル戦車はわがもの顔に進撃し
ガザ いま アメリカ議会は そのイスラエルを支持し
ガザ いま その地で 夜もひとびとは逃げまどい
ガザ いま その地で もがきながら息絶えた ひとびと
ガザ いま その地で 両腕をもがれた 子どもたち
ガザ いま その地で 葬列はたえまなく
ガザ ガザ ガザ・・
ガザ その地はいま 水も電気も絶えかけ 食糧も危うく
ガザ その地でいま ながれ ながれつづける 無辜の血
ガザ・・・ガザ・・
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「今回のハマスによるイスラエル攻撃において、イスラエルは過去半世紀で最大の打撃を受けた。インテリジェンス、軍事作戦、政治の三つの面でイスラエルは深刻な過ちを犯した。インテリジェンスに関してモサドを含む情報機関は、今回のハマスの攻撃に関する情報を全く入手できなかった。これは言い訳ができない深刻な失態である。イスラエル軍は、ハマスの攻撃を初動において鎮圧することが出来なかった。イスラエル軍の機動力が劣化していることを示す事例だ。政治的には、ネタニヤフ首相への権力集中と、同首相が宗教右派勢力に過剰に依存し、パレスチナとの緊張をイスラエルの安全保障上の脅威をもたらすところまで高めてしまった責任がある」
「イスラエル軍がハマスを軍事的に制圧する力を十分に持っていることについては疑いの余地がない。
この戦争にイスラエルが敗れることはないが、これだけの犠牲をもたらしたことについてインテリジェンス機関、軍、政治のそれぞれが責任を負わなくてはならない。
現時点で最も注意しなくてはならないのは北部国境地帯の動静である。レバノンのヒズボラが本格的な軍事攻勢を始めた場合、軍は二正面作戦を余儀なくされ、国民の犠牲が飛躍的に増える」
(元モサド幹部の発言、テルアビブ時間10月8日11時40分、佐藤優氏による記載@AERA)
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