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新井恵理那アナの「グッド!モーニング」降板騒動を元テレビ朝日法務部長が解説 8年出演したのに「産休→フェードアウト」は寂しすぎる
西脇 亨輔 によるストーリー
写真は記事とは別
正直、古巣のテレビ朝日について書くのは気が重い。また私がテレ朝のアナウンス部にいたのは10年以上前で、新井恵理那さんとは全く面識がない。
ただ彼女が「グッド!モーニング」を降板する経緯を見て、あることを考えさせられて筆をとった。
女性出演者の産休・育休からの復帰は、テレビにとって大きな問題の1つだからだ。
テレビ朝日系の朝の情報番組「グッド!モーニング」のメインMCで、昨年6月末から産休に入っていたフリーアナウンサーの新井恵理那さんが、3月6日までに自身のインスタグラムに長文を投稿し、番組降板の意向を明らかにした。
「番組側は彼女の存在をフェードアウトさせる予定だった」?
コーナー担当を含めると8年間出演した番組から降板することについて「わたしはわたしで、新しい働き方を探っていきたいと思うに至りました」とする一方で、こうした思いも吐露していた。
「昨年秋、わたしは街で女の子に声をかけられました。毎朝見ていたので応援してます、いつ戻ってくるんですか? 待ってます、と。すごく、すごく、嬉しかったです」
「道は分かれますが、可愛い視聴者さんをがっかりさせないためにも、わたしも頑張ります」といった思いも書かれていた。
この投稿が波紋を呼び、NEWSポストセブンは「【惜別の長文投稿に困惑】新井恵理那アナ『グッド!モーニング』降板 番組関係者が明かす内情『完全に番組側の意向です』」と題する記事を3月10日に掲載した。
その中で「番組側は彼女の存在をフェードアウトさせる予定だった」ことが報じられ、「番組の公式ホームページに掲載されていた『産休中』という注釈のついた新井さんの写真を削除するのみの対応を考えていたそうです」という番組関係者の話が紹介されている。
確かに新井さんのインスタ投稿直後には、番組ホームページを確認すると新井さんの写真が出演者紹介の最上段にあり「(産休中)」と書かれていた。
ところが4日後の報道が出てから再度見てみると、もう新井さんの写真は番組ホームページからなくなっていた。
一連の経緯を振り返って気になるのは、新井さんの降板について番組側から何も公式コメントが発表されていない点だ。8か月前から新井さんが番組に出演しなくなったのは「産休」という“お休み”のはずだった。しかし公式発表もないままに、ホームページからいつの間にか存在がなくなっている。
実は産休中の女性出演者が、いつの間にか降板になっているケースはこれまでも繰り返されてきた。私自身が過去に出演していた情報番組でも、女性出演者が最後のスタジオ出演で「産休後は元気に帰ってきてくださいね」と声を掛けられたきり、いつ帰ってくるのだろうと思っているままに数年が経ち、そのまま番組自体がなくなって結局戻ってこなかったケースを経験したことがある。
局アナの場合は会社員として守られているので他番組に異動してまた頑張ることもできるが、フリーのアナウンサーだと本当にただ仕事を失ってしまうことになる。
これでは誰も安心して産休を取れなくなってしまう
それでなくともアナウンサーの競争は厳しく、限られた番組出演枠を争う立場にある。2016年には、フリーアナウンサーの高島彩さんが第二子出産後わずか1か月で番組に戻り「スピード復帰」と驚かれたこともあったが、そうしないと番組の仕事が守れないという危機感があったのかもしれない。
しかし「産休」の後にきちんとした説明もなくなし崩し的に降板するケースが多発する現状は健全な姿とは思えない。それでは誰も安心して産休を取れなくなってしまう。
もちろん、新井さんが産休中に色々考え自分から降板を望んだということなら尊重されるべきだが、そうだとしても番組は公式に新井さんの降板を発表し、その中で新井さんのコメントなども紹介しつつ、これまでの出演へのねぎらいの言葉をかけて区切りをつけるのが自然だろう。
新井さんだけが降板について発言、番組側はコメントなし
今回のように、新井さんだけが降板について発言し、番組側はコメントなく静かにホームページの画像だけ消去するのは出演者を大事にしていないと思われてもおかしくない。
番組の内部で実際に何があったかはわからないが、新井さんを巡っては昨年4月16日の結婚発表後、翌朝の「グッド!モーニング」番組内で自身の結婚のニュースを長時間にわたって伝えて一部から批判されたとも報じられたため、このことが遠因だった可能性はある(ただこれは新井さんではなく、番組演出側の問題だと思う)。
また昨今の番組制作費削減も新井さん降板の理由の1つであろう。今年2月に発表されたテレビ朝日ホールディングスの第3四半期決算ではテレビ放送事業の営業利益は前年同期比約45%減となっており、出演料が発生するフリーの出演者を削減して局アナに変える動きが出るのは自然な成り行きだ。
出演者に降板を告げるのはとても大変な作業なので、産休中に降板という形で出演者を切り替えるのは、番組側にとってみれば「合理的な方法」だったのかもしれない。
とはいえテレビは公の電波を預かって放送する以上、その価値観を世に伝える姿勢が必要だ。細かな表現の規制よりも、女性が出産によって仕事を失わ「ない」という姿勢を示すことこそが真の意味でのテレビの「コンプライアンス」であろう。
たとえば同じテレビ朝日でも、「激レアさんを連れてきた。」では、産休・育休中の弘中綾香アナウンサーの「代役」を週替わりで話題にし続けることで、弘中アナの「復帰待ち」を温かく盛り上げている。
昨今問題となっている少子化の根底には、「子供ができたら、仕事や人生設計にマイナスの影響があるのではないか」という躊躇も影響しているのではないか。それを解消していこうというメッセージを発するのはテレビの役割の1つだと思う。
「フェードアウト」は、寂しい。
(西脇 亨輔)
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【私見】
女性アナウンサーは、労働者でもあり労働の権利や人権も本来保障されているはずだが、現実は異なる。膳場貴子氏や小川彩佳氏が産休明けに番組降板を打診されたり、まともな産休をとらず早々に番組出演したりしている。華やかな側面もあるが、はたらく者の権利はじゅうぶんには守られていない。女性差別が克服されていない。
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