伊澤屋

歴史・政治経済系同人誌サークル「伊澤屋」の広報ブログ。

『龍の齒医者』 前篇  所感

2017年02月26日 19時03分35秒 | Weblog
所感である。

庵野秀明だけあって世界観の作り方の巧さは安定性がある。
美少女と粋な男と少年。アナログ感溢れるメカと戦間期からww2を匂わせる「煤けた」味は良い。
長門の第二次改修前?っぽい屈曲煙突と大正末から昭和初期の風格を持つ木造の家。舞台装置だ。

野ノ子(声:清水富美加)の「毎日が大変でいっぱいいっぱいだけど未来には希望が溢れてる」感が
実際には自らの死期を事前に知っている、しかしそれを苦しみとも考えないのが普通らしい歯医者の
流儀とアンバランスと言うよりは完全に矛盾している風なのだが矛盾していないようにも見える。

野ノ子の大先輩で今や歯医者の中でも一番の古株な「姐御」味たっぷりな柴名(声:林原めぐみ)が
最後に(というよりはかなり以前から)虫歯菌 「そのもの」 になっており共に働いてきた仲間たちに


「あたしは、運命になんて従わない!!」


と完全に虫歯菌の姿になって言い放つ場面はどう見ても次回に希望を繋ぐものではない。
簡単に抜ける床は汗の浸み込んだ飯場か寂れた宿坊の暗喩か。 希望の無い働く場とも読み取れる。

柴名姐さんの言葉が、結果的にだが野ノ子の声を当てた清水の判断に向けられているようで辛い。
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