椀に山盛りに飯を盛った状態を「てんこもり」といいます。
当然、飯田・下伊那でも「てんこもり」が一般的でしょうが、わざわざ「オ」をつけて「オテンコモリ」と表現することがあります。辞書には「てんこもり」は載っていますが、「オテンコモリ」は載っていません。
こうした用例はほかにもあります。
もっともよい、取って置きの品物などは、辞書には「取置」(トットキ)と記述されていますが、飯田弁では「オトットキ」といいます。
このほか、「オツイショウ」(辞書では「追従」)などが挙げられます。
「オ」という接頭語は、どんな場合に用いられるのでしょうか。
お【御】
①<体言・形容詞・形容動詞に、または動詞連用形に「になる」「なさる」「申す」「遊ばす」等が付いた形にかぶせて>尊敬・丁寧の気持を表す。「-手紙」「-寒いことです」「-静かな-宅ですね」「-話し申し上げる」「-出かけになる」
▽漢語には普通「ご」、または母音で始まる語には「おみ」を使う。
②<口語の動詞連用形にかぶせ、そこで言い切りにする>(やわらかな)命令を表す。「さあ-食べ」
▽「お…なさい」の略。
③<中世以後、主に女の名に冠して>尊敬・親しみの気持ちを添える語。「唐人-吉」 「-富さん」
▽③は「阿」「於」とも書いた。なお「お」は、「おほみ(大 御)→おほん→おん→お」と変化してできた語 (「岩波国語辞典(第五版)」)
飯田弁の「オテンコモリ」「オトットキ」「オツイショウ」は、以上の引用から①の用法です。つまり、「餅」を「お餅」、「菓子」を「お菓子」、「食事」を「お食事」などと用いる場合と同じと言えます。
飯田弁にみられる「オアガリテ」「オヨリテ」「オツカイテ」はどうでしょうか。この類は、一見、「オテンコモリ」等と同様、尊敬・丁寧の気持ちを表すと思いがちですが、先に引用した辞書の説明から、②の用法、すなわち、やわらかな命令を表すというのが正しいと考えます。
辞書の説明③に該当する飯田弁はどうか、と考えてみました。辞書の説明で付けられている< >の部分には、主として女の名に冠してとありますが、それはそれとして、飯田弁の人称代名詞にみられる「オトーマ」「オジーマ」の類の「オ」は、尊敬・親しみの気持ちを添える「オ」だと思います。辞書の説明③に該当する用法になると思います。
そこで、先に引用した辞書の説明に加え、飯田弁にみられる接頭辞「オ」について改めて整理をしました。
① 人に何かを勧めるときなどは「オ~テ」という表現をするもの(やわらかな命令を表す)
「オアガリテ」「オヨリテ」「オツカイテ」など
② 物称等、本来は「オ」を付けるとは考えられないもの(尊敬・丁寧の気持ちを表す)
「オテンコモリ」「オトットキ」「オツイショウ」など
③ 人称代名詞に多くは用いられ、尊敬・親しみの気持ちを表すもの
「オトーマ」「オジーマ」など
「オ」が付けられたこれらのことばは、音感的には非常に「聞こえ」がいいと思います。飯田弁が、なんとなく丸みがあって、一種のやさしさ、ほのぼのさがあると言われている一つの理由がここにありそうです。
当然、飯田・下伊那でも「てんこもり」が一般的でしょうが、わざわざ「オ」をつけて「オテンコモリ」と表現することがあります。辞書には「てんこもり」は載っていますが、「オテンコモリ」は載っていません。
こうした用例はほかにもあります。
もっともよい、取って置きの品物などは、辞書には「取置」(トットキ)と記述されていますが、飯田弁では「オトットキ」といいます。
このほか、「オツイショウ」(辞書では「追従」)などが挙げられます。
「オ」という接頭語は、どんな場合に用いられるのでしょうか。
お【御】
①<体言・形容詞・形容動詞に、または動詞連用形に「になる」「なさる」「申す」「遊ばす」等が付いた形にかぶせて>尊敬・丁寧の気持を表す。「-手紙」「-寒いことです」「-静かな-宅ですね」「-話し申し上げる」「-出かけになる」
▽漢語には普通「ご」、または母音で始まる語には「おみ」を使う。
②<口語の動詞連用形にかぶせ、そこで言い切りにする>(やわらかな)命令を表す。「さあ-食べ」
▽「お…なさい」の略。
③<中世以後、主に女の名に冠して>尊敬・親しみの気持ちを添える語。「唐人-吉」 「-富さん」
▽③は「阿」「於」とも書いた。なお「お」は、「おほみ(大 御)→おほん→おん→お」と変化してできた語 (「岩波国語辞典(第五版)」)
飯田弁の「オテンコモリ」「オトットキ」「オツイショウ」は、以上の引用から①の用法です。つまり、「餅」を「お餅」、「菓子」を「お菓子」、「食事」を「お食事」などと用いる場合と同じと言えます。
飯田弁にみられる「オアガリテ」「オヨリテ」「オツカイテ」はどうでしょうか。この類は、一見、「オテンコモリ」等と同様、尊敬・丁寧の気持ちを表すと思いがちですが、先に引用した辞書の説明から、②の用法、すなわち、やわらかな命令を表すというのが正しいと考えます。
辞書の説明③に該当する飯田弁はどうか、と考えてみました。辞書の説明で付けられている< >の部分には、主として女の名に冠してとありますが、それはそれとして、飯田弁の人称代名詞にみられる「オトーマ」「オジーマ」の類の「オ」は、尊敬・親しみの気持ちを添える「オ」だと思います。辞書の説明③に該当する用法になると思います。
そこで、先に引用した辞書の説明に加え、飯田弁にみられる接頭辞「オ」について改めて整理をしました。
① 人に何かを勧めるときなどは「オ~テ」という表現をするもの(やわらかな命令を表す)
「オアガリテ」「オヨリテ」「オツカイテ」など
② 物称等、本来は「オ」を付けるとは考えられないもの(尊敬・丁寧の気持ちを表す)
「オテンコモリ」「オトットキ」「オツイショウ」など
③ 人称代名詞に多くは用いられ、尊敬・親しみの気持ちを表すもの
「オトーマ」「オジーマ」など
「オ」が付けられたこれらのことばは、音感的には非常に「聞こえ」がいいと思います。飯田弁が、なんとなく丸みがあって、一種のやさしさ、ほのぼのさがあると言われている一つの理由がここにありそうです。