活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

PR誌『新装』のことから

2011-09-10 05:56:38 | 活版印刷のふるさと紀行
 『新装』は松坂屋の宣伝部が担当しておりました。上野店宣伝部の時代も銀座店宣
伝部の時代もありました。印刷はずっと大日本印刷で、こちらも榎町工場の時代と市
谷工場の時代がありました。

 ひとことでいえば、『新装』は外商の上得意先宛ての宣伝誌でした。
販売のためというよりもイメージアップを意図しての編集で、チェコグラスですとか
宝石や高級時計とか、高級呉服ですとか、特選売り場に並ぶような商品を中心に雰囲
気のある写真とコピーで紹介していました。

 A4の天地を詰めたサイズで、見開きページのおもてが6色のカラーオフセット、
裏の見開きページがグラビア1色というめずらしい版式で、グラビアは平台を使って
おりました。文字組は写植主体でした。

 デザイン・レイアウトはかなり斬新で、製版テクニックもいろいろ使いました。私
の個人的な楽しみとしては夏の祇園まつりのころ、かならず秋の着物の取材と撮影に
京都に行くことでした。とくに松坂屋自慢の染織参考館で江戸時代の小袖を見せても
らったり、ペルシア・インカなどの古代裂れに出会うことでした。

 そういえばこんなことがありました。カメラの佐々木照男さんの発案で、乗鞍で北
アルプスの山なみをバックに畳に着物のモデルを座らせて撮影しようというので、高山
からモデルと畳屋さんも同行して現場に向かいました。

 スタッフ一同、あまりの寒さに山小屋で味噌汁を飲んでいるうちに、さきほどまで見
えていた雪をかぶった連峰がガスに包まれて撮影不可能になってしまいました。
 コンピュータでいまほどうまく「合成」ができなかうた時代の話です。


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