4月1日
慟哭が虫出しの雷黙らせる
虫出しの雷きこゑ地平眩し
初雷にメメントモリが覚醒す
虫出しの雷がダジャレ無視だし
4月2日
百間を堤みて桜東風の土手
百間を堤みて桜東風走る
水辺さへ脆くさゝやく桜東風
4月3日
さざ波を面で笑わす春日影
4月4日
眼にワイパーつけて祝辞の春眠し
4月5日
清明が水門くゞる汽水域
4月6日
峠越えチャリ鳥風の背なか追う
鳥風や歩幅せばめて海崖へ
4月7日
やあと云ふ静寂が乗る花筏
空こぼす青を流るゝ花筏
ありがとふ最後にいって花筏
花筏は琵琶湖疏水を舞踏する
4月8日
しょんぼりが桃太郎する忘れ霜
(トマト苗の桃太郎は吉備でのみ?
ぼくとつに寡黙をひとつ忘れ霜
4月9日
半顔がスタートダッシュ忘れ霜
半身だけラストスパート山桜
山桜ええなの壺に投げ入れる
4月10日
現し世を花過ぎが散るキネマ館
自動ドア花過ぎが舞う素数の詩
花過ぎを忘れるために窓開ける
蝶番で花過ぎを戻す山羊の柵
4月11日
褒め声に比喩よるべなし花苺
花苺のふてた葉をむしる性格
可憐さのメタファーになれ花苺
4月12日
歯切れよいカッティングが抵抗する
へぇンダーだぜ歪んだ和声が電線だ
好きだよを点描したい春の汗
返答はLINEで包む春の汗
4月13日
彼はとても会社なのだ抱卵期
あらすじをルルルでつゝむ抱卵期
4月14日
ためらひがとても海市なイカに会う
海市までベランダが走る宇宙観
髪の間に海市あらはる二人乗り
海市行きのバスを待っている人魚
4月15日
前席にシャネル風光バスに入る
4月15日
叙情なく海市を叙する海炭市
4月15日
海市たそがれ丼でウニの夕焼け
4月16日
ホームで会う夕方のかれ蝮腹草
4月19日
農を捨て苗代水に顔うつす
4月19日
浅井戸や苗代水の青深し
4月19日
シルエット苗代水がととのえる
4月20日
紺屋きて紺のストライプで穀雨
4月21日
この距離で揺られていたい蘆若葉
4月22日
鹿の角落つ野に山羊威張りけり
4月22日
ガソリンに鹿の角落つ体感値
4月23日
レガッタの負けない気持ち漕いでいる
4月24日
ハピネスを下流にのぼる上り鮎
4月24日
雨だれのピアノを跳ねる上り鮎
4月28日
デージー食べるたのしいヒトの鎖骨鳴る
ジョンの情念で蜆取る平和
レノンの蜆取レインコート着て
情念をジョレンで掻いて蜆採
4月29日
助手席で小手毬の花がボサノバ
4月30日
弥生尽のどぼとけまた拾ふ夢