「抗」と「杭」と
詩人・峠三吉の詩集「原爆詩集」に「序」という作品がある。広島市の平和公園に小さな石碑があり、そこにも刻まれている。
序 峠 三吉
ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ
わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ
「抗」と「杭」と
崩されてしまうかもしれない
いま杭(くい)をうたないと
奪われてしまうかもしれない
いま流れに抗(あらが)わないと
あの時代のように
あの国のように
あの民族のように
あのひとたちのように
―なにが?
赤ちゃんが大声で泣ける自由が
病気のひとが安心して養生できる平和が
孤独な老人や障がいのあるひとが語り合える愛が
若者たちが笑いあいながらうたえる希望が
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