「ツバメの秋」
古い家の軒下にツバメの巣がありました
もう夏も終わって秋になったというのに
まだ1羽のツバメが旅立たないまま残っています
夏の初め渡って来たツバメは 卵を産み
仲の良い2羽で卵を育てていました
「大丈夫かい? 君はゆっくり卵を温めると良いよ
エサは僕が君の分も取って来るからね」
「あいがとう!無理しないでね」
仲の良いツバメの新婚さんでした
でもメスも少しは自分でエサを集めようと
巣を開けた時 蛇が巣を襲って卵を食べていました
メスは慌てて巣の卵を救おうと 蛇に体当たり!
蛇に巻きつかれたまま一緒に巣から落っこちてしまいました
蛇は逃げて行ったのですが メスのツバメは
羽を痛めたのか 動けません
そんな時通りがかった ここの家の女の子が
可愛そうに思ったのか家へ連れて帰りましたた
エサを取って戻って来たオスのツバメは
何も出来ずに 残っていた卵1個を温めることにしました
夏も過ぎ 孵ったヒナも大きく育って飛び立てるようになりました
「ねえ!父さん 僕にはお母さんはいないの?」
「ちゃんと居るよ ほらあそこの窓の所に・・」
そこには籠に入れられたメスのツバメがこちらを見てました
そろそろ南の国へ戻らないといけない時が来のですが
メスは羽を痛めてもう飛ぶことが出来ません
「私は飛べないけど ちゃんと世話をしてもらってるから
元気になって来てるのよ だからあなたたちは国へ戻って行ってね」
戻りたくないと 子供は泣いて嫌がったのですが
このまま寒い冬になれば生きてはいけません
子供のツバメは他の仲間と南の国へ旅立つことになりました
でもオスは 僕はこのままお前のそばに居るよ
たとえ冬は越せない短い時間でも離れるよりは 幸せだよ
オスのツバメは 秋がどんどん深くなっていっても
窓辺の籠が見える電線に1羽で
朝夕必ずとまってメスのツバメを見ていました
そして秋も去り 初雪が降った日 窓辺の下に
1羽のツバメが薄っすらと雪が積もったまま横たわっていました
時を同じく 籠の中のツバメも息絶えていました
ツバメの平均寿命は1年半と言われています
2羽にとって今年の秋が終わる時が寿命だったのかもしれません
長かったのか?短かったのか?
誰にもわかりません ただ死ぬまで
一緒に居れた事は幸せだったかもしれません
小型のツバメは猛禽類やカラスなど敵が多く
それに1年を通して移動距離も長いので平均寿命が短いそうですが
ツバメは何事も無く病気もしなければ 籠の中で
15年以上生きても不思議は無いそうですが
メスのツバメは弱って行くオスのツバメを見ていて
エサを食べなかったようで 衰弱死したそうです
めでたし めでたし