「ぶっ!」
魔界とは言え春は来る。
そろそろ暖かくなり始めたからか子供達(自分も子供だが)の
動きも活発になって来たからか食料の減りが速い。
‐とはいえ一年半程前に拾った妖狐のお陰で果物や野菜や
米や麦あたりは常備出来ている。有り難いことだ。
あとは肉や魚があれば何も文句はない。それにあと一月も
すれば川の氷も溶ける。肉は二月もしたら罠にかかる野ブタや
野鳥も太りだす頃だ。
万年腹減りの欠食児童と最近は少しずつ肉や魚を口にしだした
偏食児童をかかえた母親気分で野草茶を飲んで春を祝いでいた
黒鵺は口から野草茶を噴き出した。
「……?」
不思議そうに妖狐―蔵馬がこちらに振り向く。
「ぬー、どうした?」
「や、あの、どうしたって……」
改めて黒鵺は蔵馬をじっくりと見た。
肩を越えて伸びた銀髪。
丸みをおびていた頬はちょっとしゅっとしてきた。
丈の短い単衣から伸びる足もすらっとし。
身体のわりに大きかった印象の耳と尻尾はバランス良く
なったと思う。
つまり。
背伸びをした蔵馬の着物の裾からちらりと見えた
『まあ可愛い』モノを目撃して茶を噴き出し黒鵺は理解してしまった。
『くーの着物小さくなったな!』と。
今蔵馬が着ている物は以前押し入った集落で盗んだ行李に入っていた
たいして金にならない子供用だ。
処分しておけと押し付けられた代物だが売らずに撮っておいた為
拾って直ぐの襤褸布を纏っていた蔵馬に着せられたのだ。
薄鼠色で所々黒い髪を温かい湯で濡らした布で拭き
汚れて固まった毛先を顎の下で切揃えて綺麗な(汚れてないと言う意味で)
着物を身に着けた蔵馬は輝くばかりに可愛いかった。
―今も可愛いが。
と言っても。
黒鵺は頭を抱えて唸る。
服は貴重で高い。
一番近い市(いち)のたつ町でも布だけでもべらぼうに高い。
運良く布が手に入っても着物を仕立てる能力は黒鵺にはない。
それに、蔵馬に服を買うならもう一人にも買わなければ不公平だ。
(そのもう一人ー黄泉は外に飛び出し遊び回っているが)
だけども。
『金がない……』
黒鵺と黄泉が属する盗賊団は元は暖かい地域で結成されたらしく
冬は雪深いこの地方では殆ど活動しない。となれば必然的に手持ちの
金で冬を越すしかない。
でも『無駄飯食いの穀潰し』である二人には金等支払われた事は
ほんの僅かだ。今手持ちの金もたまたま上手く行った盗みの
成功に気を良くした副団長が自分の取り分から分けてくれたのだ。
ニ、三回肉を買える程度の金額を。
多分蔵馬がいなかったら自分も黄泉も冬を越せて居なかったと思う。
可愛いだけでなく命の恩人でもある蔵馬。
新しい服位買ってやりたい。
古着でなく新品のまっさらなヤツを。
でも金が、全然ない。
突然頭を抱えて唸り始めた黒鵺の顔を怪訝そうに蔵馬は
下から覗きこんだ。
「ぬーどうした?おなか痛い?」
震える手で蔵馬の肩を掴み引き寄せ抱き締め黒鵺は謝った。
「ごめんな、くー。
服も買ってやれなくて」
不甲斐ない自分に呪詛の言葉を頭の中で吐いていると
黒鵺の耳元で蔵馬は呟いた。
「ふく?
ふくならおれ作れるとおもう」と。
〜すっごい久しぶりの三人組。
なのに何故か久しぶりの気がしないのは漫画のネームで
描いてるからか。一応時系列は文章が過去、漫画が未来です。
ぬーさんが健気で泣けますね。新しい服を買うタイミングは
何故か子供が複数居ると重なるのです。
自分だけ買って貰えないとショックだし(私大体お下がり
だったのデスが)!
後編へ続く!
魔界とは言え春は来る。
そろそろ暖かくなり始めたからか子供達(自分も子供だが)の
動きも活発になって来たからか食料の減りが速い。
‐とはいえ一年半程前に拾った妖狐のお陰で果物や野菜や
米や麦あたりは常備出来ている。有り難いことだ。
あとは肉や魚があれば何も文句はない。それにあと一月も
すれば川の氷も溶ける。肉は二月もしたら罠にかかる野ブタや
野鳥も太りだす頃だ。
万年腹減りの欠食児童と最近は少しずつ肉や魚を口にしだした
偏食児童をかかえた母親気分で野草茶を飲んで春を祝いでいた
黒鵺は口から野草茶を噴き出した。
「……?」
不思議そうに妖狐―蔵馬がこちらに振り向く。
「ぬー、どうした?」
「や、あの、どうしたって……」
改めて黒鵺は蔵馬をじっくりと見た。
肩を越えて伸びた銀髪。
丸みをおびていた頬はちょっとしゅっとしてきた。
丈の短い単衣から伸びる足もすらっとし。
身体のわりに大きかった印象の耳と尻尾はバランス良く
なったと思う。
つまり。
背伸びをした蔵馬の着物の裾からちらりと見えた
『まあ可愛い』モノを目撃して茶を噴き出し黒鵺は理解してしまった。
『くーの着物小さくなったな!』と。
今蔵馬が着ている物は以前押し入った集落で盗んだ行李に入っていた
たいして金にならない子供用だ。
処分しておけと押し付けられた代物だが売らずに撮っておいた為
拾って直ぐの襤褸布を纏っていた蔵馬に着せられたのだ。
薄鼠色で所々黒い髪を温かい湯で濡らした布で拭き
汚れて固まった毛先を顎の下で切揃えて綺麗な(汚れてないと言う意味で)
着物を身に着けた蔵馬は輝くばかりに可愛いかった。
―今も可愛いが。
と言っても。
黒鵺は頭を抱えて唸る。
服は貴重で高い。
一番近い市(いち)のたつ町でも布だけでもべらぼうに高い。
運良く布が手に入っても着物を仕立てる能力は黒鵺にはない。
それに、蔵馬に服を買うならもう一人にも買わなければ不公平だ。
(そのもう一人ー黄泉は外に飛び出し遊び回っているが)
だけども。
『金がない……』
黒鵺と黄泉が属する盗賊団は元は暖かい地域で結成されたらしく
冬は雪深いこの地方では殆ど活動しない。となれば必然的に手持ちの
金で冬を越すしかない。
でも『無駄飯食いの穀潰し』である二人には金等支払われた事は
ほんの僅かだ。今手持ちの金もたまたま上手く行った盗みの
成功に気を良くした副団長が自分の取り分から分けてくれたのだ。
ニ、三回肉を買える程度の金額を。
多分蔵馬がいなかったら自分も黄泉も冬を越せて居なかったと思う。
可愛いだけでなく命の恩人でもある蔵馬。
新しい服位買ってやりたい。
古着でなく新品のまっさらなヤツを。
でも金が、全然ない。
突然頭を抱えて唸り始めた黒鵺の顔を怪訝そうに蔵馬は
下から覗きこんだ。
「ぬーどうした?おなか痛い?」
震える手で蔵馬の肩を掴み引き寄せ抱き締め黒鵺は謝った。
「ごめんな、くー。
服も買ってやれなくて」
不甲斐ない自分に呪詛の言葉を頭の中で吐いていると
黒鵺の耳元で蔵馬は呟いた。
「ふく?
ふくならおれ作れるとおもう」と。
〜すっごい久しぶりの三人組。
なのに何故か久しぶりの気がしないのは漫画のネームで
描いてるからか。一応時系列は文章が過去、漫画が未来です。
ぬーさんが健気で泣けますね。新しい服を買うタイミングは
何故か子供が複数居ると重なるのです。
自分だけ買って貰えないとショックだし(私大体お下がり
だったのデスが)!
後編へ続く!