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聖教新聞(2016/10/28)ライフスタイル Woman in Action 輝く女性

2016年11月26日 22時48分52秒 | コラム・ルポ

〈ライフスタイル Woman in Action 輝く女性〉

授乳期のママたちのライフスタイルを変えたい!

2016年10月28日 聖教新聞

子連れ出勤OK! 授乳服の製作・販売会社を設立
モーハウス代表 光畑由佳さん
 
モーハウス代表 光畑由佳さん 

     

 例えば電車内やカフェなどで赤ちゃんが泣きだした時、あなたはどう感じますか? 新米ママや赤ちゃんにとって、外の世界は大冒険。勇気を出して外出しても、公共の場で泣かれると周囲の目が気になり、いたたまれない気持ちに――。そんな経験から、ママたちを応援する授乳服販売を始めた光畑由佳さんに、モーハウスの画期的な取り組みを聞きました。

授乳服は外出を後押しする道具

 1997年8月、光畑さんは3歳の長女と生後1カ月の次女を連れて外出する。ところが、JR中央線の車内で次女が泣きだした。次第に大きくなる泣き声。気になる周囲の視線。悩んだ結果、光畑さんはその場で授乳を決行した。
 「その時、恥ずかしさより『これじゃ産後の母親は外出できない』と思いました。泣く子がかわいそうというより、自分が周囲の視線にいたたまれなかった。きっと子どもが泣くのが怖くて、外に出られないママがたくさんいる。そこで『胸を出さずに授乳できる服があれば、もっと外出できるのでは』と始めたのが、モーハウスです。
 家にこもりがちなママにとって、授乳服は外出を後押しする道具。ライフスタイルを変えるものです。『衣服は環境』なんですよね」
 そうと決めたら、行動は早い。当時、光畑さんは編集者をしていたが、自宅で試作開始。その年の秋には販売を始めた。大学で被服学科を専攻していたことが幸いした。当時、日本製の授乳服はまだなく、海外製品は日本人には使い勝手が悪かったため、工夫を重ねた。授乳服と聞くと、ケープタイプやファスナーで開くタイプを想像する人が多いかもしれないが、モーハウスの授乳服は違う。
 「ケープも便利ですが、私は衣服内気候を学んだので、二酸化炭素濃度など赤ちゃんの環境が気になりました。暑くて暴れる子もいますし。目指したのは、金具がなく、赤ちゃんを待たせず、胸が見えず自然にあげられる服。社会の中で『今、お乳をあげてます』と分かるのは、私は違和感を感じます。ちょっと危ないですよね。
 授乳がどこでもできるのは大切ですが、母親の権利を主張して『子どもがいるから気を使ってください』とは言いたくない。最低限、許容してほしい部分はあるけれど、周りの人に目をそらさせるなど気を使わせずフェアにいきたい。だから、授乳服はママだけじゃなく、周りの人にも優しいグッズなんです」

肩の力を抜くのがミツハタ流

 光畑さんは声高に理想を叫ぶタイプではない。「子連れで電車に乗るとか母乳の話が極論に陥りがちなのが嫌だ」と言い、自身も母乳に悩んだ経験から「母乳でなければ」という主張もない。
 「一つの目標に向かい、がむしゃらに頑張るのが山登り型なら、今の私は流れに身を任せ、周囲の反応をキャッチしながら形にする川下り型。川下りは一見楽なようですが、選択肢が多く状況判断などクリエイティビティが必要で、頭を使うし面白い。何を選ぶか人生いろいろ。でもちゃんと漕いでいれば海に出る。3人の子を出産して、肩の力を抜くことに気付きました。自分ではどうにもならないことが起きますよね」
 そんな中で生まれた就業スタイルが「子連れ出勤」。自分も、設立時に手伝ってくれたスタッフも授乳中だったため「じゃあ赤ちゃんも一緒に」と始まった。本社での取材中も、奥の方から子どもの声が聞こえてくる。試行錯誤の末、現在は2歳未満までOK。ショップでは、スタッフが子どもを抱いたまま接客する。その姿に出産を決意する女性客もいるという。
 「家庭と同じ状態で仕事をします。自然に始まった形態ですが、世間の注目を浴び始めた時に、仕事と育児の両立という問題に何か提案ができるのではないかと考え始めました。
 2歳未満なのは、走って友達と遊びたくなったら次のステップだから。親の都合でガマンはさせられません。その時期が来ると社を卒業する人もいますし、中には次の子を産んで戻ってくる人も。うちは週に2日出勤でも責任ある仕事を任せ、パートという概念はなく、全員スタッフです」

伝えたい人にもっと情報を

 会社設立から19年を経て、授乳服はかなり社会に浸透したのではと尋ねると、現実は厳しいという。
 「私たちは安く海外生産するより、国内の縫製業を支えたいという思いもあり、日本製が中心。しかも広告費を掛けられず、なかなか伝えたい人に情報が届きません。実は本を出す時に『女性は読まないから新書はダメ』と言われ、失礼だなと思いましたが、実際読んでいるのは男性の方が多かった(苦笑)」
 女性の意識を少しでも変えたいと、光畑さんは子育てに関するイベントや講演など積極的に動いている。実際に授乳シーンを見てもらう「授乳ショー」も好評だ。本年6月には、ペルーで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の女性と経済フォーラムに参加。「女性自身が、ガラスの天井を打ち破る勇気を」とスピーチした。最近では、モーハウスの「授乳服3点セット(ブラ、穴あきインナー、シンプルTシャツ)」をプレゼントする行政も出てきた。
 「世の中と行政は、少しずつですが変わってきました。一番難しいのは、ママたちの意識を変えること。女性が赤ちゃんを産んだら、ガマンするのが当たり前。外に出ると迷惑を掛けるかもしれないから、産んで1年くらいは家でじっと子どもと過ごすもの、自分のことは後回し――こういう壁を壊さないと、いくら制度を整えても難しいのかなと思います。
 私は子育て中、いろんなグッズを買ったけど、赤ちゃんを絶対泣かせない道具はありませんでした(笑い)。今、泣きやむアプリもあるけど、100%じゃないですよね。一生懸命見せてるママを見かけると『抱っこしてあげた方が、よっぽどいいですよ』と言いたくなるけど、おせっかいになるので……。
 女性はすでに、子どもが泣きやむものを自身に持っているんです。私たちモーハウスの言葉が、届いてほしい人に届くよう願いながら、この言葉を贈ります。
 『もっと子どもと外に出て、輝いてください。あなたはその力を持っているんですから、大丈夫!』」

 みつはた・ゆか モーハウス代表取締役、NPO法人子連れスタイル推進協会代表理事、茨城県ユニセフ協会評議員、茨城大学社会連携センター特命教授、筑波大学大学院非常勤講師。倉敷出身。お茶の水女子大学被服学科卒業後、パルコで美術企画を担当。その後、建築関係出版社を経て、1997年、モーハウスの活動を開始、子連れ出勤が話題に。女性のチャレンジ賞など受賞歴多数。著書『働くママが日本を救う! 「子連れ出勤」という就業スタイル』(マイコミ新書)。

 【編集】加藤瑞子 【右上の本人と本社内写真】宮田孝一 【その他写真】モーハウス提供 【レイアウト】若林伸吾 

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孫育てをしている自分にも、とてもためになる記事だったね。 

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