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聖教新聞 〈介護〉 認知症の人が落ち着く言葉 ㊦

2016年12月19日 21時40分29秒 | コラム・ルポ

〈介護〉 認知症の人が落ち着く言葉 ㊦

2016年11月30日

“優しい関係”を作る手段
認知症相談センターゆりの木 代表 右馬埜節子さん
 
 

 認知症の人が落ち着く言葉掛けや接し方の要点を、前回(23日付)に続いて“引き算介護”を提唱する、認知症相談センターゆりの木・代表の右馬埜節子さんに聞きました。(写真は本人提供)

引き算介護の心得

 認知症の人は記憶や新しい体験を覚えられない「引き算の世界」にいます。本人の納得を引き出すには「寄り添うウソ」が有効ですが、いくつか要点があります。
 まず、堂々とすること。バレないかと不安げな態度では相手にも失礼。スウェーデンでは合理的な介護技術としてウソを勧めています。バレたら「ごめんなさい、勘違いでした」と謝ればよいのです。
 続いて、基本的な“引き算介護の心得”を紹介します。
 ①足し算でなく引き算で
 認知症の人の「引き算の世界」に合わせて対応します。
 ――元教授の80代男性は、まだ現役のつもりで出勤する迎えの車を待っていました。家族がデイサービスの利用を勧めても断固、拒否です。
 そこでデイサービスの車を向かわせて「先生、教授会のお車です」と言うと、難なく乗車。以来、男性は“教授”として通い続けています。
 ②説得は「ざるに水」
 正論を言うのは、ざるに水をためようとするのと同じで徒労に終わります。説得より納得してもらうことです。
 ――寒い冬、病院内の通路で見た高齢女性は、看護師に「お部屋に行こうよ」と説得されても動きませんでした。女性はタオルのようなものを抱えていて、それが赤ん坊のようにも見えました。
 私は友人を装って「お久しぶりです。今日は赤ちゃん連れですか。お部屋に行かないと風邪をひくわ」と穏やかに声掛け。すると、笑顔で部屋へと歩きだしました。
 ③生きざまが手掛かり
 仕事や趣味など、本人の人生を念頭に置いて応じます。
 ――精肉店を営んでいた男性は、店を畳んで認知症となった後も包丁研ぎを。家族が「危ないから包丁を置いて」と言っても手放しません。
 そんなときは「おじいちゃんは働き者ね。少しは休んでくださいよ」と、ねぎらうと包丁を放して休みます。
 ④負けるが勝ち
 認知症の人が譲らないときは、介護者が頭を下げると、うまくいくものです。
 ――食後に「ご飯まだ?」と聞かれ、「さっき食べたでしょ」と言い返す、よくある場面。食べ終えた器を見ても「食べていないものは食べていない」と認めない人も。
 その際は「ごめん。炊飯器のスイッチ入れるのを忘れていた。少し待ってね」と謝れば素直に待ってくれるはず。忘れる病気なので再び聞かれることもありますが、同じ答えを繰り返しましょう。
 ⑤話は短く
 用件は長話でなく、単語で短く伝えましょう。
 ――私たちの施設には「故障」と貼られたドアがあり、利用者は通ろうとしません。昔から慣れ親しんだ文字は、生活上の約束事として体に刻み込まれているからです。
 これは、認知症の人を守る知恵。自分の住所も電話番号も言えないことがあり、一歩外に出ると命を落としかねません。そのドアが彼らを守る“命の扉”なのです。
 ほかにも「危険」「禁止」「工事中」などの単語も。直接、注意や指示をすると怒る人も単語や貼り紙にすれば、すんなり理解してくれます。
 ⑥北風と太陽
 力ずくや無理強いは禁物。“急がば回れ”です。
 ――認知症の人によくある昼夜逆転。真夜中にかばんを持って「会社に行く」と言う夫を、妻が腕にすがって止めようとしたら、振り払われてケガをしてしまいました。
 そんなときは「今日は日曜日」と伝えてみてください。“日曜日は休み”と多くの人の体に刻まれているので、ゆっくり休むはずです。
 ⑦ウソも方便
 常に正直に、事実を伝えることがいいとは限りません。
 ――他界した母に会いたいと言う認知症の人に、事実を分からせるため、お墓に連れて行った家族がいました。
 でも、母は生きていることにして「今、旅行に行っているよ」と、本人の気持ちに合わせた方が落ち着くのです。
 ⑧知恵比べ
 引き算介護は導入が肝心。本人の世界に入るための鍵は何かを考えます。
 ――デイサービスの食事を断る女性は、幼少期に「他人の家の食事時は欲しそうにせず、席を外しなさい」と厳しくしつけられていました。
 そこで、施設で作った料理をお弁当箱に詰め直し、家族が持ってきてくれたことに。女性は喜んで食べました。
 ⑨「ありがとう」
 お礼を言われてうれしいのは認知症の人も同じですが、介護されるようになると言われる場面は少なくなるもの。
 ――私たちは施設の行事と称して料理や書道など、利用者の得意分野で腕を発揮してもらうことがあります。その際、仕事を助けてもらったお礼に「ありがとう」と伝えます。役割を果たしたつもりの皆さんは満面の笑みです。
 ⑩忘れることを利用
 認知症の忘れる特性を生かすのは、自分と異なる世界の人に歩み寄るため。お互いにとって“優しい関係”を作り出す手段です。それが、私の提案する「引き算」を使った認知症介護です。

 うまの・せつこ 1943年、岡山県生まれ。「認知症相談センターゆりの木」代表、㈱日本エルダリーケアサービス執行役員。93年から認知症専門の相談員として介護の仕事に携わる。2003年に「デイホームゆりの木中野」を設立し、その後、認知症相談センターを併設。現在、中野区地域連携型認知症疾患医療センターの専門相談員を兼務し、研修・指導・講演等も行う。


認知症の症状が出てきたら、この記事を参考にしよう…ということで。

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