3年に一度のトリエンナーレとして、新潟県で開催しているアートイベント「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。日本有数の豪雪地帯といわれる新潟の里山の風景に点在する、世界の著名なアーティストによる作品の数々は、本祭となる2018年のトリエンナーレを待たずしても、楽しむことができるのです。

 今回は、東京から約2時間で行けるアートスポット「まつだい『農舞台』」をご案内しましょう。屋外のアート散策コースがあるので、秋のお出かけにぴったり!

季節で移り変わる棚田の風景とアート作品


イリヤ&エミリア・カバコフ「棚田」(2000年)。

 日本には四季があり、折々に移り変わる景色を楽しむことこそ、日本を旅する醍醐味かもしれません。

 東京駅から約90分、上越新幹線の越後湯沢駅で「ほくほく線」に乗り換えて約30分の「まつだい駅」。この周辺はふるくから、山間の農地を段々に開拓した棚田で米づくりを行ってきました。

 雪解けの水が棚田に満ちる春、青々とした稲が育つ夏、黄金色に稲穂が実る秋、棚田に真っ白な雪が積もる冬。この地で農耕文化が生まれた1000年の昔から、変わらず繰り返された景色を、訪ねることができます。


ほくほく線まつだい駅直結の「農舞台」。

 まつだい駅直結の「まつだい「農舞台」」は、アート鑑賞だけでなく、食、イベントなどを通して、松代の雪国農耕文化を体感できる総合文化施設。屋外の里山にもアート作品を展示し、1〜2時間程度でぐるりと見学することができるので、ハイキング気分でお出かけするのがおすすめです。


草間彌生「花咲ける妻有」(2003年)。


小沢剛「かまぼこ型倉庫プロジェクト」(2003年)。


城盗り橋を渡るとルートマップがある。

 屋外のアート作品は、建物の横を流れる川を渡った先の城山エリアに点在しています。1時間ほどで屋外展示の約半分を巡るコースと、2時間程度かけてじっくり散策するコースがあるので、時間と体力に合わせて選ぶといいでしょう。

 大自然の風景の中にぱっとアート作品があらわれたり、棚田と街並みを一緒に見ることができるビュースポットがあったり。2時間のコースでも、あっという間の距離です。


パスカル・マルティン・タイユー「リバース・シティー」(2009年)。作品の前には黄色い看板が立つ。


空から吊り下げられた太くて不揃いな鉛筆。鉛筆には世界各国の国の名前が書かれている。

棚田の美しい風景を眺めながら散策を


今にも空に舞い上がりそうな赤とんぼの彫刻。田中信太郎の「○△□の塔と赤とんぼ」(2000年)。

 こちらは棚田の風景に溶け込んだ、真っ赤なかかし。


大岩オスカール「かかしプロジェクト」(2000年)。棚田で働く人の姿を表現。

 ちょうど1時間コースと2時間コースの分岐点となる付近にあるのが、スイス人アーティスト、シモン・ビールさんによるこちらの作品。


シモン・ビール「今を楽しめ」(2000年)。

 2000年の「大地の芸術祭」スタート時に制作された作品で、越後妻有の6エリア(十日町・川西・津南・中里・松代・松之山)を象徴しています。


こちらもアートかな? と思わせるほど完成度の高い、ペットボトルで作られた風車。


前出の「棚田」を間近から。

 ぐるりと屋外アートを堪能したら、館内の食事処「越後まつだい里山食堂」でのんびり。おいしいこしひかりと季節の野菜のランチのほか、ティータイムには自家製スイーツやジンジャエールでのどを潤すことができます。

「農舞台」の施設内には、床や天井すべてが黒板になっている部屋や、星が輝く円形の部屋のほか、トイレにまでちょっとした仕掛けが満載。屋外アートの散策だけでなく、施設内も思い切り楽しめます。


左:大きな窓の向こうには里山の風景が広がる。
右:ミュージアムショップでお土産探しも◎。

 今回の取材で見た、夏の青々とした棚田は、秋には黄金色に姿を変えていることでしょう。屋外の景色と一体となったフィールドミュージアムの面白さは、季節を変えて出かけること。気候のいい春や秋にはハイキング気分で屋外アートを楽しんで、雪に覆われる冬には里山食堂でお茶をしながら真っ白い棚田を眺めてのんびり……そんな週末時間が過ごせそうです。

まつだい「農舞台」
所在地 新潟県十日町市松代3743-1
電話番号 025-595-6180
開館時間 10:00〜17:00(最終入館 16:30)
休館日 水曜(祝日の場合は翌日)
入館料 大人600円、小中学生300円
http://www.echigo-tsumari.jp/facility/base/nohbutai

文・撮影=CREA WEB編集室


連休で近くを通るから、ちょっと寄ってみようかな。