さて、「純粋種の繁殖」についての現実を今日は書きます。
ブリーディングの世界をご存知ない方にとっては、ちょっとビックリなお話かもしれません
現在、犬には様々な種類のものが有ります。
大型犬から小型犬、長毛から短毛・ワイヤー、細部に至っては目の形や耳の形、そして性質まで千差万別です。
しかし、元を正せば「犬の先祖はオオカミの原種だった」と言うところに行き着きます。
オオカミが人に飼われるようになってから、人間の扱い易いような品種をつくる為の改良が始まりました。
一胎の子供のオオカミの中でも、体の小さいものや、やや毛の長いもの、耳の大きさに特徴のあるもの、気性面など他とは少し違った個体が誕生することがありました。
また長い歴史の中で、気候や風土による変化、そして人間に飼われることなども含め、オオカミ自身も、その生活に適したように進化していったりしました。
人間はそれらに目を付け、同じような特徴を持つもの同士を交配させました。
そして生まれた子犬の中で、一番その特徴を受け継いでいるものを更に繁殖に使い、特徴の固定を繰り返していったのです。
特徴を固定する為に行った方法・・・
それは、同じような特徴の遺伝子を持つ、親・兄弟(同胎・前胎・後胎も含む)などの極々血縁の近いものとの交配でした。
「親子掛け」とか「兄弟掛け」と言われるものです。
イン・ブリードとも言います。
こう言ったことを長い年月を掛けて繰り返し、現在の固定された純粋種が誕生したのです。
しかし、この方法は悪い遺伝子も伝わってしまうので、それらも固定されることになります。
犬種によって、罹りやすい遺伝子疾患があるのはその為なのです。
サラブレッドも同じ方法で作られました。
彼らは野生では生きていけません。
走る為だけに作られているので、500kg前後ある馬体(種牡馬になると、もっと重くなります)をあの細い足で支えなければなりません。
走っている時に、1本の足に掛かる負荷は、芝で走った場合は1tと言われています。
本来、野生の状態では、競走馬のようにあれだけ長い距離を全力疾走することは、まずありません。
なので、それに耐えられるように心臓も異常に大きく作られているのです。
このように、人間の都合の良いように動物たちは改良されていきました。
サラブレッドの走る姿に感動するのは、このような宿命を負って生まれてきたことを、同じ哺乳類である私たちのDNAも知っているからなのかもしれませんね。
イン・ブリードは初期の段階では、これといった弊害が現れる率はかなり低いですが、究極まで行ってしまうと、受胎率が下がったり、死産や流産・奇形などをを発症してしまいます。
そこで、一度、全く血の違うものと交配をする「血を戻す」と言うことを行います。
これをアウト・クロスと言います。
アウト・クロスは予想の付かない子犬が生まれたりします。
血の繋がりが無いのですから、当たり前なのですけれども。
「雑種犬」たちは、これに該当します。
純粋種の固定にも、この方法が使われました。
ひとつの犬種を作出するには、何種類かの特徴を持つ犬同士の交配も行われています。
なので、元を正せば、現在は純粋種として認定されている犬種も雑種だったと言うことになります。
いまMIX犬が流行っており、それをデザイナーズ・ドッグと呼び、高値で取り引きされていることに賛否両論がありますが、ちゃんとした知識を持ち、目的があって作出するのであれば、私は良いのではないかと思っています。
私の希望としては、性質が穏やかで、しつけがしやすく、病気に強く、毛が抜けなくて、無駄吠えもしなくて、手入れがしやすくて(カットは伴わずグルーミングしやすい)・・・なんて犬種が出来るのであれば、お願いしたいですけれどね~
今は、毛の抜けない盲導犬を作出する為に、「ラブラドードル」と言う、ラブラドールとプードルの雑種が固定化されつつあります。
どちらも利口でしつけがしやすいので注目されましたが、プードル色が強くなると、グルーミングに手が掛かったり、カットなどの費用が盲導犬ユーザーの負担になるので、なかなか広まらないようですね。
また、別の犬種を交配して更なる固定化の道に進むのでしょうか・・・
見守りたいと思います。
さてさて、ショー・ドッグの話しに戻しましょう。
ショー・ドッグも、スタンダードに近い犬作りの為に、これまでは親子掛け・兄弟掛けは当たり前のように行われてきました。
例えば、5頭生まれたうちの4頭が死産だったり、奇形であったりしても、たった1頭でも大変優秀な子が生まれれば、それで、その繁殖は大成功な訳です。
その子を基礎として、そこから、また優秀な遺伝子を伝えていくのです。
優秀な子犬以外で、家庭犬としても不適切なものは、人知れず処分される運命にあります。
ブリーダーとは、そういう仕事なのです。
必要な遺伝子を固定する為に、止むを得ず、イン・ブリードを行わなければならないことがあるのです。
こう言ったことは表には出ないので、「単犬種を繁殖しているところから購入すれば安心な犬が手に入る」と言う間違った知識は捨てて頂きたいと思います。
子犬の中には、見た目には現れなくても、遺伝子として保有している場合があり(ヘテロ因子)、同じようにヘテロ因子保有の犬と交配した場合には、あくまでも確率としてですが、子犬の半分には好ましくない疾患が現れることになります。
潜在的に抱えている場合も含めると4分の3が好ましくない因子持って生まれてくることになります。
父犬・母犬が表向き健全であっても、です。
繁殖の難しさ・恐ろしさとは、そういう所にあります。
某犬種団体は、近年になって、近親繁殖で生まれた子犬には、それが解るように明確に記す方法が取られるようになっています。
繁殖は、動物愛護の精神に反していますか?
しかし、こういった長年に亘るブリーダーたちの努力で、いま、あなたの飼育目的に合った可愛い愛犬が手元にいることを忘れないでください。
純粋種の場合のイン・ブリードは、そのまま近親繁殖の意味でOKですが、アウト・クロスは「異系統繁殖」と考えてください。
ドッグ・ショーなどで、ある同じ犬種をご覧になっていると、いろんなタイプの犬がいることに気付かれると思います。
犬種は同じでも、長い歴史の中で、たった一人の方が作出に尽力されてきた訳ではないので、それぞれの好みのタイプと言うものがありました。
同じ種類でも、ある程度固定されてくると、違った基礎犬で繁殖される為、血筋の違ったものも作られる結果になります。
同じ犬種ですが、この血筋の違うもの同士を交配させたものがアウト・クロスと呼ばれるものです。
人間の場合もハーフの子は、組み合わせが成功するととても美人だったり美男子だったりしますが、犬の場合も、組み合わせが上手くいくと、驚くほど素晴らしい犬が誕生することがあります。
しかし、アウト・クロスをしたことによって、血に統一がなくなり、次回の繁殖の際に、相手選びが難しく、子犬にバラつきが出る率が高くなります。
アウト・クロスは、繁殖で行き詰った(改良の余地がなくなった)際に取られる手段です。
もうひとつ、ライン・ブリードと呼ばれるものがあります。
これは、イン・ブリードよりもう少し緩いもので、マイナス面も比較的少なく、また、大きな乱れも無く粒の揃った子犬が出来やすいので、一番よく取られている繁殖方法です。
しかし、飛び抜けて良い犬が出る率も低く、限界がある場合もあります。
こういった場合にイン・ブリードを行うと、良い点・悪い点がハッキリ出るので、改良の成果を見たり、今後の見直しを図るために、イン・ブリードを行う場合もあります。
なので、イン・ブリードは、正しい知識のもとではとても重要な繁殖方法なのです。
なかなか例え話で説明するのは難しいですが、人間に例えると、
・イン・ブリード → 3親等内での血族結婚
・アウト・クロス → 外国人との国際結婚
・ライン・ブリード → 日本人同士で同じ名字の人で、何代か前は親戚同士だったかも~と思う人との結婚
くらいに思って頂ければ良いでしょうか。
ちょっと幅広過ぎる感じもしますが
しかし、前回にも書きましたが、何事も経験から勉強出来ることは多く、初めは誰でも初心者です。
むやみやたらに繁殖に挑戦してください、と言っている訳では有りませんが、子犬の誕生や成長から得られる感動・愛・涙は、何物にも代えられません。
家族愛や人間愛についても考えさせられたり、特に、子育てについては、寧ろ愛犬から学ぶことが多々あります。
なので、頭ごなしに反対するつもりはありません。
しかし、どのような結果に対しても責任を取ると言う覚悟は忘れないで下さいね。
まだまだ書きたいことは有りますが、この辺で・・・

地面から足が全部離れている瞬間が取れた
ブリーディングの世界をご存知ない方にとっては、ちょっとビックリなお話かもしれません

現在、犬には様々な種類のものが有ります。
大型犬から小型犬、長毛から短毛・ワイヤー、細部に至っては目の形や耳の形、そして性質まで千差万別です。
しかし、元を正せば「犬の先祖はオオカミの原種だった」と言うところに行き着きます。
オオカミが人に飼われるようになってから、人間の扱い易いような品種をつくる為の改良が始まりました。
一胎の子供のオオカミの中でも、体の小さいものや、やや毛の長いもの、耳の大きさに特徴のあるもの、気性面など他とは少し違った個体が誕生することがありました。
また長い歴史の中で、気候や風土による変化、そして人間に飼われることなども含め、オオカミ自身も、その生活に適したように進化していったりしました。
人間はそれらに目を付け、同じような特徴を持つもの同士を交配させました。
そして生まれた子犬の中で、一番その特徴を受け継いでいるものを更に繁殖に使い、特徴の固定を繰り返していったのです。
特徴を固定する為に行った方法・・・
それは、同じような特徴の遺伝子を持つ、親・兄弟(同胎・前胎・後胎も含む)などの極々血縁の近いものとの交配でした。
「親子掛け」とか「兄弟掛け」と言われるものです。
イン・ブリードとも言います。
こう言ったことを長い年月を掛けて繰り返し、現在の固定された純粋種が誕生したのです。
しかし、この方法は悪い遺伝子も伝わってしまうので、それらも固定されることになります。
犬種によって、罹りやすい遺伝子疾患があるのはその為なのです。
サラブレッドも同じ方法で作られました。
彼らは野生では生きていけません。
走る為だけに作られているので、500kg前後ある馬体(種牡馬になると、もっと重くなります)をあの細い足で支えなければなりません。
走っている時に、1本の足に掛かる負荷は、芝で走った場合は1tと言われています。
本来、野生の状態では、競走馬のようにあれだけ長い距離を全力疾走することは、まずありません。
なので、それに耐えられるように心臓も異常に大きく作られているのです。
このように、人間の都合の良いように動物たちは改良されていきました。
サラブレッドの走る姿に感動するのは、このような宿命を負って生まれてきたことを、同じ哺乳類である私たちのDNAも知っているからなのかもしれませんね。
イン・ブリードは初期の段階では、これといった弊害が現れる率はかなり低いですが、究極まで行ってしまうと、受胎率が下がったり、死産や流産・奇形などをを発症してしまいます。
そこで、一度、全く血の違うものと交配をする「血を戻す」と言うことを行います。
これをアウト・クロスと言います。
アウト・クロスは予想の付かない子犬が生まれたりします。
血の繋がりが無いのですから、当たり前なのですけれども。
「雑種犬」たちは、これに該当します。
純粋種の固定にも、この方法が使われました。
ひとつの犬種を作出するには、何種類かの特徴を持つ犬同士の交配も行われています。
なので、元を正せば、現在は純粋種として認定されている犬種も雑種だったと言うことになります。
いまMIX犬が流行っており、それをデザイナーズ・ドッグと呼び、高値で取り引きされていることに賛否両論がありますが、ちゃんとした知識を持ち、目的があって作出するのであれば、私は良いのではないかと思っています。
私の希望としては、性質が穏やかで、しつけがしやすく、病気に強く、毛が抜けなくて、無駄吠えもしなくて、手入れがしやすくて(カットは伴わずグルーミングしやすい)・・・なんて犬種が出来るのであれば、お願いしたいですけれどね~

今は、毛の抜けない盲導犬を作出する為に、「ラブラドードル」と言う、ラブラドールとプードルの雑種が固定化されつつあります。
どちらも利口でしつけがしやすいので注目されましたが、プードル色が強くなると、グルーミングに手が掛かったり、カットなどの費用が盲導犬ユーザーの負担になるので、なかなか広まらないようですね。
また、別の犬種を交配して更なる固定化の道に進むのでしょうか・・・
見守りたいと思います。
さてさて、ショー・ドッグの話しに戻しましょう。
ショー・ドッグも、スタンダードに近い犬作りの為に、これまでは親子掛け・兄弟掛けは当たり前のように行われてきました。
例えば、5頭生まれたうちの4頭が死産だったり、奇形であったりしても、たった1頭でも大変優秀な子が生まれれば、それで、その繁殖は大成功な訳です。
その子を基礎として、そこから、また優秀な遺伝子を伝えていくのです。
優秀な子犬以外で、家庭犬としても不適切なものは、人知れず処分される運命にあります。
ブリーダーとは、そういう仕事なのです。
必要な遺伝子を固定する為に、止むを得ず、イン・ブリードを行わなければならないことがあるのです。
こう言ったことは表には出ないので、「単犬種を繁殖しているところから購入すれば安心な犬が手に入る」と言う間違った知識は捨てて頂きたいと思います。
子犬の中には、見た目には現れなくても、遺伝子として保有している場合があり(ヘテロ因子)、同じようにヘテロ因子保有の犬と交配した場合には、あくまでも確率としてですが、子犬の半分には好ましくない疾患が現れることになります。
潜在的に抱えている場合も含めると4分の3が好ましくない因子持って生まれてくることになります。
父犬・母犬が表向き健全であっても、です。
繁殖の難しさ・恐ろしさとは、そういう所にあります。
某犬種団体は、近年になって、近親繁殖で生まれた子犬には、それが解るように明確に記す方法が取られるようになっています。
繁殖は、動物愛護の精神に反していますか?
しかし、こういった長年に亘るブリーダーたちの努力で、いま、あなたの飼育目的に合った可愛い愛犬が手元にいることを忘れないでください。
純粋種の場合のイン・ブリードは、そのまま近親繁殖の意味でOKですが、アウト・クロスは「異系統繁殖」と考えてください。
ドッグ・ショーなどで、ある同じ犬種をご覧になっていると、いろんなタイプの犬がいることに気付かれると思います。
犬種は同じでも、長い歴史の中で、たった一人の方が作出に尽力されてきた訳ではないので、それぞれの好みのタイプと言うものがありました。
同じ種類でも、ある程度固定されてくると、違った基礎犬で繁殖される為、血筋の違ったものも作られる結果になります。
同じ犬種ですが、この血筋の違うもの同士を交配させたものがアウト・クロスと呼ばれるものです。
人間の場合もハーフの子は、組み合わせが成功するととても美人だったり美男子だったりしますが、犬の場合も、組み合わせが上手くいくと、驚くほど素晴らしい犬が誕生することがあります。
しかし、アウト・クロスをしたことによって、血に統一がなくなり、次回の繁殖の際に、相手選びが難しく、子犬にバラつきが出る率が高くなります。
アウト・クロスは、繁殖で行き詰った(改良の余地がなくなった)際に取られる手段です。
もうひとつ、ライン・ブリードと呼ばれるものがあります。
これは、イン・ブリードよりもう少し緩いもので、マイナス面も比較的少なく、また、大きな乱れも無く粒の揃った子犬が出来やすいので、一番よく取られている繁殖方法です。
しかし、飛び抜けて良い犬が出る率も低く、限界がある場合もあります。
こういった場合にイン・ブリードを行うと、良い点・悪い点がハッキリ出るので、改良の成果を見たり、今後の見直しを図るために、イン・ブリードを行う場合もあります。
なので、イン・ブリードは、正しい知識のもとではとても重要な繁殖方法なのです。
なかなか例え話で説明するのは難しいですが、人間に例えると、
・イン・ブリード → 3親等内での血族結婚
・アウト・クロス → 外国人との国際結婚
・ライン・ブリード → 日本人同士で同じ名字の人で、何代か前は親戚同士だったかも~と思う人との結婚
くらいに思って頂ければ良いでしょうか。
ちょっと幅広過ぎる感じもしますが

しかし、前回にも書きましたが、何事も経験から勉強出来ることは多く、初めは誰でも初心者です。
むやみやたらに繁殖に挑戦してください、と言っている訳では有りませんが、子犬の誕生や成長から得られる感動・愛・涙は、何物にも代えられません。
家族愛や人間愛についても考えさせられたり、特に、子育てについては、寧ろ愛犬から学ぶことが多々あります。
なので、頭ごなしに反対するつもりはありません。
しかし、どのような結果に対しても責任を取ると言う覚悟は忘れないで下さいね。
まだまだ書きたいことは有りますが、この辺で・・・



