今期も毎朝楽しみにしています。『花子とアン』
今週は登場がないようですが、私は
蓮子様がお気に入り。
「ごきげんよう」が誰よりも似合いますよね。着物もきれい。
「ごきげんよう」なんて実際には庶民は耳にしたこともありませんが、ナレーションの美輪さんはお似合いですよね。
以前偶然見かけた皇后さまのお手紙(皇后さまの喜寿を記念した特別展「紅葉山御養蚕所と正倉院裂復元のその後」に展示されていたもの)に、この「ごきげんよう」が出てきて、やっぱり!と思いました。

書き起こして保存したものなので、失礼ながら誤字等があるかもしれませんがご紹介いたします。
眞子ちゃんへ
眞子ちゃんは、ばあばがお蚕さんの仕事をする時、 よくいっしょに紅葉山のご養蚕所にいきましたね。
今はばあばが養蚕のお仕事をしていますが、 このお仕事は、眞子ちゃんのおじじ様のひいおばば様の
昭憲皇太后様、おばば様の貞明皇后様、そしてお母様で いらっしゃる香淳皇后様と、明治、大正、昭和
という三つの 時代をとおってばあばにつたえられたお仕事です。
眞子ちゃんは紅葉山で見たいろいろの道具を覚えているかしら。
蚕棚の中の竹であんだ平たい飼育かごをひとつずつ取り出して、 その中にいるたくさんの蚕に桑の葉を
やりましたね。蚕が大きくなって、 桑をたくさん食べるようになって桑をたくさん食べるようになってからは、
二かいにあるもっと深い、大きな木の枠のようなものの中に移して、 こんどは葉のいっぱいついた太い
桑のえだを、そのまま蚕の上において やしないましたね。
しばらくすると、見えない下のほうから蚕が葉を食べる よい音が聞こえてきたのをおぼえているでしょう。
耳をすませないと聞こえないくらいの 小さい音ですが、ばあばは蚕が桑の葉を食べる音がとてもすきです。
蚕はどうしてか一匹、二匹とはいわず、馬をかぞえるように一頭、二頭と 数えることを眞子ちゃんは
ごぞんじでしたか?
あのとき、眞子ちゃんといっしょに 給桑をした二かいの部屋には、たしか十二万頭ほどの蚕がいたはずです。
眞子ちゃんはもう、万という数字を習いましたか?少しけんとうのつかない 大きな数ですが、たくさんたくさんの
蚕があそこにいて、その一つ一つが白や 黄色の美しいまゆを作ります。
きょねんとおととしは眞子ちゃんも自分で飼ったので、蚕が何日かごとに皮をぬいだり、 眠ったりしながら
だんだん大きくなり、四回目ぐらいの眠りのあと、口から糸を出して 自分の体のまわりにまゆを作っていく
ところを見たでしょう。
きょねんはご養蚕所の主任さんが、 眞子ちゃんのためにボール紙で小さなまぶしを作って下さったので、
蚕が糸をはきはじめたら、 すぐにそのまぶしに入れましたね。
蚕は時が来るとどこででもまゆになりますが、まぶしの中だと安心して、良い形の しっかりとしたまゆを
作るようです。
まぶしには、いろいろな種類があり、山をならべたような 形の、わらやプラスチックのまぶしの中にできた
まゆは手でとりだしますが、 眞子ちゃんが作っていただいたような回転まぶしの中のまゆは、わくの上に
おいて、 木でできたくしのような形の道具で上からおして出すのでしたね。
さくねんは、 ひいおばば様のお喪中で蚕さんのお仕事が一緒にできませんでしたが、おととし眞子ちゃんは
このまゆかきの仕事をずいぶん長い時間てつだって下さり、ばあばは眞子ちゃんは たいそうはたらき者だと
思いました。
サクッサクッと一回ごとによい音がして、だんだん仕事が リズムにのってきて・・・また、今年もできましたら
お母様と佳子ちゃんとおてつだいにいらして下さい。
蚕は、始めから今のようであったのではなく、長い長い間に、人がすこしずつ、よい糸がとれるような
虫を作り上げてきたものです。まゆのそせんは自然の中に生きており、まゆももっとザクザクとした
目のあらいものだったでしょう。
人間は生き物を作ることはできませんが、野生のものを少しずつ 人間の生活の役に立つように変える
くふうをずっと続けてきたのです。野原に住んでいた野生の鳥から、 人間が鶏をつくったお話も、きっと
そのうちにお父様がしてくださると思います。
蚕の始まりを教えてくれる「おしらさま」のお話を眞子ちゃんは、もう読んだかしら。ばあばは 蚕のことで
いつか眞子ちゃんにお見せしたいなと思っている本があります。
女の方がご自分のことを書いている本で、その中に、四年生くらいのころ、おばあ様の養蚕の お手伝いを
していた時のお話がでてきます。まだ字などが少しむづかしいので、中学生くらいに なったらお見せいたしましょう。
この間、昔のことや家で使っている古い道具についてお話してとおたのまれしていましたのに、 暮れとお正月に
ゆっくりとお会いすることができませんでしたので、思いついたことを書いて お届けいたします。今は蚕さんは
おりませんが、もう一度場所や道具をごらんになるようでしたら、 どうぞいらっしゃいませ。たいそう寒いので、
スキーに行く時のように温かにしていらっしゃい。
ごきげんよう
ばあば
眞子様

ニュースによると本日午前、皇后さまは皇居の紅葉山御養蚕所で、今年2回目となる蚕に桑の葉を与える「御給桑」を行われたとのことです。