チモシェンコ大村のロン・ポール研究+くだらない話

ロン・ポール氏のブログ翻訳を通じて、リバータリアン思想・オーストリア経済学について勉強しています。

キプロス危機が浮き彫りにした部分準備銀行制度の危険性

2013-04-03 14:23:14 | 経済
Texas Straight Talk 2013/04/01

Cyprus Crisis Highlights the Dangers of Fractional-Reserve Banking

キプロス危機が浮き彫りにした部分準備銀行制度の危険性(拙訳:チモシェンコ大村)

最近騒がれているキプロスの金融危機は、欧州の銀行システムの本質的な弱点と部分準備銀行制度の致命的な脆弱性を露呈しました。ギリシア国債に過度に投資してきたキプロスの市中銀行は、昨年夏のギリシアの債務再編により、キプロスの国内総生産(GDP)の25パーセント以上にも相当する損失を出しました。不良債権を抱えた銀行は政府に助けを求め、すでに貧窮している国庫からの救済を政府に要求しました。そして今度は、キプロス政府が欧州連合(EU)に救済を求めたのです。

これに対し、欧州委員会、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)から構成されるトロイカが救済の条件として提示したものは路上強盗以外の何物でもありません。銀行が破綻した場合、通常は預金者は保護されるものですが、トロイカは、全国民の銀行預金に対し6.75パーセントから10パーセントの課税を実施することをキプロス政府に要求しました。

経営に問題のあった銀行をまたしても救済することにEU圏の納税者が反発するのも理解できます。しかし、キプロス政府や銀行が取ったリスクの代償をキプロス国民に払わせることもまた犯罪的です。主にロシアのオリガルヒ(新興財閥)が利用しているとされる“タックスヘイブン”(租税回避地)を罰したい欲望に駆られ、EUの有力者たちは、外国人預金者だけでなくキプロスの一般市民をも巻き添えにするつもりなのです。これに対する市民の反発は想像に難くありません。考えてみてください。もし2008年夏に、銀行への7千億ドル支援のために米政府が国民の預金を没収していたとしたら!

この預金課税法案をキプロス国会は否決しましたが、最終的にEUとIMFから提示された修正案にはノーと言えませんでした。その結果、10万ユーロ以上の預金について、預金者の損失は最低40パーセント、最大80パーセントになると見積もられています。数日間だけ続くとされた“一時的な”資本規制は今後1カ月以上続くでしょう。向こう数年間にわたって続く可能性もあります。

今回特に影響を受けたのは高齢者です。彼らはATMを利用したり電子送金をすることができませんでした。2週間の銀行閉鎖の間、ATMでの現金引き出しには厳しい制限がかけられていましたが、報道によると、ロンドンやアテネにあるキプロス系金融機関の支店では、ほとんど全ての預金を引き出せたということです。これを受け、銀行が業務を再開する頃にはほとんど現金がなくなっているだろうとの憶測が広がっています。言い換えると、ロシアマネーはもうすでになくなっている可能性があるということです。

部分準備銀行制度では、預金総額のごく一部しか手元に残されていません。残りは全て貸し出されているのです。そしてこの債権の多くはこげつきます。それだけではなく、ユーロ圏で決められている預金準備率はたったの1パーセントなのです! つまり、100ユーロにつきたった1ユーロを引き出すだけで銀行の現金は尽き、全システムが崩壊するのです。EUが大規模な取り付け騒ぎを恐れ、何十億ユーロもの支援をキプロスにしようとするのも納得です。

しかしEUやIMFの有力者たちは、今回の預金課税案に対するキプロス国民の反発から教訓を得ようとせず、キプロスを欧州における将来の銀行救済のモデルにすることを公けにに話し合っています。銀行預金や年金をはじめ、政府の手が及ぶ資金は全て奪われる可能性が出てきたのです。言い換えると、欧州の金融機関に預けられた預金は、誰の物であれ、安全ではない、ということです。銀行には預金額に相当する現金はほとんどないとユーロ圏の人々が気づいた今、将来の金融危機に際して取り付け騒ぎが起きるのは必至です。同じような事態が米国でも官僚や銀行家の手によって近い将来引き起こされるかもしれません。

残念ながら全ては、部分準備銀行制度とフィアットマネー制度がもたらす想定内の結末でした。政府と銀行は結託して金融システムを独占し、何も無いところから金を生み出すことを可能にしました。その結果もたらされる景気循環が経済に大打撃を与えるのです。ごくわずかな資金をベースに積み上げられた膨大な融資から成る経済は砂上の楼閣であり、崩れ落ちる時を待つのみです。今回のキプロス騒動は米国にとって教訓であり警告であります。我々は連邦準備制度を廃止し、ユーロを買い支えるのをやめ、健全な通貨制度に戻らなければなりません。

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