スロバキア、タトラ山脈の麓より

スロバキア人の夫と2人の娘と私の生活
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これがスロバキア

2015-10-09 | スロバキア2015

家の前の通りの木々が色づき始めました。
来週月曜日はいよいよ雪の予報、こちらは日々寒くなってきています。


スロバキアの郵便配達員さんは女性が多いです。肩から郵便物のたくさん入った大きなかばんを下げ、徒歩で一軒一軒配達してまわります。そんな事情から少し前まで小包は家まで配達されることはなく、郵便局で預かっているという通知だけ郵便受けに入れてくれ、そのお知らせを持って自分で郵便局に取りに行かないといけませんでした。最近は小包はトラックで男性が配達してくれるようになり、それも配達日の朝、携帯にメッセージを送ってくれるというサービスまであり、よく外出してしまう私などは配達員さんと直接連絡を取り、時間を調整したり、私の外出先へ届けてもらったり、日本よりも便利なのではないかと思ってしまうほどです。

しかし、郵便配達の女性はずっと変わらず暑い夏の日も、雨の日も、氷点下の冬、どんなに雪が積もろうと、どんなに道が凍りつこうと徒歩で配達しています。ポプラドの町の配達員さんはまだ集合住宅が多く、団地から団地へ大量の郵便物もいっきにさばけてしまいそうですが、私の村の配達員さんは気の毒です。村中の家々を徒歩で周り、さらに片道30分の隣村まで歩いて配達しています。幸運なことにとてもきれいな女性なこともあってか、マルツェル含め、通りかかった車がとなり村までよく乗せてくれているようですが、運悪く車に出会わなければ往復歩いています。

先日マルツェルはまたこの郵便配達の女性を通勤途中に車に乗せてあげたそうで、帰ってから私に話してくれました。
村から隣村へは定期的にバスが出ています。郵便は国営、そしてバスも国営、郵便配達員さんは無料でバスに乗せてもらえないのかとマルツェルが聞くと、だめなのだそうです。車の免許があれば、配達用にスクーターを用意してくれるそうなのですが、車の免許を取る資金がないと。郵便配達員さんの賃金は国の定める最低賃金だそうです。この最低賃金、毎年少しずつ上がっていますが、私が来たころは1ヶ月370ユーロほど、今も400ユーロほどです。物価は安いとはいえ、私も一人暮らしのワンルームアパートの家賃に毎月200ユーロ払っていました。車の免許を取るには(教習受講料)500ユーロほど必要です。

子供がいなければ外国(西側諸国)へ行くとその女性はマルツェルに言ったそうです。
たとえばお隣オーストリアでウェートレスとして働いた方がよっぽど良い収入になる、実際そんな理由でスロバキアを離れてしまった人たちはたくさんいます。

貧しくて仕事に必要な車の免許を取得することもできない、バスは自分の横を通り過ぎて行くけれどそれに乗ることもできない。こんな環境で働いている、生活している人がいるんだと改めて知り、なんだかとても切なくなってしまいました。

マルツェルはこれがスロバキアだよと。

そう、これがスロバキアの本当の姿なんですよね。
昨年、左翼派の政党が選挙の票稼ぎのため、EU圏内の子供、学生、年金受給者の鉄道料金を無料にするという無謀な政策を打ち出しました。今のところこの政策はまだ健在です。こんな人たちが無料で乗ることができるのに、毎日の仕事に移動の必要なこの郵便配達員さんがバスに乗ることができないなんて、なんて政策なんだと改めて腹立たしくなります。なんだか本当にやるせない、悲しい現実ですね。


今ネルカは風邪で幼稚園をお休みしています。
ケンカもたくさんしますが、ようやくなんとなく二人で遊べるようになってきました。
姉妹がいるっていいですね。


4 Comments

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Unknown (Christine)
2015-10-20 22:34:25
こんにちは。おひさしぶりです。
(スロバキアはChihirkoさんの近所の町にある企業と仕事していたことがあるChristineです)

郵便局員さんは同じ国営のバスに乗せてもらえないなんて・・・。免許保持者にスクーターを支給する予算があるならば、郵便局員のバス代を無料にする方が有益だと思うのですが・・・。
どこの国も完璧だということはないし、日本も豊かに見えてもその陰で色々問題はありますが、なんともやるせない思いになりました。
免許を取るといっても、費用が月給より高いとそう簡単に取れないでしょうし。(日本も確か30万円以上しますので同じようなものでしょうか)

西側諸国で働きたいという事情も想像できる気がします。
私の元スロバキア人仕事仲間は同じような理由でイタリアで3年ほど働きました。最低賃金より高い給料ではあったようですが、やはり西側の方が稼げるのでと。
あと5年以上前ですが、お隣ポーランドはクラクフでも同じような話を聞きました。ヤギエヴォ大学の医学生アルバイトのカフェ店員さんが、医師など専門職の頭脳流出が問題になっていると話していました。(ロンドンなどの病院に流出)

久しぶりのコメントだったので、あちこち飛んでしまってすみません~!
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こんにちは (さくらこ)
2015-10-21 16:45:52
Chihirkoさん、こんにちは

長男にスロバキアを案内されて、旅をした印象を話した時に

冬の厳しさを知らないけれど、スロバキアで暮らしてみたいと言った時に(もちろんスロバキア語は三言ぐらいしか知りませんが)

長男が、そういう人は珍しいよと、

最低賃金の件や、若くて優秀な人程、西側諸国や他の国で働くことを希望し、どんどん流出していると聞きました。

少子化のことや、逆にジプシーの人は子だくさんで家では現地語を話しているので、学校でのスロバキアの授業についていけなくて小学校も行かなくなってしまうことなども聞きました。逆に学費が無料なので、スロバキア人は皆良い職を求める為に修士へ行くとも聞きました。(留年すると退学になり、入り直す2年目は自費を払うシステムなどはいいですね。日本は大学の学費が非常に高いので)

本当に暮らしてみなければわからない様々な問題があるのですね。

郵便局の方の大変さに驚きました。

でも、長男も私もスロバキアが大好きですU+203CU+FE0E
応援してますU+203CU+FE0E
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Christineさん (chihirko)
2015-10-22 18:36:50
わぁ~お久しぶりです。コメントありがとうございます!Kezmarokの方たちとお仕事でつながりがあったってちゃんと覚えていますよ。
そう、オーストリアに住んでいるときは、東欧から来た人たちがたくさんいました。家政婦的なことやウェートレス等ブルーカラーも多いのですが、建築家や医者、エンジニア等専門職も多かったです。
やはり周りでも出ていく人が多いです。
なんだか残念ですよね。
スロバキアも将来ゆっくり変わってくれればなと思います。

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さくらこさん (chihirko)
2015-10-22 18:47:33
スロバキアで暮らしてみたいとの言葉、すごいです!
きっと息子さんの案内が素晴らしかったのでしょうね。
私の両親も何度か来ていますが絶対にそんなこと口にしませんから。

そう、優秀な人材、頭脳流出もスロバキアの重大な問題です。女の子はとくに外国人とチャンスがあれば結婚して西側諸国へ出てしまうパターンがとても多いようですし、スロバキアの特に地方ともなると雇用の場も少なく、ならばと国外に出てしまう人も多いです(数年の出稼ぎから完全な移住まで)。残念なことですよね。
でも本当に学費がかからないのはとても助かります。それでもこれまた将来のために、費用がかかっても大学からは外国へ留学というのも決して少なくないことのようですが・・・。
でも大統領が変わったり、スロバキアも少しずつですが変化していっているように思います。
私もスロバキアが大好きです。

コメントありがとうございました。
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