地理人レポート

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Googleマップだけじゃない!海外近隣国のネット地図(2020年版)

2020年09月03日 | 全般・その他
日本にはYahoo!地図やマピオン、MapFan等さまざまな地図があることを紹介しました。海外を見るときこそ皆さん、Googleマップを見ると思います。いやいや、これも必ずしも正解ではありません。

Googleマップがメインなのは、日本近辺では少数派?

日本近辺でGoogleマップをメインで使ってる国や地域は台湾と香港(たぶんマカオもそう)くらい。日本と接する中国、韓国、ロシアはGoogleマップはメインではありません。中国ではGoogleが撤退しているためそもそもGoogleマップが見られなかったりするのですが、北朝鮮はそもそも国内から見られるネット地図がないはずです。意外な地図が詳しかったりするのであとで紹介します。

先に断っておきますが、私はテクノロジーの知識はありませんので、API〜といった情報は全く把握しておりません。また、現地で公共交通(特にバス)を使うので、バス乗換検索の画面が多々出てきます。

(私のスマホの海外地図アプリたち。中国、ロシア&CIS諸国、韓国に行く際は、上中段の6アプリは入れておきましょう。PCだとそれぞれ同サービス名で、Webから見られます。)

中国では「高徳地図」と「百度地図

中国のネット規制は有名ですが、中国のwifiにあやかるとGoogle(検索、地図、メール)もTwitterもFacebookも使えないことでかなり不便します。つまりそれだけアメリカのサービスに依存してるという訳ですが。ところが中国本土で使える香港SIMをAmazonで事前に買っておけば、お手持ちのSIMフリー携帯で、上記のサービスが使えます。こんな感じでGoogle MapでGPSが使え、現在地も軌跡も取ることができます。(画像は重慶市)

とはいえGoogle Mapは私の中ではGPS記録用で、中国滞在時は基本的には使いません。スポットの情報もあまりないし、公共交通ユーザーからすると乗換検索が壊滅的に弱いからです。

中国のネット地図2トップ、高徳地図(高德地图)と百度地図(百度地图)の比較は使い方解説比較記事に詳しく書いてあります。シェアとしても公共交通の検索も高徳地図が優勢らしいんですが、私個人は百度地図をメインで使っていますが、その要因は主にビジュアルです。

(左:高徳地図、右:百度地図)

引いて見たときの情報量が、高徳地図のほうが少なく、百度地図のほうが多いのです。


(左:高徳地図、右:百度地図)

かなり拡大すると似た詳しさになってはくるんですが…高徳地図のほうがフラットで情報が少なく今風なのかもしれませんが、私からすると百度のほうが好みです。なお、ストリートビュー(全景)があるのも百度地図の強みです。


そして、日本の地図だと体験できないのが、バス停を押すとそこを通るバスの系統や路線が出てくるという機能。日本でもApple地図は実装してますが、その他の地図では見たことがありません。ところでこの上海17路の車窓風景、新旧市街地の景観の変化が激しく楽しいので、動画をご覧下さい(ビリビリ動画)。中国では倍速で動き字幕を入れ、なぜか日本のアニソンを流すバス前面展望が流行しています。


ところで中国の地図ということは、中国が主張する国境に忠実だということです。南シナ海の、中国以外の国が「そこ中国じゃないだろ…」と言うエリアこそ中国として強調されて描かれます。ところで気になるのは北方領土。ロシア領土として描かれているかと思いきや、国境線は日本と同じ引き方をして日本領土としながらも「ロシア占領」と書いてあります。案外そういう認識なのね…。

韓国ではNaver地図kakaomap

韓国ではGoogleマップは使えますが、韓国にデータセンターを持たない企業への地図データ搬出禁止の法律があるようで、Googleマップは公的な地図や道路交通情報を反映できないようです。

(左:Naver地図、右:kakaomap)

そこで使われてるのがNaver地図(네이버 지도)とkakaomap(카카오맵/旧Daum地図)。Naverのほうが圧倒的にユーザーが多く、韓国Google Mapにはストリートビューがありませんが、Naver、kakaoの両地図ともストリートビュー(ロードビュー)に対応しています。さらに最近日本語対応もしています。


はい、こんな具合に日本語になります(日本語のスマホに入れると第一に日本語で表示されます)。そういえばハングルは日本の仮名のような表音文字です。韓国人の感覚からすると漢字は不要、読みだけ分かっていればいい…と思っているようで、あらゆる地名がカタカナに訳されます。フェヒョン駅(会賢駅)、ミョンドン駅(明洞駅)は漢字で書いてくれ…と思うのですが、その感覚はないようです。漢字は彼らにとって、日本で言う古文漢文のような「昔使ってた、学校で勉強する難しいやつ」という認識で、「漢字が嫌い」と言う人の多いこと多いこと…。

(左:Naver地図、右:kakaomap)

さきほどの高徳地図と百度地図の比較と同様、拡大すると、フラットで情報が少なめのNaver地図と、色も情報も多めのkakaomapの違いが見て取れます。もうお気づきかもしれませんが、私はkakaomap派です。



(左:Naver地図、右:kakaomap)
韓国で何より進んでいるのはバスの検索。各バスにGPSがついており、いまバスがどこを走っているのか、指定のバス停に何分何秒後に来るのかが出てきます。ところでサムイルギョと書いてあるけど正しい読みはサミギョでは…。あるいは漢字で三一橋と書いてくれると覚えやすかったりしますが。



そんな日本語・漢字地名で見たいあなたには!コネスト地図があります。日本人向けに編集された韓国のスクロール地図。どこにその需要があるのかは分かりませんがかなりちゃんと編集されており、Webだけでなくアプリもあります。地図も美しい。ただ、乗換検索やストリートビューはありません。



ところで、漢字の固有名詞を調べても分からないこの国でよく漢字を特定したな…という努力の跡が見られます。「(株)大静環境」とか「基山橋」とか、ものすごく調べるのが大変だったはずです。まぁいいや。


ところで日本海に浮かぶ某小さな島についての熱が強めの韓国。超大きめな字で「独島(トクド)」と出てきます。まぁこれは韓国ならそうだろうなという感じですが、韓国の書店で売られていた日本の紙地図で「竹島」が修正液で消されて売られていたのはビビった…。

ロシアではYandex2GIS

あれ、忘れてませんか?日本の隣国はまだまだありますよ。しかもこの隣国もメインはGoogleマップではないのです。そう、ロシア。全然話題に上がりませんが、ロシアでは圧倒的にYandex Maps(яндекс карты)が主流です。次いで2GIS(2ГИС)という地図もあります。ところでこのYandexというサイト、日本におけるYahoo!のようなポータルサイトで、メールや乗換検索、宿の予約等色々な機能を統合したポータルサイトです。

(左:Yandex Maps、右:2GIS)

情報量は似ていますが、どっちかというと2GISのほうが濃い目です。Yandexは英語・ロシア語の表示が選べます。


バス検索画面はこんな感じ。路線によってはGPSでバスを追うことができます。交通系はYandexのほうが強いので、乗換検索の際はYandexを使います。ロシアの地図と紹介しましたが、旧ソ連(現CIS諸国)でもこのYandex・2GISペアがGoogle以上に活躍します。


さて、一応見ておきましょうかね、北方領土。中国や韓国と異なり、国境線を引いて強く主張してきませんが、しれっと「ユジノクリリスク(国後のロシア名)」「クリリスク(択捉のロシア名)」と表示されています。クリリスクを拡大すると…Google Mapでは真っ白ですが、Yandexでは道路や施設の情報も出てきます。



Hotel Itrup(ホテル イトゥルプ←択捉)なんてあるんですね…。予約できそうな画面ですが、残念ながらボタンを押しても反応なし、公式サイトもなしということで情報はつかめず…。

北朝鮮は案外OpenStreetMap

最後に北朝鮮です。日本編で紹介し忘れました、地図界のWikipedia「OpenStreetMap」ですが、北朝鮮では一番詳しい地図です。平壌駅付近を見てみましょう。

(左:Google Map、右:Naver地図)

世界最強Google Mapと韓国最強Naver地図、やはり平壌では情報薄めです。これでも一時期よりはかなり詳しく表示されるようになったんですが。

(左:kakaomap、右:OpenStreetMap)

続いてkakaomapとOpenStreetMap。群を抜いて詳しいのがOpenStreetMapです。ちなみに路面電車の線路も書いてあるのはOpenSteetMapのみ。現地で乗って確認したのですがルートは3路線とも正確です(私が乗ったのは2系統だけだけで、1と3は他の移動の際車窓から見て確認した限り)。kakaomapはOpenStreetMapより情報は薄いものの、施設名は詳しく書いてあります。というか平壌駅前ってやたらと大学が多いのね…(대학の表記が大学)。


そんなわけで海外、といっても近隣国の地図サイト、アプリを紹介しました。近隣情報しか押さえておらず、他にもGoogle Map以外の地図がメインで使われている国や地域がある気がするのですが、全然押さえきれておりません。ヨーロッパやアラブ世界にはありそうな気がするんですが、どうなんでしょう。ご存知の方いましたら、お知らせ下さい。

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