少しぶりに蔵馬受けの小説です。サイトではなくブログないで申し訳ないのですが、
あらすじと言うより、こういう場面があってもいいなと思い書いてみました。
・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥
武術会で、決勝が終わった後に、「心配させやがって」みたいに言って
飛影が蔵馬を抱く、そのあとの話です。
・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥
「あっ――――」
激しい風が吹いた。決勝の終わり、その数日後に二人は海辺にいた。
乾いた土ぼこりが舞い、蔵馬の長い黒髪を乱していく。
はっと、飛影が蔵馬を見つめた。人一人分空いた二人の距離が、縮まっていた。
ぐらっと傾いた蔵馬の身体を飛影が抑え込んでいた。
膝をつきそうになった蔵馬の、右手を掴めば二人の視線が交わった。
「しっかりしろ、まだ――」
言いかけて、飛影は口を閉ざした。まだ傷が治っていないだろうと、言いかけてやめたのだ。
鴉との闘いで流した血まみれの身体が、まだ鮮やかに記憶に残っている。
「…大丈夫、ですよ、ちゃんと手当てしてます」
小さく、引かれた腕を見ながら蔵馬が言った。
真っすぐ見つめ返されると、深い碧色の瞳に吸い込まれそうだ。
「痛むなら言え、馬鹿が」
口を開けば優しい言葉が出ないのはなぜだろう。
あの時、いいと言った蔵馬の必死な瞳が僅かに蘇る、けれどそれとは違う……もどかしさの漂う色だった。
「なんだ」
人一人分より近い距離で二人は見つめ合っていた。
「……終わった闘いは振り返らなくていい。今お前が…」
生きているなら、と口に出かけて飛影は続けられなかった。こんな言葉……発したことがないのだ。
「…飛影……あの…魔界に」
そっと、俯きながら口を開いたのは蔵馬だ。
飛影の袖をそっと掴み、そして乱れた黒髪をそのままに口を開いた。
「魔界に、帰るん…」
「だから何だ」
言われ、蔵馬が息を飲んだ、一瞬手を握り、そして遠くの船を見た。
「……魔界の…どこに」
「何が言いたい」
もどかし気に、飛影は返した。
……戸惑うような蔵馬の瞳が、飛影の手に重なっていた。
「……もう…あえないのかと…」
紡がれた言葉に、ため息を隠したのは飛影のほうだった。
あれほど強く立ち向かっていた蔵馬の姿が、小さく見える。
妹である雪菜よりも小さく華奢に見える、力を込めたら潰してしまいそうなくらいだった。
人間の…幽助のそばにいる女よりもずっと小さく見える。飛影を見ているくせに、飛影の瞳から
わずかにそれた部分を見ている。
「誰が、会えないと言った」
「だっ…て」
つん、と触れたのは飛影の指だった。
蔵馬の小さな額の真ん中を、飛影は突いていた。
「…おれが、会いに行ってはいけないか」
はっと、蔵馬が後ずさった。
「お前を抱いたのが……単なる衝動だと思うか」
言われた言葉に、蔵馬ははっきりと視線を逸らした。
「お前が生きていることを、確かめたいと言ったら…駄目か」
蔵馬の手を、今度は両方飛影は掴んでいた。
熱い、飛影の手のひらだった。
「俺が、会いに行く」
母親を慕っていることは分かっている。それは恋でも愛でもないことも。
けれどいつか、母よりも大事な存在になって見せる……。言わないけれど思っていた。
・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥
武術会の最中
蔵馬を初めて抱くのは凍矢戦で復した後(と言う捏造)か
鴉戦の後か、というどちらでもおいしい気がするのですがね。
ラストの日に思い切り熱い告白をして蔵馬を抱くっていうのもいいし…。
でも
二人はすれ違うということもありそうです。
あらすじと言うより、こういう場面があってもいいなと思い書いてみました。
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武術会で、決勝が終わった後に、「心配させやがって」みたいに言って
飛影が蔵馬を抱く、そのあとの話です。
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「あっ――――」
激しい風が吹いた。決勝の終わり、その数日後に二人は海辺にいた。
乾いた土ぼこりが舞い、蔵馬の長い黒髪を乱していく。
はっと、飛影が蔵馬を見つめた。人一人分空いた二人の距離が、縮まっていた。
ぐらっと傾いた蔵馬の身体を飛影が抑え込んでいた。
膝をつきそうになった蔵馬の、右手を掴めば二人の視線が交わった。
「しっかりしろ、まだ――」
言いかけて、飛影は口を閉ざした。まだ傷が治っていないだろうと、言いかけてやめたのだ。
鴉との闘いで流した血まみれの身体が、まだ鮮やかに記憶に残っている。
「…大丈夫、ですよ、ちゃんと手当てしてます」
小さく、引かれた腕を見ながら蔵馬が言った。
真っすぐ見つめ返されると、深い碧色の瞳に吸い込まれそうだ。
「痛むなら言え、馬鹿が」
口を開けば優しい言葉が出ないのはなぜだろう。
あの時、いいと言った蔵馬の必死な瞳が僅かに蘇る、けれどそれとは違う……もどかしさの漂う色だった。
「なんだ」
人一人分より近い距離で二人は見つめ合っていた。
「……終わった闘いは振り返らなくていい。今お前が…」
生きているなら、と口に出かけて飛影は続けられなかった。こんな言葉……発したことがないのだ。
「…飛影……あの…魔界に」
そっと、俯きながら口を開いたのは蔵馬だ。
飛影の袖をそっと掴み、そして乱れた黒髪をそのままに口を開いた。
「魔界に、帰るん…」
「だから何だ」
言われ、蔵馬が息を飲んだ、一瞬手を握り、そして遠くの船を見た。
「……魔界の…どこに」
「何が言いたい」
もどかし気に、飛影は返した。
……戸惑うような蔵馬の瞳が、飛影の手に重なっていた。
「……もう…あえないのかと…」
紡がれた言葉に、ため息を隠したのは飛影のほうだった。
あれほど強く立ち向かっていた蔵馬の姿が、小さく見える。
妹である雪菜よりも小さく華奢に見える、力を込めたら潰してしまいそうなくらいだった。
人間の…幽助のそばにいる女よりもずっと小さく見える。飛影を見ているくせに、飛影の瞳から
わずかにそれた部分を見ている。
「誰が、会えないと言った」
「だっ…て」
つん、と触れたのは飛影の指だった。
蔵馬の小さな額の真ん中を、飛影は突いていた。
「…おれが、会いに行ってはいけないか」
はっと、蔵馬が後ずさった。
「お前を抱いたのが……単なる衝動だと思うか」
言われた言葉に、蔵馬ははっきりと視線を逸らした。
「お前が生きていることを、確かめたいと言ったら…駄目か」
蔵馬の手を、今度は両方飛影は掴んでいた。
熱い、飛影の手のひらだった。
「俺が、会いに行く」
母親を慕っていることは分かっている。それは恋でも愛でもないことも。
けれどいつか、母よりも大事な存在になって見せる……。言わないけれど思っていた。
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武術会の最中
蔵馬を初めて抱くのは凍矢戦で復した後(と言う捏造)か
鴉戦の後か、というどちらでもおいしい気がするのですがね。
ラストの日に思い切り熱い告白をして蔵馬を抱くっていうのもいいし…。
でも
二人はすれ違うということもありそうです。
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