水にただよう浮草日記

自称文人、でもあっちへこっちへ行方定まらない。そんな浮草が芝居、映画、文学、美術、旅に関してのコメントを書き連ねます。

映画ノマドランド

2021-09-29 12:44:11 | 日記・エッセイ・コラム
下高井戸シネマでやっとノマドランドを見ることができた。
アメリカという国、中西部という広大な大地を持つ国
広大な砂漠のような大地、その地平線に現れる美しい夕焼け。
夕焼けは人生の終焉を意味する。
人生の終焉にある人たちが残された人生の生き方、死に方を求めてさすらう。
アメリカという大国、
年金だけでは生きていけない国。
季節労働者として身銭を稼ぎ、車上で生活し移動する。
「ホームレスではなくハウスレスよ」と、スーパーでばったり会った知り合いの娘に、主人公が答える。その娘に学校で教えたある言葉を言わせる。
    明日、また明日、また明日と時は小きざみな足取りで一日一日を歩み
    消えろ、消えろ、つかのまの燭火、人生は歩いている影にすぎぬ
人はさすらうことに憧れる、私たちの年代は、「路上にて」という小説や映画イージーライダーに憧れて育った。そのあこがれの国の、そのイージーライダー世代が、死に場所を求めて今なお放浪している。
助け合いながらグループで移動する、わけあり高齢者たちのコミュニティとの出会いと別れ。
出会ったある男性に誘われて、定住しようとも考えるが、また車上の人となる。
親切で温かい人の中でこの女性はあまりにも強すぎるのだろうか?
自由と独立のフロンティア精神のDNAゆえか?
なぜ穏やかな老後を迎えられない?
クリスマスシーズンにアマゾンの配送センターで働き
ある季節は広大なじゃがいも畑と巨大なコンテナでの仕事、
ハンバーショップでフライトポテトを揚げ、焼けた肉をひっくり返す
中西部の夜の人気のないストリートを歩き
居酒屋でカントリーを聴き、ちょっと飲んだり踊ったりもし、
ある冬の夜、ガソリンスタンで車を止めていたら、ホームレスと間違われ、慈善的な教会を案内されたり、
岩山が果てしもなく続く観光地で迷子になったり、
雪交じりの風と波が打ち寄せる断崖を歩いたり、
すべて一人、孤独が全編を貫く。
一人で生きていくのであり、一人で死んでいくであるという定説を中国人の映画監督がアメリカ人とその大地を通して語った映画。



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