あの戦争はなぜ途中で止められなかったのか。
せめて広島、長崎に原爆が落とされる前に、
東京大空襲の前であれば、
日本中が焼夷弾で焼け野原のなる前に
沖縄戦の前であれば、
インパール、レイテ島、硫黄島などが玉砕した時、
すべての戦艦が撃沈されたとき
敗戦が分かっていたのに何故誰も止めることをしなかったのか。
国民をだまし続けた大本営という機関とは何だったのか、
天皇と軍部、統帥権が独り歩きした。
そもそも、真珠湾攻撃なんでいう、無謀な行為をなぜ。
鉄、石油も尽き果て、米英という大人と赤ん坊くらいの国力の差がありながら、なぜ?
もっと遡って、満州国建国という関東軍の暴走をなぜ政府が黙認したのか。あの時ならまだ。
盧溝橋事件から日中戦争へと突き進み, 泥沼化していき、南京大虐殺なる状況を生み出した。
松井石根が南京侵攻を指揮し首謀者と言われる。上海戦線でもはや力尽き軍規乱れ、食料などの調達を現地で行うしかなかったから?。その虐殺行為を自分は知らなかったと言うが責任は自分にあると言う・
この劇は南京大虐殺がなぜ起きたのか描いたものだ。
いままで、「追憶のアリラン」で朝鮮支配の実態を、「遺産」では人体実験の731部隊と現代の薬害エイズ問題とのつながりを、そこまで言っちゃっていいのかというように劇にしてきた。
日本は焼け野原の中から高度成長へ、経済大国になったのだから、この国家の犯した過ちと惨劇、人々をして凄惨な状況に追い込んだ原因など、できれば知りたくないし見たくない、まがりなりにも今何とか幸せにやっているのだからいいじゃないか、そういう私たちを厳しい問いの中に叩き込むのがこの劇団。
丁度渋谷のユーロスペースで4時間半に及ぶ「東京裁判」4Kデジタルリメーク版を見て圧倒されたところだった。
松井石根、 28人のあのA級戦犯の一人で、東条英機らと裁かれ死刑を宣告された。映像で登場する松井はなんの威厳もない普通のお爺さんにしか見えない。他の戦犯らもオーラも何もなく、こんな、しょうもないおじいさんらに国民は操られていたのかと思うと情けなくなった。この映画は進駐軍が残した映像をもとに、天皇の戦争責任を問いつつ戦勝国が敗戦国を裁いたものにすぎない。日本人が日本人の手で、真実を明かし、この戦争の犯罪者を裁判にかけて判決をくだすということを未だにていないと思う。
この劇では、松井石根を描いている。彼は平和を望み、日中親善を模索し蒋介石や孫文と親交があったといい、南京侵攻で日本軍の軍規が乱れ虐殺などの行為に及んだことを知らなかったという。そこに弁護士と称する人物や巣鴨プリズンでの教誨師などが登場し、知らなかったなどどは言わせないと厳しく責任を問い詰める。
何故上海で勝利していたにもかかわらず、軍をそこで留めることをせず、なぜ南京まで侵攻するよう指示したのか。
軍においては食糧などは届かず尽き果て、現地調達する、すなわち略奪するしかない状態だっだということを知っていたはずだ。
その上、上海ですでに一万人が戦死しており、士気が落ち、闘う気力も失われやぶれかぶれのようであったというではないか。
責任は自分にあるといいながら、なんらの責任を果たしてはいないではないか。
東京裁判で裁かれる前、伊豆に観音様を立て、仏門に入っていたというのでこの劇のタイトルが仏教の言葉で無畏(むい)というらしい。初めて知った言葉だ。
この劇団はこれからもあの戦争の実態を暴き続けると思う。