水にただよう浮草日記

自称文人、でもあっちへこっちへ行方定まらない。そんな浮草が芝居、映画、文学、美術、旅に関してのコメントを書き連ねます。

演劇 「サヨナフ」

2022-07-02 20:11:58 | 日記・エッセイ・コラム
オフィスコットーネ 第5弾サヨナフ -ピストル連続射殺魔ノリオの青春

1968年
東京プリンスホテルでガードマンを、京都八坂神社でもガードマン、函館、名古屋でタクシー運転手を、ピストルで射殺し連続射殺魔と呼ばれた永山則夫の生い立ちを、姉と母親の関係性を中心に描いた演劇。
則夫の母親役の女優さんが忘れられない、姿、立ち居振る舞い、訛りなどのリアル感に。
亭主は戦争から生還するが、博打にのめり込んで帰ってこない、子ども生まれるし、自分のことだけで精一杯、貧困に疲れた姿。
則夫は幼少期極寒の網走に母親に置き去りにされた
寒く、食べ物がなく
家出をくりかえし
窃盗し
集団就職で渋谷へ
外国船密航
住み込みでの牛乳配達
港のたちんぼう
東京、京都、名古屋、北海道など放浪し
横須賀米軍宿舎でたまたま手にしたピストル、追い詰められて相手を撃った。
永山則夫の告白本「無知の涙」が発売されたとき、自分は高校生だったと思う。
沖縄返還、ベトナム戦争反対、大学紛争、世の中は騒然としていた。
余儀なく、余儀なく、余儀なく、余儀なく この言葉が延々と続くこの本に誰もが衝撃を受けた。
当時革命だ、造反有理だなどと叫んでいた学生の家庭はみな大学に通えるほど裕福だったということに気づかされ、貧困が存在することを知らしめた。極貧と差別にあえいだ少年の、底辺からの叫びのようなこの本に恐れをなし、共感し、裁判に注目した。
永山則夫の物語は、ある多感な少年が貧乏ゆえに犯罪を犯さざるを得なかったというところで終わるのはなく、逮捕されてから実は始まる。
獄中で資本論や法律書などの専門書を読破し、階級意識に目覚め独自に進化し、小説などの執筆活動、法廷闘争、死刑廃止論争に至るというのが本当の物語だ。
密航で逮捕され、横須賀の留置所で東大法学部の学生と一緒になったときがあった、学生に夜学へ行って勉強しろと言われたが、あの時共産党宣言を読めと言われていたら、あの犯罪は起きなかったかもしれないと彼は言っている。
被抑圧階級という視点ですべてを捉え、裁判官に対して、あんたみたいなアカデミックな階級に裁かれたくないと叫び退廷させられ、心神喪失で情状酌量を得ようとする弁護人を3回解任した。貧困と無知、それを許している国家というものの姿を暴く裁判でなければならないと10年以上も法廷闘争を続けた。ルンペンプロレタリアートと自分のこと言い、無知故に仲間殺しをしてしまった、生きたい 無知をなくすためにと叫びながら、東京高裁で無期懲役をいったんは得たが、最高裁で差し戻され1987年死刑が確定した。国は処刑を急ぎ、やがて存在は忘れ去られた。
永山子ども基金というのがあるというが、現在、格差社会が強まっている。


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