駒沢公園では「肉フェス」が終わり、静かになった。中央広場の鉄塔、その下の池にいたカルガモがいつの間にか一羽もいない。強い風に水だけが揺れている。黄金色の銀杏が散ってランニングコースを覆う。建設中のバレーボール体育館の、屋根のアーチの間から見える雲が茜色に変わって、早い夕暮れがやってくる。もののあわれだなあ。
沖縄に関する芝居について二本。
東演 「琉球の風」作~中津留章仁・演出~松本祐子
沖縄の過酷な状況を知っていますかと問いかける。島津藩からの侵略の歴史、本土決戦を避けるための捨て石をなり地上戦で40万人が死んだあの戦争、そして本土復帰といいながら、なお米軍基地に占領されている現実、とりわけオスプレイ配備、普天間基地と高江のヘリパット建設について問いかける。
そしてなによりも我々本土の人間の傍観者としての無責任な態度と無関心、それこそが問題であると訴える。
舞台は受付カウンターを備えた旅行代理店の事務所、事務員たちが新しい沖縄ツアーの企画を練っている。沖縄出身の女子事務員、そこに現地対応してくれるという女子事務員の兄と称する男性が、アロハを着て事務所を訪れる。実はこのツアー、辺野古や高江を回ることで一般参加者たちに反対運動に理解を求める狙いがあるものだった。いろいろな人物が次々と吉本新喜劇風に登場する。沖縄について無知な同僚、ツアーに申し込んた大学の先生、環境庁係官、島袋さんという東京で辺野古基地建設反対運動をしている人など。すったもんだののち、ツアーは行われるものの、沖縄の現状は変わらず、旅行代理店は何もなかったように、普通の観光を求めてカップルが立ち寄って平和な日常が続く、で幕となる。
新聞やテレビがやらない問題提起をきちんとやって東演は立派だと思う。
こまつ座 「木の上の軍隊」
沖縄、伊江島、舞台には幾重にも枝が伸びツルが絡み合った巨大なガジュマルの樹。観客を南の島へ誘い込む。
激しい地上戦が行われ、二人の兵士がこの巨大樹木へ逃げ込み身を隠した。一人は本土出身の上官、もう一人は伊江島出身の新兵。
あと木の生霊のような女が語り部として登場する。
その樹の中という閉ざされた空間での密室劇のように二人の会話が続く。沖縄戦の話、戦争へ駆り出されたいきさつや生い立ち。食料を巡るいさかいや力関係の逆転などを経て、二人は戦争が終わったことに気がつくが、木から下りることができない。
沖縄という風土、戦争という人間を限界に追い詰める状況を語っていると思う。