水にただよう浮草日記

自称文人、でもあっちへこっちへ行方定まらない。そんな浮草が芝居、映画、文学、美術、旅に関してのコメントを書き連ねます。

映画「最後の追跡」

2021-04-11 10:25:02 | 日記・エッセイ・コラム
映画 最後の追跡 (ネットフリックス )


ネットフリックスで、愛の不時着、梨泰院クラス、スタートアップ、ヴィンテンチオなどの韓国ドラマやシカゴ7裁判など劇場公開されなかった映画を見ることができてありがたい。

風で砂塵が舞うような荒涼とした大地、トランプの地盤のような保守的な西部テキサス、銀行強盗を繰り返す兄弟。彼らには追い詰められた者の正義と論理があった。 家族の財産である牧場を守り、離婚しているとはいえ、息子には自分たち兄弟のような人間になってほしくない、貧困や負の連鎖を止めるという正義。牧場がミッドランド銀行の抵当に入っており、兄弟の母親が亡くなると、その負債の償還を迫られる。そのミッドランド銀行からその負債の全額を頂戴しようというのだ。奪うというか、あとで負債の償還にそっくり充てるので、借りるようなものというのが彼らの正義だ。

弟は真面目で、強盗に使った車は必ず地中深く埋めるなど何事にも慎重な男だ、兄は刑務所を出所したばかりでいい加減そうな性格だが、弟をとても大事に思っている。酒場で怪しい女などが弟に近寄ると追っ払ったりする。銀行強盗といっても、小さいな支店で事務員が一人しかいない早朝などの時間帯に、大金をとるのではなく、目立たない額を持ち去るというもの。金はカジノでコインに変えるなどのマネーロンダリング。

そこに出てくるのが、テキサスレンジャーなる二人、一人はすっかり年を取って歩くのもやっとというジェフブリッジス、相棒はネイティブアメリカンの男、二人は定年が近いベテランで、いろいろな事件やら犯罪に遭遇し不合理なことを見てきただろう、また人情に熱いだろうと思わせるものがある。

銀行強盗は最初はうまくいっていたが、あるとき中規模の支店で混雑した中に押し入ってしまい、自警団と打ち合いになり、警察に追われてしまう。その銃撃戦にジェフブリッジスとネイティブアメリカンの二人も加わる。兄は弟を逃がそうと、犠牲的精神で、囮になって山へ逃げ込み、打ち合いの標的になり撃たれて死んでしまう。弟と家族の財産を命をもって守ろうとしたのだ。弟は傷を負いながら捜査網を何とかかいくぐり金を守り、行政書士の人からミッドランド銀行へ負債の支払いとして返される。

しばらくして、離婚した家族が牧場に戻ってきて家を片付けているところに、ジェフブリッジスがやってくる。彼はずっと弟が怪しいと思っていたが、警察は弟をシロと断定して捜査は終了し、彼もすでにリタイアしていた。彼は弟を問い詰めようとするが、元気な息子たちが現れ、この家族を破壊するのはよくないと判断したのだろう、一言だけ言い残して去る。「この罪の傷を一生背負っていけ」 これもまたテキサスレンジャー、ジェフブリッジスの正義と法律というものだろう。
日本人の心にある義理人情というものを思い出させるラストだった。

アメリカという国、こういうことでもしないと貧困の連鎖から逃れられない国。正義や法律は自分で作るという国。

因みにネイティブアメリカンの同僚は、山での銃撃戦の時に撃たれて死んでいる。ジェフブリッジスの彼との会話の中での差別的冗談は全く理解できなかった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿